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「人類と気候の10万年史 過去になにが起きたのか、これから何が起こるのか」 感想

2017年05月05日 23時52分56秒 | 人類
「人類と気候の10万年史 過去になにが起きたのか、これから何が起こるのか」 中川 毅 著 読了

福井県にある水月湖の年縞堆積物(著者の研究の中心であり、地質学的な標準目盛として国際的に採用されているそうだ)や、グリーンランドや南極の氷床等の研究に基づき、10万年単位の地球の気温変動について概説した本。


それによると、直近80万年ほどの地球の気候は、10万年ほどを中心とした周期で、比較的短い(グラフから大雑把に読み取ると、20~30%くらい?)温暖な間氷期と、比較的長い寒冷な氷期(同じく70~80%)くらいを繰り返しており、現在は温暖な間氷期から、寒冷な氷期に移行する時期に当たるという。

グリーンランドの氷床のデータによると、氷期は非常に気温変動が大きく、特に短期間(場合によっては数年)で10度近く平均気温が上昇するD-Oイベントが十数回も起きているという。


原因についてはわかっていないが、著者は、複雑系における相転移、外的な原因のない気候システムの内発的な挙動である可能性を示唆している。

ただし、水月湖のデータでは気温変動は比較的なだらかであり、D-Oイベントのような極端な変化は見られないという。


これらの結果を元に、著者は、極端な温度変化が起こりやすく寒冷な氷期への移行のほうが文明には深刻な影響を与える可能性が高く、また現在は10万年周期でみれば寒冷化が開始してもおかしくないと指摘している。

また、人間の活動が温暖化をもたらし、氷期への移行を遅らせている可能性があるが、極端な温暖化は、気候の相転移を起こし、気候が不安定で変動しやすい時期に移行させる可能性がある、とも警鐘をならしている。



著者がいうように、長期的にみれば、地球は寒冷化する可能性が高く、温暖化よりも寒冷化のほうが文明への悪影響は大きいだろう。

しかし、10万年というのは一世紀の千倍であり、一世紀は10万年の0.1%に過ぎない。


これから数百年、もっと言えば21世紀は、人類が地球環境に完全に依存しており、また地球環境を核戦争で大きく破壊する可能性がある、という意味で、もっともクリティカルな時期だろう。

この深刻な危機の時代の気候を考えるうえで、1000年が1%に過ぎない大きな周期変動が非常に重要であるとは考えにくい。


むしろ気になるのは、D-Oイベントの方だろう。

数年で平均気温が10度上がるというのはあまりに深刻な変化だ。

著者がいうように、複雑系の創発的な現象だとすればまだいいが、何らかの物理的背景を持った現象ならば、今起きないとは言い切れない。

シベリアの永久凍土からの強力な温暖化ガスであるメタンの放出のように、温暖化がさらなる温暖化を生む正のフィードバック現象も指摘されるなか、やや心配な所ではある。
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