零距離ガン○ャノン(マリそば制作委員会の告知あり)

東方パーティゲーム「マリそば」とか、マイ日々についてのブログです。
東方同人TCGとかの話題中心です。

「アドヴェントチルノSS」第二部第3話

2009年05月31日 02時36分58秒 | アドヴェントチルノSS
ネット自粛週間の前にお話投下。
チルノとレイセンの部分。ワードで5ページ、3時間強かかっちゃった。
はううう、勉強せねば~~(いろんな意味で
第二部第1話 http://blog.goo.ne.jp/msaj9/e/e7300b6cd5017a2bc0091317ba642482
第二部第2話 http://blog.goo.ne.jp/msaj9/e/a275235804ddb7e8e41c95340004fa95

軽快な金属音がやかましく鳴り続ける。
2人の少女の円舞曲は、とても騒がしいものだった。
チルノとゼフィスの二刀流対決は、お互いに一歩も引かない乱撃戦に突入していた。
2人が互いにドラムか太鼓を叩くかのような、剣の打ち込み合いが続く。
「楽しくてたまりませんわ!」
「そいつは結構!」
互いの剣戟が互いの剣戟を弾き合う。
気の合う仲間のように、お互いの斬撃をぶつけ合う。
どちらにも有効打は撃てない状態だった。
だがゼフィスは満面の笑みを浮かべ続けて、二刀を振り回し続けている。
その剣に殺意はあったが、邪気はなかった。
純粋に、ただただ純粋に、相手を倒すために振るう剣には、不思議なことに悪意が籠められてはいなかったのだ。
そのことを撃ち合い続けるチルノも感じていた。
(まずいな、こっちまで楽しくなってきた)
強い相手、レティを相手にするような、山を登るような闘いも悪くはないが、こんな拮抗した力量の相手と戦うこともチルノの心を熱くさせた。
もう数百合も打ち合われた二刀の乱舞。
チルノは一定のパターンを感じ取っていた。
パターンとまではいかなくても癖として捕らえられる範囲にまで、ゼフィスの剣舞を捕捉しはじめていた。
ゼフィスが2本の剣を左右から同時に振るう。
チルノは“逆手に持ち変えた”ウエハースブレイドで受け止めた。
「なにっ!?」
ウエハースブレイドの回転部分を変形させて、ゼフィスの剣を絡めて取る。
2人はどこかの聖者がはりつけられたような十字のポーズになった。
無防備なゼフィスにチルノが、思いっきり頭突きをぶちこんだ。
ごち~~~ん!!
「うくぅぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゼフィスはたまらずのけぞって絶叫する。
剣を手放してさえ、その場から離れて距離を保った。
「うううう、このチンチクリンは、なんて原始的なことを…」
ゼフィスのおでこは真っ赤に腫れ上がり、衝撃の大きさを物語る。
「どうだい、アタイの慧音先生譲りの頭突きは?
泣けるだろ?」
かくいうチルノも、ちょっぴり涙目だ。
「いたしかたありませんわ。本気を出しますわよ」
「本気? 剣もないってのに?」
チルノが聞き返す。
ゼフィスは2本の剣を手放したままだった。
「アポート!」
ウエハースブレイドの変形機構を解いて、ゼフィスの剣はチルノの近くに落ちた。
……はずだった。
「へ?」
目を離したつもりはないが、ゼフィスの両の手には、紛れもなく2本の剣が握られている。
「なんで剣を? あれ、あれ? 落ちたと思った剣がない!?」
「物体転移の呪文くらい使えなくては、魔神将の名が廃るというものですわ」
唱えた呪文の力によって、ゼフィスは剣を取り戻していた。
「母に抱かれし、闇の衣。我を守りたまえ。
自動的に、主観的に、楽観的に、我の盾となりえたまえ。
闇の盾よ、我を守りたまえ」
ゼフィスがさらになにかの呪文を詠唱した。
チルノにはなんの呪文だかわからなかった。
「さああ、あなたにこれが打ち破れるかしら?
 行きますわよ!!」
ゼフィスが突っ込んでくる。それに合わせて、チルノが左手のウエハースブレイドを振るうが、ゼフィスに届かず、まるで見えない盾に弾かれたようにその場に止まった。
「うぃぃぃ!?」
「闇の盾、物理攻撃を止める防御壁ですわ」
勝ち誇った笑みを浮かべたゼフィスが、チルノの左腕に剣を叩き込んだ。

