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レッドクリフ PartⅠ/女性陣の存在感

2009-01-10 | 映画分析

 中国旅行をすると各地に三国志の史跡がある。その知識がないと興をそがれるにも関わらず、ほとんど関心を持っていなかった。ハリウッド調の超大作は苦手だが、本作を観て少しは勉強できるかも?ということで、珍しくシネコンへ。
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2002年に訪れた四川省の成都は、蜀の都が置かれた土地で、清代初期の「武侯祠」がある。‘武侯’とは諸葛亮孔明を指す。
ここには、両サイドに関羽・張飛像を従えた劉備像がある「劉備殿」と、孔明像がある「孔明殿」、「劉備の墓」などがあるが、キンキラキンの立派な武士像を見ても何の感動もなかった。

 さて、映画の方は、目をそむけたくなるような戦闘シーンが長々と続く。人海戦術の得意な中国のことだからとか、どれだけ経費がかかったのだろうかとか、けが人が続出したのでは、などと余分なことばかり考えてしまう。要するに退屈なのだ。

 心理描写も説得力がない。劉備軍の天才軍師・諸葛孔明と、孫権軍の知将・周瑜が男の友情を結ぶきっかけとなる、「琴線に触れる(琴の合奏)」場面では、お互いの殺意を感じた。
 後々の伏線となる「我々が敵味方になるかも」「その時はそれぞれの主君に仕えよう」といったセリフも唐突に感じた。心理描写が十分であれば不要なはずだ。

 「三国志」は、三国の権謀術数のありようが、ビジネスの参考になるともてはやされている。そこに描かれている武将同士の友情や団結は、智謀がベースになっており、利害関係が歴然としているのに、無理やり人間性を持ち込もうとしているのは興ざめである。
曰く、魏の大軍を率いる曹操の野望の裏には、周瑜の妻である絶世の美女・小喬への執着という目的があった・・・。
 また、魏を倒すべく、蜀と呉の連合軍を結成するため、上記の琴の合奏や、周瑜の愛馬の出産を孔明が助けるなどの人間的な行為を通じて、二人の信頼が築かれていった・・・。
 
主従を含む男の友情(?)がこれでもか、と描かれる一方で、女性の存在感も負けてはいない。私はこの一点だけで次作も観たくなった。
 小喬は美しく、夫の周瑜と対等に愛し合っており、紅一点の女傑・孫尚香は凛々しく 、名だたる武将に気力も技も負けてはいない。さらに、「政略結婚は嫌いだ。女を将棋の駒のように使うから」と言い切るところが格好いい。

曹操が小喬への思いを託す愛人は妖艶で、曹操に媚びず魅力を全開している。
こうした聡明で、男性を凌駕する女性陣を配したのは、女性ファンを引き込む作戦か?  なお、劉備の高潔な人柄、呉の君主・孫権の成長と妹の尚香との家族愛、周瑜と小喬の夫婦愛、さらには彼女の平和への希求など、戦いの周辺のエピソードの配分が絶妙で、凄まじいシーンの連続に彩を添えていることも評価したい。

 男だけの英雄物語はもう古い。女を添え物でなくきちんと描き切ることで、全編が引き立つ。「PartⅡ」では、どんな演出になるのか、大いに期待したい。
★★★★(★5つで満点)

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