麻酔科医になろうよ

臨床や研究の楽しさ、面白さを感じて、1人でも多くの若い先生方が麻酔科医になってもらえれば。

2013年論文 その1

2013年03月06日 | 論文
・D-Ribose Ameliorates Cisplatin-Induced Nephrotoxicity by Inhibiting Renal Inflammation in Mice.
Tohoku J Exp Med. 229:195-201.2013

この論文では、5単糖のリボースにシスプラチン投与後の炎症性サイトカイン、ケモカイン上昇を抑制し、腎障害を軽減したことを報告しました。

Riboseには以前、腎虚血障害時のサイトカイン・ケモカイン抑制効果があることを報告していて、その関連の仕事です。



2012年論文 その5

2013年01月31日 | 論文
・Miyazaki H, Morishita J, Ueki M, Nishina K, Shiozawa S, Maekawa N.
The effects of a selective inhibitor of c-Fos/activator protein-1 on endotoxin-induced acute kidney injury in mice.
BMC Nephrology.2012, 13:153.

これも、我々のsave sepsis project関連の論文です。
転写因子c-Fos/activator protein-1阻害剤が敗血症性腎障害時の炎症性サイトカイン、ケモカイン産生を抑制する、という結果です。

先の敗血症性肝障害と同様に、腎障害に対しても有効であるという報告です。

敗血症で亡くなる患者さんが少しでも減少するように、探索医療研究を続けたいと思います。

2012年論文 その4

2012年11月13日 | 論文
・Curcumin Ameliorates Cisplatin-Induced Nephrotoxicity by Inhibiting Renal Inflammation in Mice.
Journal of Bioscience and Bioengineering. in press.

この論文では、カレーのスパイスに含まれる黄色い色素の主成分であるクルクミンがシスプラチン投与後の炎症性サイトカイン、ケモカイン上昇を抑制し、腎障害を軽減したことを報告しました。

自然界には、まだまだ私たちの知らない作用の持つものがあります。

今後さらに、新規作用物質の探索研究も続けていきたいと思います。

2012 米国麻酔学会

2012年10月20日 | 学会
米国ワシントンで10月13日から米国麻酔学会が開催されました。

我々の研究グループから
・Effects of a Selective Inhibitor of C-Fos/activator Protein-1 on Downstream Mediators Induced by TNF-α.

・Effects of Fetal Exposure to Midazolam on Developing Brain in Mice.

・Effects of Exposure to Sevoflurane During Fetal Period on Neural Development in Mice.

・Effects of Repeated Midazolam Administration to Newborn Mice on Their Neuronal Development.

以上の4題を発表しました。

来年はサンフランシスコです。
いい街です。

2012年論文 その3

2012年10月15日 | 論文
・Allose ameliorates cisplatin-induced nephrotoxicity in mice. Yuki Miyawaki1, Masaaki Ueki, Masaki Ueno, Takehiko Asaga, Masaaki Tokuda, Gotaro Shirakami. Tohoku J Exp Med. 228:215-221, 2012.

これは香川大学麻酔科との共同実験です。
アロースは希少糖の一つで、少し前から香川大学がその生成に成功し、新たな生理活性の解明し、医学医療への展望を進めている研究テーマです。
この実験では、シスプラチンはその合併症に腎障害が挙げられていますが、アロースがシスプラチン投与後、炎症性サイトカインであるTNFの産生を抑制することで、シスプラチン腎障害を軽減することを報告しました。

まだまだ、アロースの新たな医学医療への応用に関する研究は続いていますので、また報告できると思います。

僻地に赴任して

2012年10月11日 | その他
7月に大学を離れて、僻地に赴任して、早3か月が過ぎようとしています。

大学時代とは違って、圧倒的に雑用がなく、また単身赴任なので、圧倒的に夜は自由。
仕事がひと段落つくと、病院内の敷地にある官舎で、大学生時代に戻ったように、自炊をしています。
その後、週に2-3回は、携帯アプリのEdomondoを利用して、ジョギングをして、体調管理を行っています。
その後、病院に戻り、論文作成に没頭して、時に高速で1時間かけて、大学で実験を行い、
11時台の夜のニュースを見て、寝て、翌朝6時少し前に起きて、朝食をとり、
6時25分のNHKの朝のラジオ体操をして、また病院に戻る毎日です。
必要とされる病院で働き、また大学で研究を続け、本当に充実した毎日を過ごさせていただきております。

ノーベル賞の山中さんとまではいきませんが、
「昨日まで世界になかった医療を明日に」を実現すべく、臨床に研究に没頭しています。

教科書を書きかえる。来年は。

夜も更けているので、話半分で。

2012年論文 その2

2012年08月25日 | 論文
・Shinichiro Izuta, Masaaki Ueki, Masaki Ueno, Kahoru Nishina, Shunichi Shiozawa, Nobuhiro Maekawa. T-5224, a selective inhibitor of c-Fos/activator protein-1, attenuates lipopolysaccharide-induced liver injury in mice. Biotechnol Lett. DOI 10.1007/s10529-012-1022-4.