⑨         ⑨         ⑨

ドンッ! ドンッ! ドンッ!
間隙を与えずに、銃声は響き続ける。
レイセンは不意打ちを仕掛け、サリスに銃弾を放った。
だが、その弾丸は全てサリスに弾かれていた。たった5mの距離にも関わらず。
レイセンはバックステップをしながら、弾を装填し、次なる弾丸を放つ。
必ず距離を取った。
レイセンは簡単な答えにたどり着いていた。
間合いに入られたら負ける。
本能めいた何かが、軽快にサイレンを鳴らしてくれる。人を気を知らずに。
サリスは淡々と距離をつめてくる。レイセンは弾を撃ち続け、装填し続け、ずっと下がり続けた。
時たま、サリスの肩などに弾が当たったような気がするが、その動きは一向に鈍ることなどなかった。
「魔神って方々は、ダメージとか気にしないのかしら?」
「気にはする。一定以上のダメージを受けたら、行動不能になる」
「そうなの? でも、あなたは無頓着過ぎるような気がするわ」
「かもな。だが、俊敏な獲物を追い詰めるためには、これも詮無きことと諦めた。
……とは思ったのだが、考え方を変えるつもりだ」
サリスはそう言って、構えを解いた。
レイセンのピーター・ザ・ラビットもようやく弾丸を撃ち出すのを一時中止する。
「弾切れを狙った。だが、一向に切れないのは不思議なことだ。これでは、こちらがジリ貧だ」
レイセンは銃口をサリスに向けながら、思案を巡らせていた。
この遺跡に来る前に、レイセン達はてゐから、数種類のアイテムを受け取っていた。
その中に“弱っていたら、どんな種族だろうと捕獲出来るモンスターボール”や、“無限に沸いてくる弾装填具”という、はちゃめちゃなものなどがあった。
(てゐじゃなくて、明らかに師匠の悪巧みの結果としか思えないけど、助かったことは事実よね)
「どうかしら? もしかしたら、私はもう弾を持っていないのかもしれないわよ?」
「それならば幸運だろうがね。ちなみに……2丁目はいつ抜くつもりなんだ?」
「2丁目?……さあ、なんのことだかさっぱりだわ?」
「あなたの腰の後ろのホルダーにある2丁目のことだ。隠そうとしてもすでに無意味だ」
レイセンは自嘲じみた笑みを浮かべて答えた。
「私って隠し事が苦手みたいねー」
「駆け引きはうまいと思うがね。1丁の拳銃で絶え間なく弾を撃ち続ける。それは1丁なら出来るはずだからな。装填する間の時間さえ常に確保していれば。
だが、装填するための腕で2丁目を使えば、その時は難事を切り抜けられるかもしれないが、弾を装填出来ない。
2丁目はどうしようもならなくなったときの保険になる。
……さあ、使ってもらいたいな……その後は、あなたの心臓に槍を突き刺すが」
サリスは淡々と語る。
「そう言われて、使う奴はいないと思うわよ」
レイセンはくだを巻いた。
「なるほど、私は駆け引きが苦手らしい」
「…………」
レイセンは押し黙った。
苦手とはまったく思えなかった。2丁目のピーター・ザ・ラビットは、確かに腰のホルダーに隠していた。
銃は無敵ではない。どうしても弾を装填する必要がある。
もしものときの保険としてあるものが、相手に確実に把握されている。
黙っていてあえて使わせるのも手だろうが、実際に口にして相手にプレッシャーをかけることも充分に効果がある。
レイセンが撃つ弾丸が一発でもそれてしまえば、サリスは容易に間合いに入ってしまうだろう。
レイセンはずっと危険な綱渡りをし続けていたのだ。
必殺の一撃を持つ相手を、ずっと牽制し続けられたこと自体がレイセンの力量を物語るが、それは神経をずっとすり減らし続ける行為でもある。
そのことを解っていたからこそ、サリスは更なるプレッシャーをかけてきたのだ。
「なるほど、分の悪い賭けは嫌いじゃないわ。
でも、本当は自分の命をチップとしてなんて賭けたくないわよ。
ましてや切り札さえ、見切られている相手に」
「確かにな。だが、私は分の悪い賭けも好きかも知れない。
じりじりと相手を追い詰めることが出来るだろうが、それをする気がないようだ。
そういえば、名前を聞いていなかったな。あなたの名はなんというのだ?」
「レイセンよ」
「良い名だ。レイセン、あなたのチップをいただこう」
最初のレイセンの不意打ちのお返しとばかりに、今度はサリスが唐突に仕掛けてきた。
どこからか手にした“くない”を2本、レイセンに向かって投げてきた。
「くっ!」
レイセンは“くない”を撃ち落とす。
その間にサリスは間合いを詰めている。レイセンは残りの弾を撃ち出すも、サリスの突進を緩めることが出来なかった。右手で持った槍で弾は弾かれてしまっていた。
レイセンは決断した。2丁目を抜いた。
槍を持っているサリスの右手を弾丸が撃ち抜く。右手が血に塗れ、槍がこぼれ落ちる。
「抜いたな、2丁目を!」
サリスがはじめて笑った。そのとき、すでに左手で“くない”を1本放っていた。
レイセンの左足めがけて。
レイセンはかろうじて避けるがバランスを崩す。
残った右足の軸足にサリスは足払いをかけてきた。レイセンはこれをかわすことが出来なかった。
「しまったっ!」
「アポート!」
サリスが物体転移の呪文を唱える。これは自分のもとに物を呼び寄せる呪文だ。
倒れ付したレイセンの前に、左手で槍を持つサリスがのりかかってきた。
「チェックメイトだ、レイセン! 切り札もなかろう!」
「切り札って、見せないから切り札なのよ」
「なにっ!?」
レイセンは2丁のデリンジャーを構えていた。袖に隠していた、まだ切っていなかった札だ。
デリンジャーの欠点は、射程が短いのが欠点だが、まず外れるはずがない距離だった。
レイセンが引き金を引いた。弾はサリスに命中した。
「なるほど、さすがだ。だが、それさえも読んでいた」
命中したのだが、レイセンの弾丸はサリスの右腕に防がれていた。
致命打を与えることが出来なかった。
完全に自分の右腕を殺してでも、レイセンに左手で持った槍を突き刺す気であった。
「さらばだ、紅き瞳の少女よ!」
レイセンの心臓にサリスの槍が突き刺さった。

「アドヴェントチルノSS」第二部第2話

2009年05月17日 10時12分15秒 | アドヴェントチルノSS
ワードで4ページで結局、2時間半くらいかかっちゃった。

魔神将ゼフィスの凶刃とチルノの当たり剣が火花を散らす。
ゼフィスの闘う姿は、まさしく踊りを踊っているかのようであった。
剣による舞を披露していた。
右腕と左腕がまるで別の生き物のように動く。
さらには自分自身を回転させ、左右の剣による連撃を絶え間なく繰り出していた。
「おおっと!」
右の剣と当たり剣が打ち合った次の瞬間、左の剣がチルノを右足を狙う。
チルノは急いで足をひっこめて、後ろに下がる。
そこにゼフィスの突きが追撃をかける。
それをチルノは当たり剣ではじき続ける。拉致があかないとばかりにチルノは、当たり剣を強引に振り回し、2本の剣を絡め取ろうとするが、ゼフィスが身を引くことでそれは難無く防がれた。
「まったく、速いうえにタフなんだから困っちゃうよ」
「かくいうあなたも大したものですわ、わたくしにここまで致命傷を与えさせないとは」
(確かに速い。だが軽い……そしてなにより、先輩よりは速くない)
チルノはレティとの戦いを思い出していた。あの時と比べたら、手数で負けている今など苦境にも入らない気持ちであった。
再度、2人は激突する。当たり剣の剣撃を片方の剣で防ぎながら、もう片方の剣で攻撃しようとするゼフィスだが、それらはことごとくチルノにかわされ続けた。
チルノの一撃の重さのために、なかなかゼフィスも十分な攻撃が出来ていないためでもあった。
しかしながら、手数では圧倒的に多いゼフィスが、徐々に追い詰めているといった感じだ。
ゼフィスが右の剣で渾身の突きを放つ。チルノは当たり剣ではじく。だが、左の剣の払いが無防備なわき腹を狙う。
その払いをチルノは、当たり剣の柄でなんとか受け止める。そして、今度ははじいた右の剣が頭上へと振り下ろされた。チルノは大きく後退して避けきった。
剣の刀身だけでなく、柄まで使って、ゼフィスの剣舞を受け止め続けた。
「あはははは、楽しませてくださいますわね! 
楽しいですわ!
楽しいですわ!
まさしくこれこそ、生と言う宴。虚ろの中から報われる、最高の瞬間!」
「お気楽に言われても困るんだけどねー」
チルノは頬を掻いて、1人悦に入るゼフィスを見つめる。
「このまま続ければ、たぶんわたくしの勝利で終わるでしょうね~。
それくらいは、あなたにもお分かりいただけるはず。さて、いかがなさるおつもりで?
通りすがりの正義の味方さん?」
「…かもねー。まあ、そうだねー。アタイもあんたの流儀に付き合ってあげるしかなさそうだ。
お婆ちゃんが言っていた」
チルノは不敵な笑みを浮かべて、当たり剣を地面に突き刺して手放した。
そして、人差し指で天を指し示す。
「剣1本で足りないのなら、何本も持てばいいってねっ!」
チルノは地面を蹴飛ばして、愛剣達を呼び出した。
その中の2本、ウエハースブレイドを手にする。
「こっちも二刀流で相手になってやる」
ゼフィスの両目が歓喜のあまりに大きく見開かれ、その身をふるふると震わせた。
「素晴らしい…なんて殺しがいのあるお方。軽くイってしまいましたわ」
「そいつはおめでとさん!」
2人は同時に踏み込んだ。
4本の短剣が、やかましく円舞曲の第二章を奏で始めた。

