うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

ヴァーミリアン引退

2010-12-08 21:05:38 | 競馬日記
ヴァーミリアンがとうとう引退します。
2歳時にラジオたんぱ杯を勝ち、クラシックの重要候補だったのですが、真価を発揮したのは3歳の秋にダートを走り出してからでした。芝にはディープインパクト、ダートにはカネヒキリがいる厳しい世代でしたが、カネヒキリが故障で休養に入ったのを埋めるように頭角を現し、5歳時の川崎記念でGI初勝利を挙げてから8歳になった今年の川崎記念まで計9個のGIタイトルを獲得しました。最後のレースになった今年のJCダートは向こう正面で既にペースについて行けなくなり14着に大敗し、引退間近だなと思いましたが、JCダートほどはペースが厳しくならない暮れの東京大賞典をラストレースにするんじゃないかと思っていました。GI最多勝利、7連連続重賞勝ち等、数々の記録を残して種牡馬生活に入ることになります。

母父サンデーサイレンスのGI馬の中では日本ではソングオブウインドアドマイヤムーンスクリーンヒーローに続き4頭目の種牡馬入りです。父エルコンドルパサーという点ではソングオブウインドと同じ、父Mr. Prospector系という点ではアドマイヤムーンと同じです。キングカメハメハの仔ローズキングダムがGI2勝を挙げていますし、エルコンドルパサーの早世は残念でしたね。
サンデーサイレンスもノーザンテーストもMr. Prospectorも血統表内に持ち、Northern Dancerが4 . 5 x 4、Hail to Reasonが6 . 7 x 4ですから使いやすい種牡馬ではありませんが、Roberto系と合わせるような形でしっくりとした配合が作れそうな気がします。例えば母父ブライアンズタイムなら世代の関係が少し気持ち悪いですが、タニノギムレットなら残り1/4次第でだいぶ良さそうな感じです。エルコンドルパサーの血を後世に残してくれることを期待します。

ところで私の手元に「アメリカ競馬戦略9つの頂点」(自由国民社、2005年)という本があります。ベイヤー指数でおなじみのアンドリュー・ベイヤー氏らによる分担執筆で、「血統」の項目はローレン・スティッチという方が担当されています。その気になる部分を引用します(引用部分は『』内)。

『血統における牡の遺伝因子(種牡馬と母の父)は、距離と馬場(ダートと芝)について産駒の適性を決定する。血統における牝の遺伝因子(母と、ファミリーと呼ばれているその牝系)は、産駒の格(クラス)を決定する。
(中略)
母が芝のステークス勝ち馬だから、あるいは母が芝の勝ち馬を出しているからこの馬は芝を使うべきだ、などということを聞いたり読んだりするたびに、私は強烈な失望感を覚える。
真実は違うのだ。もし母が芝で好成績を収めていたなら、それはその母の父親に芝適性があったことの表れなのである。もし芝の勝ち馬を何頭も出す母親がいたなら、それはおそらくその母に配合された種牡馬に芝適性があったからだといえる。』(p308)

まず、エルコンドルパサーからこれに従って血統を読み解きます。
牝系は優秀な競走馬を輩出するThongの系統、近親に活躍馬多数で、格は十分でしょう。母父は典型的な芝中長距離向きSadler's Wells、父は本書にも『芝種牡馬としてあまりにも有名な』(p318)と書かれているKingmambo。Kingmambo自身はマイラーでしたが種牡馬としてはマイル中心でも中長距離を得意とするものも出します。芝の大物としての資格は十分と解説することができるでしょう。

母のスカーレットレディ。
牝系はスカーレットインクの系統。これまた格は十分。母父ノーザンテーストは芝のフォレ賞の勝ち馬で、本書に『ノーザンダンサー系の馬であればすべて芝に高い適性を持っていることが明らかになった』(p317)と書かれているNorthern Dancerがその父。種牡馬としては万能で、日本では芝がメインであることもあり、大物は全て芝馬です。父は米2冠馬サンデーサイレンス。競走馬としてはダート馬でしたが種牡馬成績は芝に集中し、本書のいう『隠れた芝適性』(p318)を持っていたと言っていいでしょうし、Lemon Drop Kid同様、『ダートであまりにも好成績を収めたから』(p318)芝を走らなかったと言っていいでしょう。ということでスカーレットレディは芝の大物である可能性を秘めた配合と言って良かったはずで、実際に全く同配合のダイワメジャー、ダイワルージュは芝で大活躍しました。ただしスカーレットレディはダートでの勝ち上がりです。

この2頭の組み合わせで生まれたヴァーミリアンはラジオたんぱ杯を勝っているように芝でも強かったと言っていいと思いますが、真価を発揮したのはダートででした。その理由はエルコンドルパサーがダートでも強かったこと、アロンダイトを出しているようにエルコンドルパサーが時としてダート向きの大物を出すことがあることに求めることができるかもしれません。
しかしながらスカーレットレディの面白いところはアフリートを付けても(ダート重賞5勝のサカラート)、エリシオを付けても(ダートのみを走って5勝のスカーレットベル)、ウォーエンブレムを付けても(すみれSを勝っているように芝でもそこそこでしたが本領発揮はダート路線に転じてからだったキングスエンブレム)、フレンチデピュティを付けても(ダートのみを走って1勝のフィロンルージュ)、キングカメハメハを付けても(ダートでデビューから2連勝、芝のスプリングSで大敗し、ダート路線に戻ったソリタリーキング)、徹底的にダート馬を出すところです。自身もダート馬で種牡馬として勝利数が芝よりダートの方で多いアフリートとフレンチデピュティはダート向きと言っていいでしょうが、エリシオとウォーエンブレムはどちらも出しますし(エリシオ自身は芝馬で、産駒のうち上級馬は芝向き)、キングカメハメハはゴールデンチケットを出したと言っても傾向的には明らかに芝向きです。
スカーレットレディの配合も前述の通りで、ダート向きの牡の遺伝因子を探してこれらの母父になるサンデーサイレンス、祖母父になるノーザンテーストとさかのぼっても徹底的なダート適性を引っ張り出すのは難しいですね。

配合に関しては私は基本的に五十嵐氏理論、中島理論の2本立てなのですが、サクラバクシンオーはどんな配合でも短距離馬ばかりだなとか、本書で書かれているような種牡馬から直接伝わる個性のようなものも意識します。そして、スカーレットレディの場合は何を付けてもダート馬だな、ってなってしまいますね。本当の理由はわかり得ないことですから、結局のところ統計的ならざるを得ないですし(五十嵐氏理論であれば評価の高い馬ほど出世の確率が高い、直接遺伝であればサクラバクシンオー産駒はたいてい短距離向き、スカーレットレディの仔はたいていダート向き)、都合のいい解釈をせざるを得ないように思います。所詮は解釈ですね。


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