これは、我々のsave sepsis project関連の論文です。On line firstで出ています。
敗血症の治療では、Toll like receptor 4へのLPSの結合を阻害する物質や産生された各種の炎症性サイトカインの中和抗体などが、動物実験で報告されていますが、臨床trialではうまくいきません。
臨床では、グラム陰性・陽性混合感染もあり、また単一のサイトカインの阻害してもうまくいかないのが現状です。

私たちはこの転写因子c-Fos/activator protein-1阻害剤が敗血症性肝障害でのTNFなどのサイトカイン・ケモカインを抑制するが、抗炎症性サイトカインであるIL-10産生に影響を与えず、予後を改善することを報告しました。

この物質は各種の炎症性サイトカインの産生を誘導する転写因子の一つである、activator protein-1が各種炎症性サイトカインのDNAのpromotor 領域に結合するのを阻害する物質です。
この物質が開発され、慢性関節リウマチに有効であるとの報告は、共同研究者である塩沢教授がnature biotechnologyに報告しています。

Treatment of arthritis with a selective inhibitor of c-Fos/activator protein-1. Nat Biotechnol. 26: 817-23, 2008.

save sepsis project関連の論文はこれからいろいろ出てきますが、敗血症で亡くなる患者さんが少しでも減少するように、探索医療研究を続けたいと思います。

決断

2012年06月16日 | その他
実は私事ではありますが、この6月末で神戸大学を辞めます。
麻酔学会中に、多くの友人に大学を辞めることについて、「教授と合わないの? 」、「単身赴任に疲れたの?」とか、いろいろ聞かれました。
こういった話が伝わるのは早いですね。

転機は昨年の大震災です。

自分の我欲に突き進んでいる日本人が多くなっていると感じていたところに、大震災です。

はたして自分はどうだろうか? と自問した時に、
大学で若い先生方の臨床指導しているとか、
未来の敗血症患者を救うとか、未来を背負う赤ちゃんを安心して産んでもらえるとか、
研究で社会に役立っているとか。
思っていましたが、
これも我欲ではないだろうかと思い始めました。大学病院という恵まれた環境で仕事している自分は本当にこれでいいのだろうか?

震災後、香川医科大学入学時の医学概論講義での故恩地病院長先生のお話を思い出すようになりました。
「君たちは地域医療の貢献するために設立された香川医科大学に入学したのです。社会のために研究も必要ですが、卒業後は地域医療に貢献してほしい。」

麻酔科医を必要としていて、困っている僻地に自分が行ってこそ、またそんな状況下で研究を継続してこそ、
我欲に走らない生き方であると考え、
次の世代の子供達に私達はここまでやった。次は君たちの番だよ。
と言えるために、一度は自分のためでなく、社会のために働こうと思ったのです。

若い先生方に伝えたいことは、
臨床では、教科書がすべで正しいことではありません。
5年も10年も前の情報をもとに書かれています。よく元のデータも根拠もなく、書かれているときもあります。
教科書がおかしいと思ったり、目の前の患者さんの状態の理解に悩んだりした時には、

「医療を前に進めるために常識を打ち破り、革命的に、時代を超える、そのために自分を燃やし努力する。」
もっと臨床麻酔にのめり込んでだり、基礎研究で解決策を探ったり、すべきことはたくさんあります。

また、ジョブズも言っています
Stay hungry, Stay foolish 好きなことにバカになれ
他人がどう思うと、自分の信じたことをやってみる時期も大切にしてほしいと思います。

そうし て、自分の場所に誇りを持つ人間が好きだし、そんな人になってほしいと思います。

I like to see a man proud of the  place  in which  he lives(リ ンカーンの言葉)


次の私のテーマは「麻酔科医になろうよ」です。

臨床も研究も楽しくする麻酔科医に。
その姿を若い学生、研修医にみてもらい、麻酔科医になってもらえるような仕事をしていこう、と。

Feels so Good
みんなが楽しいことや、喜んでもらえることは長続きします。
そんな職場を作り、仲間と一緒に働く。

まあ、一般病院で臨床をしながら、ちょこちょこ大学で研究も続ける、そんな人生もいいかな、と思っています。

といろいろ考えることがあって大学を辞めて、ますます家族から離れ、単身赴任が続きますが、
社会で必要とされるへき地で麻酔科医として、この7月から働き、大学で週末、研究も継続します。


最優秀演題賞

2012年06月09日 | 学会
2012年日本麻酔科学会、2日目の産科麻酔のセッションで
神戸大学麻酔科Safekids project から、「 エリスロポイエチンは妊娠マウスへの2.9%イソフルラン暴露後の仔マウスの脳神経発達障害を軽減する」を発表しました。
審査委員の先生方から、ご評価いただき、最優秀演題賞を受賞させていただきました。
これで3年連続での受賞です。
神戸大学麻酔科の研究の一つ、Safekids project が正しい方向性をもっているとご評価していただいて、嬉しく思います。

今日も夜に大学に戻り、実験しましたが、
お母さん方が安心して、赤ちゃんを産んでもらえるように、Safekids project から、いい結果を出していきたいと思います。

来年麻酔学会はさらにいい結果を発表できるように、日夜、努力していきたいと思います。

2012 麻酔科学会総会 発表

2012年06月07日 | 学会
今日から、第59回日本麻酔科学会が神戸で開催されています。
金曜日の午後、産科麻酔のセッションで
神戸大学麻酔科Safekids project から、「 エリスロポイエチンは妊娠マウスへの2.9%イソフルラン暴露後の仔マウスの脳神経発達障害を軽減する」を発表します。
現在、動物では、麻酔薬による脳発達障害は起こると思われていますが、ヒトでは起こるかどうか、不明です。
ヒトでも生じるかどうか、他施設共同研究がおこなわれていますが、
ヒトでも脳発達障害が生じるという結果がでたら、それまでに、私達麻酔科医がなんらかの治療方法の開発をしなければなりません。
昨年は、生活環境を豊かにする環境エンリッチメントが学習機能を改善すると報告しました。

今回は、薬物による治療です。
それはエリスロポイチンです。
期待していてください。