⑨         ⑨         ⑨

「出来れば、その物騒なモノをしまってもらえるとありがたいんだけど」
レイセンは嫌そうな顔で、叶わないであろう願望を口にする。
「魔神将が1人、サリス・リーリエ。それがあなたを殺すものの名だ」
「あっそ……知性を持ったモンスターねー…まるっきり人そのものじゃないの」
レイセンのぼやきは、目の前の少女に向けられていた。
レイセンもチルノと同じような広い空間に転移されてしまっていた。
そして、同じように魔神将と名乗る少女が姿を現していた。
細身の長身で、パンツタイプのスーツを着た男装の麗人と言ったいでたちだ。
その手には、飾りは少ないが凶悪さを示すに十分なほど立派な真っ黒な槍が握られている。
レイセンは愛銃、ピーター・ザ・ラビットを手の中で弄びながら、思案に暮れる。
「どうした、仕掛けてこないのか?」
互いの距離は5m程度。サリスは槍を構えてはいるが、動こうとはしなかった。
不思議なことに、あくまでもレイセンの出方を待っていた。
「仕掛けたいんだけどね。あなたの波長が読めないのよ。こんなの初めてだわ」
「なら、こちらから…」
「ああ、待った待った。なんだか魔神って方々らしいってのは聞いたんだけど、実際には何者なのかをもう少しは知りたいんだけど、教えてもらえる?」
駄目元で少しでも情報を得たいレイセンは尋ねてみた。内心、無理だとしか思っていなかったが。
もちろん、いつ向こうが闘いを仕掛けてきてもいいように、警戒はしている。
「私達は異界の住人だ。少なくとも生き物に属する。この世界を蹂躙すべく、我々は自分達の世界から、この幻想郷へとやってきた。行動目的は、目に付いた生きているものを全て殺す。
これだけだな。
闘いを楽しむ猶予がせめてもの救いだ。選択肢はまったくない。
主のために殺し、主のために闘う、それだけの存在だ。
主である魔神王のために、この身を捧げるのが宿命だ」
年や風貌はあまり変わらないはずの少女が、あまりにも殺伐としたことを淡々と口にした。
(答えてくれたよ。実はこいつ、結構いい奴なのかしら?)
「随分とストイックなのね。闘わないって選択肢はないの?」
答えは解りきっていたが、あえて聞いてみた。
「ないな」
「だと思ったわ」
レイセンは大きくため息をはいて、お手上げのポーズを取った。
そして、間髪入れずにピーター・ザ・ラビットの引き金を引いた。

⑨         ⑨         ⑨

「魔神将が1人、テトラ・リーリエ」
「自己紹介ありがとう、ねっとっ!」
メイリンは自分に飛んできた黒い円盤を、間一髪で避けた。
メイリンの周りで、同じような黒い円盤が8枚飛翔している。
それが交互にメイリンの体を傷つけるために飛んでくる。
その円盤、形状からしてみればチャクラムと称せるものは、テトラと名乗る少女が自分の魔力から生み出していたものだった。
身長はメイリンよりやや低めで、黒一色のシンプルなドレスを着ている。
メイリンから離れた場所で、チャクラムを操っている。
次々と飛んでくるチャクラムを避けながら、メイリンは隙をみてはテトラに近づこうとする。
だが、そのたびに、テトラは距離を取り、あくまでもメイリンを自分に近づけさせまいとしていた。
必ず距離を確保していた。
「陰険なのって、嫌われるわよ!?」
メイリンはチャクラムを避けるために走りながらも憎まれ口を叩いた。
「嫌われて、かまわないよ。いかに自分が傷つかずに相手を殺せるか、それだけだもの」
「さいですか~」
メイリンはチャクラムをかわし続ける。
メイリンもチルノとレイセン同様、魔神将と名乗る少女と戦っていた。
チャクラムはやたらとメイリンの足を狙っていた。
狙いは機動力を奪うことなのだろう。
「本意じゃないけど、戦うしかないってことね」
メイリンは構えを取ると、かわしたチャクラムを拳で打ち抜いた。
「なんですって!?」
高速移動している回転物の中心を、ものの見事に捕らえた一撃だった。
類まれなる動体視力と、日頃の鍛錬の賜物だった。
「なんとかなって、良かったわ」
そして、続けざまに2枚のチャクラムも撃ち落す。
「くっ、ならば、減った分をさらに作るのみ」
テトラはさらに距離を取り、自分の胸元で両の手から魔力を放出し、チャクラムを成形する。
次々と増えていくチャクラム。その数はまた8枚に増えてしまった。
その様子をチャクラムをかわしながら、時には撃墜しながら、メイリンはずっと観察していた。
「1枚を作るのに3秒半……それならいけるかもね」
テトラを見据えるメイリンは、小さくそうつぶやくのだった。

「アドヴェントチルノSS」第二部第1話

2009年05月09日 03時48分34秒 | アドヴェントチルノSS
2人のソードダンサーが可憐に踊る。
右手には闘志、左手には雄志。
片方が宿すは殺意と破滅願望、片方が宿すは勇気と正義。
互いに2本の短剣、計4本の短剣による剣戟を円舞曲に、2人は激闘という演目を踊っていた。

「どうですかね? 一度調査済みの遺跡だから、危険はまずないし。でも、カンパニーからは護衛を雇うことを条件に出されています。カンパニー以外の方に……そうなると、頼めるとしたら、メイリンさん達だけなんですよ」
場所はメイリンが営む喫茶店「7番街中央通り上海紅茶天国」略して「中国」だ。
カウンターに座る端正な顔立ちの男性は、店主のメイリンと会話をかわしていた。
男の方は、ルフト・ミラーという森羅カンパニーで考古学を教える講師であった。
論文や弁論も評価が高く、有望株だ。見た目もかなり良いので女生徒達に人気があったりする。だが彼は、周りの評価を気にする以前に、想い人へ気持ちを伝えられないジレンマに悩み続けていた。
その対象となっている美しい店主に、彼は遺跡調査の護衛という依頼をしていたのだった。
その依頼に難色をメイリンは示していた。
ここ最近起こった異変のせいで、チルノが非常に森羅カンパニーに対して敏感になっているためだ。
「あ、あと、この調査が終わったら、一緒に食事でもしませんか?
 『ボーダーオーダー』の予約が、運良く取れたんですよ。僕は、メイリンさんと一緒に行きたいんです」
まるで付け足しのようではあったが、これは彼が1年以上掛かってやっと言えた、実質的なプロポーズであった。

「いや~~~~、なんとも春めいてきたのでは、ないのですか~~?」
「さすが、姐さんはもてるよね~~」
「僕は、あなたと、一緒に行きたいんです!!」
「格好良い~~、なになにやっぱりプロポーズってやつですよね、プロポーズ!!」
客のいなくなった喫茶店で、レイセンとチルノが今日の1番気になる出来事をはやしたてる。
話題はもちろん、依頼内容よりもメイリンへの告白の内容だった。
「あんた達、いい加減にしなさいよ。ルフトさんは、うちのたんなる常連さん。ついでに、依頼もしてきた。受けるの受けないの?」
メイリンは2人にぶっきらぼうに対応する。
「またまたー、本当は結構嬉しいくせに~。
 森羅カンパニー最上階のレストラン『ボーダーオーダー』って、いまプロポーズとか結婚記念日とかで使われることが多いって文々。新聞でもやってたからねー。ちなみに、そういうお客様にはちょっとした催しものもしてくれるみたいだし。
まさしく確定っしょ?」
「そりゃ……確かに嬉しいけど……別に、私は誰かと付き合うとかそういうことは考えてはいないわよ」
少しだけ頬を高潮させたメイリンがレイセンの冷やかしに応える。
「いや~、しばらくカンパニー絡みの一件は、犬猿してたけど、これは受けるしかないってことかねー、ワトスン君!」
「そうね、勇気を振り絞った彼に対して、私達も誠意をみせなくちゃ、正義の味方が廃るってもんだ!」
チルノが目を輝かせて断言する。
「だそうよ、姐さん」
メイリンはくだを巻いたが、依頼を受けることに納得したのだった。

