さて日本が旗日だった3日のNY金は、発表された10月の雇用統計の内容が全体的に弱かったことから、結果を受けた初動は上昇。その後、もみ合った後に次に発表された10月のISM非製造合景況指数が“上振れ”ともいえる60ポイント超(60.1)という結果を受けドルが買われる反対側で金市場では売りが膨らむことになった。1269.20ドルと終値での1270ドル割れは、8月8日以来のこと。それでもレンジの範囲内ではある。
10月の米雇用統計は、もともとハリケーンの影響を受けた9月の雇用者数がマイナスになっていたことから、復興による反動で10月は31.1万人増というのが市場予想だった。結果は26.1万人の増加と予想を下回ったものの、まずまずそんなもんでしょ、というものに。3.3万人の減少となっていた9月分は1.8万人の増加に上方修正されてもいる。
市場の注目事項はやはり賃金。失業率が低下し既に完全雇用の環境に突入したといわれて久しいが、賃金上昇につながる気配はなし。9月は前年比で2.9%の上昇となり、ハリケーンによる特殊環境の成せる業と指摘されたものの、それでもやっと上昇の兆しが表れたのではないかと期待する向きも多く、注目度はさらに上がっていた。その平均時給の結果は、やはりダメだった。前月比では0.0%と前月の+0.5%、市場予想の+0.2%を下回った。前年同月比でも+2.4%と前月の+2.9%(速報値)から大きく低下したばかりか、2016年2月以来の小幅な伸びとなった。6、7、8月と前年比では+2.5%となっていた。
それでもFRB関係者の多くは、賃金上昇は加速するハズ・・・としている。
もっとも3月そして6月のFOMCにて利上げに反対票を投じたミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は3日の講演で「労働市場がわれわれの予想よりも突然急速に引き締まり、突然インフレがわれわれの予想よりも早いペースで上昇した場合、積極的に利上げを行う必要に迫られるという懸念がある。ただ、いかなる経済指標からもこうした証拠は見いだせないと反論したい」とした。
いまやブレイナード理事以上のハト派と目される。予防的に緩やかに利上げしておかないと、インフレが加速した際にあわてて大きな引き上げに迫られると、それがむしろ景気の腰折れにつながる、というのがイエレン議長はじめ主流派の言い分となっている。賃金や物価に関しては、主流派の足元は怪しくなりつつあるように見える。