「日本文学の革命」の日々

「日本文学の革命」というホームページを出してます。「日本文学の革命」で検索すれば出てきますので、見てください

電子同人雑誌の可能性 85

2016-10-31 04:22:19 | 日本文学の革命
最後に20代のフリーターの男性の購読事情を見てみよう。
彼はゲームが好きなので、『エヴァンゲリオン 覚醒の絆』というゲーム系の電子同人雑誌を購入した。これはエヴァに搭乗する仲間たちをネットで集め、シトたちを撃破してゆくというロールプレイングゲームだが、いつも第10シトに撃破されてしまい、その先に進めないのである。彼らはネットで対策案を相談し、チャレンジを続けているのであった。
彼はある小劇団が発行している電子同人雑誌も購入していた。下北沢の小さな講堂を借りて自分たちが作った劇を演じ、それをビデオカメラで撮影して丸ごとネットで流しているのであった。この劇団の劇は現代の若者たちの姿や思いをよく捕えていて、結構面白く、また劇団員たちの日常にも触れられて、新しい号が出るたびに彼は購入しているのであった。
中国に留学している日本人女性が出している電子同人雑誌『上海生活』も彼は購入していた。これは彼女がビデオカメラを持って上海の様々な場所に出かけ、そこで定点観測的に街の様子を撮影し続けるというスタイルの雑誌である。街行く人々が交わしている会話や彼女が中国人と交わした会話は彼女が翻訳して字幕で流してくれるので、中国語が分からない彼にも実際にその街角にいて中国人と交わっているような感じが抱けるのである。この前思い切ってメールでテレビ電話をしないかと申し込んだら、簡単にOKしてくれた。来週の日曜に彼女とテレビ電話をするので、今から何を言おうかと話題を考えているのだった。
アングラサイトで話題になっている『私のオナニー』という電子雑誌も購入した。これは都内の某大学に通っているという女子大生が顔をモザイクにかけて出している雑誌で、普通のブログサイトのように今日は何したの、今日はどこへ出かけたの、という彼女の日常がつづられているのだが、その最後に決まって彼女のオナニーの自撮り映像が流れるのだ。大抵は帰宅後の自宅での映像だが、ときには外出先のトイレでがんばって撮った映像も流れていた。彼女の等身大の人柄とオナニーが結びついたこの雑誌はかなりの反響を呼んで、数万部も売れたそうである。彼もしばらくは「オナ友」扱いしていたが、彼女の実はうぶな人柄を知るにつけて心配になり、「十分売れたんだから、もうやめた方がいいよ。あんまり話題になると、警察が猥褻物陳列罪で動くかも知れないよ」と忠告のメールを送っておいた。返信はもちろん来なかったが、そのうちプツリとこの雑誌が消えたので、彼もホッとした。
彼は『石川啄木の青春』という石川啄木研究雑誌も購入していた。石川啄木の歌に心を打つものがあったからである。彼は自分でも石川啄木風の歌を作ってみて、雑誌に投稿してみた。ほどなく雑誌に掲載され、同時に「同人にならないか」という誘いも受けた。彼は今この電子同人雑誌の同人になるかどうか考えているところである。
(続く)
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 電子同人雑誌の可能性 84 | トップ | 電子同人雑誌の可能性 86 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本文学の革命」カテゴリの最新記事