幻想郷、正確に言えば7番街では地震が断続的に発生するという異変が少し前に起こっていた。
それは“特異点”と呼ばれる現象によるもので、チルノとレティが本気の勝負とするという事態が起きたが、その異変そのものは解決していた。
その地震のおかげで、今まで発見されていなかった地下遺跡が見つかり、森羅カンパニーが調査に乗り出した。
ほぼ調査が終わり、森羅カンパニー所属の考古学者ルフトが実際に遺跡に入れることになった。
遺跡は異界に繋がる魔法を研究していた場所ということが解ってはいるが、それ以上の詳しいことは解ってはいないらしい。

「距離としたら、車で飛ばして2時間ってところか」
「ちょっとしたドライブよね。さささ、車の運転はルフトさんがしてくれるというわけで、姐さんは助手席に座った座った」
「え、ちょっと、あんた達、いい加減にしなさいよ!」
「えええ~、サービスは重要なんじゃないんですか?
 常連さんなんでしょ?」
「うううう、あとで覚えてらっしゃい」
メイリンは仕方なく、ルフトの運転する車の助手席に座り、チルノとレイセンは後部座席で恰好の見世物を堪能することにした。
会話はそれほど弾んだりはしなかった。
ルフトはばりばりに緊張していたし、メイリンも出来る限り愛想良くしていたが、良い雰囲気になるようなこともなかった。
まあ、後ろの興味津々のギャラリーが居れば、当然といえば当然かもしれない。
遺跡についた4人は、警備をしている森羅カンパニーのソルジャーに許可証を見せて、内部へと入っていった。
「異界というか、別の世界へのゲートを研究していたと推測される遺跡なんだ、ここは。
その手の文献はあまりないんだけど、向こうの住人達を「魔神」と称していたらしい。
イメージとしては、知性を持ったモンスターってところなのかな」
『へ~~』
「関係としては常に敵対していたってことになると思う。言い方を変えれば、彼らは侵略者になるからね」
調査途中、ルフトの講義に耳を傾ける3人。
ほとんどが調査済みということで危険はほぼないという話だったが、遺跡に入ってからずっと3人ともピリピリしていた。
五感ではなく、それ以上の感覚がなにかを感じていた。
「雰囲気は良くないわね。まあ、雰囲気の良い遺跡があれば、見てみたいけど」
レイセンのつぶやきが、ランタンだけに照らされた通路に響く。
「場所によりますかね。地下にある遺跡だとやっぱりどうしても……ああ、ここが最後の大部屋ですね」
4人は順調に調査を続け、最深部の最後の1部屋の前にまで来ていた。
「ちょっと、ここだけまた感じが違うんだね?」
チルノが思ったままの感想を述べる。
「そうですね、ここだけ造りが少し違うのかな? ここも調査済みではあるので、問題はないとは思いますけど」
ルフトがそう答え、先に進んだ。そこは部屋というより、ドーム状の空間と言えた。
「ほへ~、なかなか広いねー、ここは」
「ええ、ここが魔神を召還する場所だったようです。魔神王を…って、あれ?」
メイリン、チルノ、レイセンに戦慄が走った。
部屋の中心部に突如、光り輝く魔方陣が出現する。その魔方陣は即座に効果を発動させた。
4人はその光の中に飲み込まれた。

「お~い、誰かいないの~!?」
チルノが声を響かせるが、返答はない。
突如発動した魔方陣によって、1人だけ知らない場所へと転移されてしまった。
周りは天井に灯った白い光源により照らし出されて、意味もなく広い空間にぽつりとチルノだけがいるのだった。
「これは本格的に困ってきたかなー。トラップだかなんだか知らないけど、はぐれちゃうとは思わなかった」
仕方なくどこか出口を探してさまようチルノだった。
当たり剣を右手に持ち有事に備えながら、歩き続ける。
そんなチルノの後ろで、急に気配が生まれた。
チルノはとっさにしゃがみこみ、頭上を通り過ぎる凶刃をやりすごした。
その直後に、当たり剣で自分の背後を薙いだが、手ごたえはなかった。
当たり剣を構え直すチルノの目の前に、1人の少女が姿を現していた。
短剣にしては少し長めの剣を2本持った少女。
黒を基調とし、やたらと白のフリルのついたロリータゴシックの格好をした少女だった。
身長としてはチルノとあまり変わらない。
「あら、なかなかやりますではございませんの」
「うわー、なに、このフリフリさんは?」
「魔神将が1人、ゼフィス・リーリエですわ」
「魔神将??……」
チルノが首をひねる。
「異界の住人と思っていただいてかまいませんわ。
この世界の住人を、蹂躙しに来ましたの。殺して、犯して、ひき潰す。
そのために、ゲートをくぐってやってきましたわ」
魔神将と名乗る少女の言葉には狂気が宿っていた。
少女を見つめるチルノの眼光が鋭さを増す。
「じゃあ、あんたはアタイの敵ってわけだ」
「そうですわね、ちなみにちんちくりんなあなたは何者なのか、教えていただけるとありがたいのですが?」
「アタイ?……ああ、アタイは、通りすがりの正義の味方さ!」
びしっとポーズを取って格好つけてみたチルノだった。
「うわ……なんて頭の弱そうなお方ですの。容姿通りやっぱり脳みそが足りないみたいですわね」
とても同情したようなゼフィスの言葉が、チルノの心情を逆撫でする。
「ムカっ!! なんつう言い草、とっても人情味がありゃしない!」
「人間ではない魔神将に人情なんてあるわけないじゃありませんの。
これはますますバカ確定ですわね」
「バカって言ううううなあああ!! バカって言うほうが、バカなんだぞ!!」
チルノが吼える。それに答えるように、ゼフィスは駆け出した。
「あははは、わたくしをバカ呼ばわりとは面白い。わたくしのことは、バカで結構でございますよ。
だからバカはバカらしく、殺し合いを楽しみますわ!」
嬉々として剣を振るってくる魔神将ゼフィスと、チルノの闘いが幕を開けた。


突如、はじめてみました。
「アドヴェントチルノ」のSS第二部、「VSリーリエ姉妹」
前に、チルノとレティが刃を交えるSSを書きました。
まあ、それの続きってことで。
今回も、全6話で文量的にも同じぐらいで書きたいところです。
1話あたりワードで4ページを、2,3時間って制限内で出来るだけ書こうって目標で。
チルノだけじゃなく、メイリンやレイセンの闘いなんかも書きたくなったもので書きます。
「チルノ勢VS魔神将」が今回のお話になります。
内容は頭ん中じゃ全部出来てるんですが、いざ書き出すとなかなか時間がかかるもの。

おいてけぼりの人はごめんなさい。
牛木義隆さんが描いておられる「アドヴェントチルノ」という同人誌のSSになります。
http://homepage2.nifty.com/onenightstand/

極力、イメージ壊さないように心がけます~。
内容は…まあ、ちゅうにびょう全快ってことで~wwww


あとは、パーティゲーム「マリそば」で牛木さんに描いていただたいたカードもご紹介。
ホムペも今日、明日くらいに、それなりに更新しようかと。

明日という日を生きるには、今日という日をまず生きなくてはならんのだ

2008年08月29日 22時32分42秒 | アドヴェントチルノSS
今日は、なんだか突発的な雨がひどかった。
うみゅうう。

とまあ、たいしたこともなく、明日とか言いつつ、今日のうちに
アドヴェントチルノSSの解説という名の言い訳をしてみる。

チルノとレティの闘うお話が書いてみたくなったんですよ。
んで、がちりんこのタマの取り合いするのなら、相当な理由がないとがちりんこにならんと思ったわけですよ。そうしたら、まあ、こんな話になっちゃったわけです。
文量として、各話出来るだけ均等に努めはしたんですけどねー。

第1話:
「ボーダーオーバー」は、お話のアクセントに欲しかったので妄想。
メイリンの喫茶店が繁盛しているかどうかは、実際にはわかりませんwww
でも、メイリンの魅力にめろめろな男性客って多そうじゃね?とか思いつつ、こんな仕打ちw

第2話:
彗音の胸に顔をうずめてーなーと思っていたら、あんなことに。
藍は最初出す予定じゃなかったけど、おいしいお仕事してくれて嬉しかった。

第3話:
本編同人誌の4冊目のドラゴン対戦時のスイカバー離脱が格好良かったので、俺も俺もとwww
ワンアクセントつけたくて、左手でスイカバーを振ってもらいました。

第4話:
中2病言われても、否定出来ないオリジナル要素てんこもり。
レティの「奥義」と「レティストラッシュ」は空想なれど、結構気に入ってたり。
本編のレティ見てると、本当に「アバンストラッシュ」って剣の振り方しているので、ついつい自分で言わせてしまった。
セブンソードチルノ=「ソーダバスター」も空想。
「ちるのい!」なるパーティーゲームで、Aチルノのイラストが出ているのですが、
剣の数が7本!!! なんだ、なにが多いんだ!?と思ったら、ソーダバーを大きくした剣があって、これは是非ネタにしようと思って入れてみました。
「氷斬剣“フリーレンシュラーク”」は、前に自分が(通常の)チルノとレティのやりとりで思いついたネタ。トドメの一手ならこれかなーって思って、やってみました。

第5話:
「離せよレイセン」が台詞としては好きと思いつつも、このSSで1番動かしにくかったのはチルノだったなと実感。
チルノはなんだかんだで、難しかった。難しい状況に置かれたゆえなんでしょうがねwww
原因はおれじゃあああ

第6話:
書き終わってみて、あれ、これ主人公レティじゃね?って激しく思ったwww
てゐをいじめすぎてしまったのは反省しているけど、アクセントとして欲しかったもので。
チルノと対照的にレティはすげー動かしやすかったwww
レティの人の悪さがすげー気に入ってしまったように思います。
本当は、ここまでそういうキャラじゃなくて、ただ「ちょっとお茶目なだけ」の「僕らのヒーロー(ヒロイン)」だと思っています。
レティは格好良いよねー、素敵素敵。

ってまあ、長らくのお付き合い本当にありがとうございました。

アドヴェントチルノのSSを書いてみた(第6話)終わり

2008年08月29日 03時43分44秒 | アドヴェントチルノSS
これで終了となりまする。
数日間のお付き合い本当にありがとうございました。



<第6話>
レティが姿を現してからは、まさしく一騒動だった。
チルノが泣きじゃくってレティに飛びついた。その後も、チルノの泣き声はしばらく止まらなかった。
なんとかチルノをなだめたレティは、紅茶を飲みながら、てゐがまだ言っていなかった“今回の真相”を語り始めた。
目を腫らしたチルノはやけ食いのつもりか、ばくばくと店内のアイスを頬張りながらレティの言葉に耳を傾けていた。
「おっけー、まずは私が生きてることについての説明をちゃんとしようかな。チルノ、あなたは藍から特別な薬をもらって、それを飲んだでしょ?」
チルノは首を縦にこくこくと振る。
「あれは八意先生が作った特別薬だったのよ。エリクサー並みの希少品。致命傷を負ったら仮死状態させて延命させるという特別薬。その薬のおかげで私はなんとかその間に治療を受けて、今も生きていられるというわけ。
“幻想郷の敵”となってしまう“特異点”も、その時に手術で取り除いてもらえたわ。そこまで死に掛けなければ“特異点”を取り除けないわけでもあったんだけどね。
まさに、八意先生さまさまと言うわけね」
「ということは……レティさんとチルノの闘いって?」
「そうよ。2人とも死なない予定の出来レース。真っ向勝負だったことだけは、紛れも無い事実だけどね。
……あれ?……一応、てゐには事が終ったら、「私が死んでないことだけは伝えておいて」ってお願いしてたんだけど……もしかしてまだ聞いてなかった?」
『てゐ~~~~』
チルノ、レイセン、メイリンのものすごい非難の視線が、ばっしばしにてゐに浴びせらせた。この兎は本当に大事なことをちゃんと言っていなかった。
「あうううう。言おうと思ってたの! 本当よ、本当よ! ただ、タイミングが悪かっただけよ。チルノが起きてから、ちゃんと言おうと思ってたのよ、本当なの!!」
てゐは両手を振って、必死に弁解する。
「あはは、まあまあ、そんなに責めないであげて。今回の一件は一応、森羅カンパニーの秘匿事項なわけだし」
憤慨する3人を、レティがなんとか宥めた。それでも、レイセンによる耳ぎゅうぎゅうの刑は免れることは出来なかった。
てゐの悲鳴が店内にこだまする。
「社長直々になにかするのだって、そのこと自体はかなり異例の部類に入るわけなのよね」
「もしかして、あの謎の建物って、チルノの力量を確かめるためにやったことなのかしら?」
レイセンが疑問を口にする。
「まあ、かもしれないけど、ちょっとわからないわね。その時期は、まだ“特異点”の発生時期じゃなかったわけだし。
そういえばチルノったら、私を倒した後、社長に色々言ったらしいわね?」
「そら言いますよ、全然、本当のこと言ってくれないんですもん。
まさに社長の“人の悪さは折り紙が千羽鶴”ですよ……もちろん、先輩もだけど」
「あははは、本当にごめんごめん。まあまあ、社長に関しては、そういう人だから諦めましょうよ。
あと私も半分だけ嘘をついていたわ。本当にごめんね」
「え? 半分だけ嘘をついてた?」
「ええ、そうよ。地震やモンスターの凶暴化を引き起こす“特異点”。それは約60年周期に発生する。ただ今回は例外が発生した。本来は力のあるモンスターに“特異点”が発生するのだけれど、今回は私に……そして、もう1人の中に発生した。
ようは2つの“特異点”が発生しちゃったわけ。そうなると、いつもは社長本人が出向いてモンスターをやっつけるっていうわけにもいかなくなっちゃったのよ。1つでの影響力は小さくなったから、社長や八意先生の研究に付き合ったりもしたわけだけど」
レティは紅茶を飲み干した。
「もう一つの“特異点”。それは、チルノの中に発生していた」
『えええええ???』
チルノ、レイセン、メイリンは驚きの声を上げた。
「その観察のために、てゐは地震発生からしばらくこのお店に顔を出していたと思うけど。そうなのよね~。不思議なことにチルノと私の中に“特異点”が発生しちゃっていたのよ。
しかし、チルノはなんだかほとんど変化がなかったみたいだけど」
「……えと……そうですね、なんだかもやもやした気分にはなりましたが」
「でも、それだけでしょ? なんだかとってもモノを壊したいとか、そういう破壊衝動とかは沸かなかったわけでしょ?」
チルノはうなづいた。
「とまあ、そんなわけで私とチルノでまずは闘って、特異点同士をぶつけあいましょうって話になったわけなのよ。チルノには本当に申し訳なかったけどね。
八意先生は、チルノの特異点も処置してくれたわ。ちょっと時間がかかったことは許してほしいって、本人も言っていたわ。
さてと、これにて一件落着ってことでいいかな?」
レティが皆を見回す。
「それでお詫びの意味も込めて、みんなを超高級レストラン「ボーダーオーバー」でのディナーにご招待するわ。社長が予約を取ってくれているから、今から行っちゃいましょうか。
そこの歌姫様も是非一緒にね」
『おおお~~~』
「この「中国」の一ヶ月間の売り上げくらいにお値段がするあのお店に?」
「レイセン、それ以上言ったらゲンコツあげるわよ?」
「嫌だなー、姉さん。冗談だって」
「うわ~、嬉しい~です~」
レティの提言に皆が喜び、ミスティも歓喜を表す。
だが1人、チルノだけはぶすっとした表情であった。
「あら、チルノはなにかご不満?」
「モノでごまかされたみたいで不満。あんだけのことをさせられたってのにさ。食事で許してってのはちょっと……アタイは本当に、悩んだ末に闘ったってのに……」
チルノの不満はもっともなものだった。
「本当にごめんなさい。
私は幻想郷を守りたかった。チルノを悩ませるとはわかっていたけどね……」
「ううううう」
チルノのうめき声に、レティは苦笑し誘いの手を伸ばした。
「ちなみに、料理長が腕によりをかけて、アイスデザート作ってくれるって言っているし、チルノも一緒に行かない?
それに……」
「それに?」
「楽しかったでしょ?」
素晴らしく人の悪い笑みをレティは浮かべていた。
チルノはそんなレティに激しくくだを巻いたが、結局は誘いを受けた。レティの人差し指を、チルノは親指と人差し指だけで握り返す。
「しょうがないから、行ってやるわよ」
「はい、決定~」
レティから満面の笑みがこぼれた。


おわり~~~~~~




次回「魔導剣士リリカルチルノアドヴェント」はじまり…ませんから。

おつでした。
読んでくれた人には、感謝感謝です。
言い訳という名前の解説は、明日にでもしようかと。

アドヴェントチルノのSSを書いてみた(第5話)

2008年08月27日 21時22分36秒 | アドヴェントチルノSS
なんつうか、始終眠さがつきまとう。

実は初めて、まんがタイムきららフォワードを買った。
……チラシがついてたら、本当はもっと良かったんだけどねー……

ちゅうにびょうじゃないもん(ほんとか?







第五話

「社長ォォォォォォォォ!!!」
チルノの怒声が響き渡る。
だが社長こと、八雲紫の顔は涼しいものだった。
「なによ、そんなに怒鳴ることないじゃないの?」
八雲紫は、手にした「社長」と書かれた扇子を広げて口元を隠した。
「社長ォォォォォ!!!」
二人の視線が混ざり合う。チルノの視線は一片たりとも外れなかった。
「何故こんなことに、何故こんなことに!?」
その場から立ち上がれない程負傷したチルノであったが、爆発した感情は抑えられなかった。
「レティは説明したはずよ。正義の味方であるあなたに“倒されること”を望んだことを」
「でも、なんとかならなかったんですか!? 確かにアタイは先輩の望みに応えた!!
でも、でも、社長だったら、なんとか出来たんじゃないんですかッ!?
先輩を助けられたんじゃないんですかッ!? あなただったら、なんとか出来たんじゃないんですかッ!?」
チルノは罵る様な疑問を何度も口にする。
わかっていたはずなのに、言わずにはいられない。
八雲紫の目じりにしわが寄った。
「……なんとか出来たのなら、なんとかしたかったわよ。
レティは“特異点”の宿主になってしまった。だから“幻想郷の敵”になった。
本当になんとかしたかった。彼女が倒されることなんて、私は望んでない」
八雲紫の言葉には、口調こそ静かであったが力が篭っていた。
自分の力の無さを悔やむ響きがあった。
「アタイだって望んでなんかいない!!」
「でも、レティがそれを望んだから、あなたはレティを倒した。
彼女が望んだからこそ、私は“友達”の望みを叶えるための舞台を整えた。
私だって、なんとかしたかった」
八雲紫は扇子を閉じる。自分の肩書きを恨むかのように。
チルノはそれ以上何も言えなくなってしまった。
「くううううう!!!」
チルノ自身も、八雲紫の悔しさを痛いほど共感したからだ。
「チクショォォォォォォ!!!」
その時、チルノに出来たことは力の限り叫ぶことだけであった。

チルノとレティが剣を交えて、10日間が経過した。
チルノは喫茶店「7番街中央通り上海喫茶天国」略して「中国」にある寝室で眠り続けていた。
3日前に、レイセンとメイリンの元に帰ってきたチルノであったが、意識は戻らないままの状態であった。
レティとの戦いによる傷は、森羅カンパニーの技術力により全て治っていた。そして、チルノの愛剣であるバスタードチルノソードも完全に修復されていた。
「チルノはまだ目を覚まさないの?」
客として来ているレイセンは、女主人のメイリンに聞いてみた。
「ええ、まだよ……時々うなったり、寝言を言ったりしているから、大丈夫だとは思うけど」
「ったく、傷は癒えているってのに、こんなんじゃ信用問題だわ。早く起きてほしいわよ」
レイセンの隣の席の因幡てゐは、そうぼやいてみせた。
「て~ゐ……」
レイセンがてゐの名前を低い声で呼び、たしなめる。てゐはくだを巻いた。
「ごめん、分かってる。ちょっと愚痴っちゃっただけ……一番つらいのは、あいつだってことは、私だって分かってるつもりよ」
レイセンとメイリンは、因幡てゐから今回の事件の真相を聞いていた。
幻想郷の異変の原因、それを解決するために行われた方法。レティの望みにチルノが応えたこと。それによって失われたモノのことを。
店内にはミスティの歌声だけが響く。
そのメロディや歌詞は楽しげなもののはずだったが、どこか寂しさを感じずにはいられなかった。
「でも、最近起こっていた地震はもう起こらなくなったし、事件としては解決したわけよね。
森羅カンパニーはまだ色々ごたごたしているみたいだけど?」
「そうね。モンスターの凶暴化もおさまったし。それにしても、てゐはこんなところで油売ってていいの? 仕事さぼってると師匠にお仕置されちゃうわよ?」
「ぶううう。ここに来ているのはれっきっとした仕事よ。師匠から、チルノの様子をちゃんと見てきなさいって言われているの。だから、このお店に顔出してるんじゃないの」
メイリンとレイセンの疑問に、てゐは頬を膨らませながら答えた。
「はいはい、じゃあ、チルノの診察でもしてきたら?」
「ん~~、必要ないかなー? チルノを治したのは師匠、直々なんだもの。問題ないと思う。それにちょっとね……手を出すなって師匠から言われてて……」
口ごもるてゐにレイセンは軽口を叩いた。
「へー、森羅のトラブルメーカーのことを、師匠も分かってらっしゃるってことですか」
「ち、違うわよ、レイセン!」
「まあまあ、てゐちゃん、落ち着いて。レイセンもいじめるようなこと言っちゃだめよ」
「はいはい」
メイリンの仲裁を受け入れ、肩をすくめるレイセンであった。
「むき~、違うのに~!」

3人はあまり弾まない談笑を交わし続けていた。
そこに起き出してきたチルノが、奥から店内に姿を現した。ものすごい仏頂面で。
「あ、チルノ、起きたんだ、大丈夫?」
メイリンがすかさず駆け寄る。だが、チルノからの返答はなかった。
てゐの姿を見つけ、淡々と近づいていく。そして、てゐの胸倉へとその手を伸ばした。
がしっ!
だが、てゐの胸倉を掴む前に、チルノの伸ばした腕はレイセンに掴まれてしまった。
「離せよ、レイセン」
チルノの鋭い眼光がレイセンに向けられた。
「やめなさい、チルノ。事情は色々と聞いたわ。今回の件で荒れる気持ちは分かるけど、てゐに八つ当たりするのは違うんじゃないの?」
レイセンは引かずにチルノと見つめ合った。
先に視線を外したのはチルノの方だった。チルノは歯を食いしばる。
「……なんでこんなことになったんだ。全部、森羅が悪いんじゃないのかッ!?」
「んなわけ、ないでしょう……そのことを、あんたが一番解っているはずでしょうが」
「はうはう。アリスにS・OS!! 乙女のピンチピンチ!!」
てゐはメイリンの後ろに隠れている。
「……ちきしょう」
チルノは怒気を収め、うなだれた。
ミスティの歌声も途切れ、店内は重苦しい雰囲気に包まれた。
カランコロン。
そこに1人の客が現れた。
本来なら、現れるはずのない客が。
「あ、いらっしゃ……えぇぇぇ!?」
新しい客に気付いたメイリンが、思わず驚きの声を上げてしまった。
「こら、チルノ。そんなんで正義の味方のつもり?」
新たな客の姿に見たチルノとレイセンは絶句した。
それは“レティ”だった。

アドヴェントチルノのSSを書いてみた(第4話)

2008年08月26日 09時52分54秒 | アドヴェントチルノSS
オリジナル設定満載で第4話をお届けしまっする。
そのへんは、やっぱりご容赦を。








第4話

お互いに奥義を放った2人。
奥義が勝ったのはレティの方であった。
チルノは「大当たり」を引くことが出来なかった。
レティに同時に迫った6本の剣。その剣は無残にも全てが遮られ、全てが弾かれた。
飛翔し、レティへ向けられた剣は、“隙間”から現れたレティの剣の“二つの鞘”によって弾かれた。その二つの鞘は、その刀身を砕くという荒業さえやってのけた。それはチルノ持っていた当たり剣も例外ではなかった。
迎撃に放たれたレティの剣の刀身に触れた途端、当たり剣は砕けてしまったのだ。
驚愕するチルノ。
レティの奥義は「最強の矛ではなく、最強の盾」なのであった。
砕けた刀身が舞い散る中、レティが次なる一撃のために剣を引く。
「レティ…」
チルノの身体は、激突の衝撃で宙に浮いていた。刀身の砕けた当たり剣でなんとか受けようとする。
「ストラッシュ!!!」
レティは全力全開で剣を振り抜いた。
チルノは遥か後方へとぶっ飛ばされた。
なんとか当たり剣の柄で受けられたものの、その衝撃のすさまじさはチルノに大ダメージを与えた。
「はあはあ……はあはあ……」
肩で息をするレティ。その視線の先には、地面に倒れ伏すチルノの姿があった。
「“最強の矛をも殴り飛ばす、最強の盾であれ”……これが私の信念。
そして、私の奥義は“最強の矛をも砕く、最強の盾を生み出すこと”……
残念だったわね、チルノ」
倒れていたチルノがぐっと拳を握り締める。
「は、ははは、そらああ、なんともひでえ話だ」
なんとか顔を上げ、チルノはレティを見据えた。
「いやー、強い強い」
痛みに耐えながら、チルノは時間を掛けながらもなんとか立ち上がった。
レティはその姿を、手を出さず見つめ続ける。
「まだ……やるつもり?」
「クライマックスはまだ終ってないですよ」
チルノの瞳は、まだ死んではいなかった。
レティは内心動揺していた。自分のあの渾身の一撃を受けて、チルノが立ち上がれるとは思っていなかったからだ。
だが、その疑問の一部は、自分の剣を見直すことで氷解した。
自分の剣の極一部が氷結していたからだ。レティはその微量の氷を取り除く。
「なるほど……とっさに防御は出来ていたわけだ。自分の能力を使って、威力を削いでいた。これはちょっとやられたわね。でも、もうあなたの剣はどれも使えないわよ?」
当たり剣は柄さえも砕け散っていた。他の剣もそれは同様で、満足に戦える剣はこの場にはもうチルノには残されていなかった。この場には。
「確かにびっくりですよ、こんなこと。6本全部使えなくなるとは思わなかった。と・こ・ろが、ぎっちょんッ!!」
チルノが地面を蹴飛ばすと、1本の剣がチルノの元に現われた。
「ソーダバスター!!」
ソーダバーアイスをそのまま大きくしたような剣だった。その剣をチルノは構える。
「7本目……呆れた、まだあったのね。というか、剣というよりこん棒よ、それ」
「アタイは極上の負けず嫌いなんですよ!」
レティの疑問は、全てが氷解した。
チルノは極上の負けず嫌いなのだ。だから、立ち上がれたのだ。
自分が殺すつもりで放った一撃を受けてもなお……
自分の奥義が破られて、なおもまだ立ち上がることが出来る。
「そうね、その通りだわ。来なさいチルノ。セブンソードチルノのあなたも打ち負かすわ」
レティは剣を構え直し、チルノへと向かっていった。両者は再び斬り結ぶ。
満身創痍のチルノもそうだが、レティも動きが鈍っていた。奥義による消耗が思った以上に激しかったためだ。
十合斬り結び、レティがずっと優勢なのは変わらずであったが、チルノのタフさにレティはほとほと感心していた。そして、その成長を本当に喜んでもいた。
昔は模擬戦をしたら簡単に一本を取られたチルノが、自分との死闘を今は互角以上に闘っている。それはチルノの努力の賜物でもあり、“幻想郷を守りたい”という心の強さの具現でもあった。
レティは一切手を抜かなかったが、その斬撃一つ一つは褒め言葉のようなものだった。
「でも、まだ私の方が強い」
レティの剣がチルノのソーダバスターを、その手から弾き飛ばした。
逆手から剣を持ち替えて、上段から振り下ろす。
無防備になったチルノの身体へ、レティは剣を走らせた。
ざっくりと斬り裂かれるチルノ。血しぶきが盛大に舞い散った。
レティは勝負がついたと思った。
自分の勝ちだと、この戦いはこれで終ったと……
チルノを斬り裂いた後のレティの心には、隙が生まれていた。
そう、間隙が生まれていた。
その間隙に、何かが突き刺さった。
「えっ!?……」
レティの胸になにかが突き刺さっていた。
突き刺されていた。
「つ、つららが……」
レティは“紅く染まった大きな氷柱”に胸を貫かれていた。
「氷斬剣“フリーレンシュラーク”」
紅く染まった大きな氷柱は、血塗れのチルノの右腕から伸びていた。明らかな致命傷だった。
レティの手から剣がこぼれ落ちた。
「ああ、なんだ……私ったらあなたのこと、すっかり忘れちゃってたのね」
チルノは自分の血を媒介にして、レティへと氷柱を伸ばしていた。レティはそれに貫かれたのだった。チルノの能力で水を凍らせて氷柱で攻撃する。このアイデア自体は、元々レティの思いつきによるものだった。
「レティ……」
氷柱が折れて、レティは崩れ落ちる。チルノの傷も相当深いものだが、かろうじて立っていた。
「ふふ、久しぶりに呼び捨てにしてくれた。ちょっと嬉しい」
「レティ!」
チルノは顔を歪めて叫ぶ。レティの元に駆け寄りたいチルノだったが、膝から崩れた。チルノ自身も満足に動けなくなっていた。
「レティ!」
「もう、声が大きいんだから」
慌てるチルノに対し、レティは至極落ち着いていた。胸に致命傷の氷柱が突き刺さったまま。
「レティぃぃぃ!」
必死に這いずってチルノはレティの元に近づいていく。あと一歩という距離がとても長かった。
「頑張りなさいよ、正義の味方さん……チルノならきっと大丈夫よ」
レティはとても満足気だった。そして、それがその時の、彼女の最後の言葉となった。
「レティぃぃぃ!!」
チルノがレティへと手を伸ばし、それが届こうとする瞬間だった。その手から逃れるようにレティの身体は床の中に沈んでしまった。否、突然生まれた“隙間”に沈んでしまった。
まさにチルノの手から逃れるかのように……
「お疲れ様、チルノ」
唐突に声が生まれた。その声にチルノは反射的に息を呑んだ。
チルノは睨み付けた。その声の主を。そして、力の限り憎しみを込めて叫んだ。
「社長ォォォォォォォォ!!!」

アドヴェントチルノのSSを書いてみた(第3話)

2008年08月24日 23時59分41秒 | アドヴェントチルノSS
日曜日はBankett!!の大会に参加してきました。
そのことについては、明日にでも書こうかと。

とりあえずは、大会に参加した皆様おつかれさまでした。


んで、アドヴェントチルノ 第3話をお送りしまっする。
第3話と第4話の内容が書きたくて、全6話になったようなものなので、
とにかく色々大暴走。


第3話

チルノは何度もバスタードチルノソードを振るった。だが、全てレティの剣に弾かれていた。
レティはその重い一撃一撃を的確にさばき、速く細かい斬り返しでチルノにペースを握らせないでいた。
リーチの長さはチルノに分があったが、剣速ではレティに分があった。
「でええい!!」
チルノが渾身の力を込めて、上段からの斬撃を放つ。
「大振りは、悪い癖って言ったはずよ!」
レティは己の剣を盾とし、チルノの斬撃を逸らす。
バスタードチルノソードが地面に突き刺さった。
レティはその機会を逃さず、間合いを詰めようとする。
だが、それはチルノが狙っていたことだった。
地面に突き刺さったスイカソードだけを分離させて、一歩踏み出すと同時にチルノは右手だけで持った当たり剣を思いっきり振り上げた。
「!?」
レティはその予想外の攻撃をなんとか身をよじることでかわした。だが、当たり剣はレティの頬に一筋の傷を与えた。
レティの体勢が崩れた。
踏み込んだ勢いのまま、チルノは左手でスイカソードの柄を掴み引き抜いた。レティとすれ違う形でスイカソードを振るうが、それはレティの剣に阻まれた。
右手には4本の剣を装着した当たり剣、左手にはスイカソードを持つチルノ。やや腰を落とし、剣を構えるレティ。
両者の距離が開き、2人は再び対峙する。
「驚いたわ……そういう使い方もあるわけね。いやー、随分と腕を上げたわねー、チルノ」
「ええ、先輩と別れてからも、アタイなりに修練は欠かしてないですよ」
「嬉しい限りね」
レティは頬の血をぬぐい、本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。
そして彼女は、一歩踏み出した。
一歩踏み出しただけのはずだった。
だが、二人の距離は一瞬でなくなり、横殴りの一閃がチルノに迫る。今度はチルノが驚く番だった。
恐るべき速度で振るわれた一閃に対し、剣をクロスさせて防ぐ。だが勢いは殺せなかった。チルノは後方へと弾き飛ばされてしまった。
たたらを踏みながらも転倒だけは防いだチルノは、あることに気が付いた。
剣を振りぬいた体勢のままで、レティが微笑み続けていることに。
「これでようやく、本気が出せるわ」
その微笑みに、チルノの背筋に何かが走った。
「……上等ッ!!」
その何かをチルノは気合で吹き飛ばす。その何かを畏怖としないためにも。

お互いに踏み出す両者。剣舞はさらに熾烈を極めた。
左右の剣で斬りかかるチルノだが、さらに速度を増したレティを捉えられない。レティの剣は、チルノを徐々に追い詰めていた。レティの剣があまりにも速すぎて、チルノは後手に回らざるをえなかった。
「さすが、ソルジャークラスファースト!」
「元よ!」
「あははは、そうでした!」
「さあ、手が出ていないわよ、ソルジャー!?」
「元です!」
『今は』
「正義の味方!」
「自警団!」
レティとチルノの掛け声が異語同音でハモッた。
互いの剣が火花を散らし、鍔迫り合いになる。
「と言っても、私は“幻想郷の敵”になっちゃったわけだけどね」
力の押し合いになった。
「おかしいわね。何故だが楽しいわ、私」
「奇遇ですね、先輩。アタイもですよ」
互いに笑みを浮かべながらも、必殺の剣を決めるために両者は剣に力を込めあう。
「正義の味方なら、この私を倒してみせなさい」
「言われなくても…」
チルノの力が一気に上昇する。
「やってみせますよッ!!!」
チルノの剣がレティを弾き飛ばした。
「くううう、やるわね~」
バックステップでなんとか追撃を逃れるレティだった。
チルノの背中に氷の羽が生まれていた。
「エンゲージ!」
スイカソードを装着し直して、チルノは巨大剣バスタードチルノソードを構え直す。
レティは剣を腰の後ろに回し、迎撃の体勢を取る。
二人の間にさらなる緊張が生まれた。次の一撃のために、互いに力を高め合っている。
「来なさい、チルノ……」
レティが小さくささやく。
チルノの瞳が見開かれた。
「ブレイク!!」
バスタードチルノソードが分離して、レティに迫る。チルノも同時に飛び出していた。
『奥義……』
「超⑨武神覇斬!!!」
「パーフェクトブレイカー!!!」
2人の奥義がぶつかり合った。

アドヴェントチルノのSSを書いてみた(第2話)

2008年08月24日 01時05分06秒 | アドヴェントチルノSS
妄想大爆走。

どしりあすなのは、ごめんなさい。
全部載せ終わったら、どうしてこういう話になったかなども書こうかと。


チルノはレティの突然の申し出を理解することが出来なかった。
チルノの思考は凍り付いていた。
「あの、闘うってなんで?
え、どうして先輩とアタイが闘わなくちゃいけないんですか?」
「あなたが正義の味方だからよ」
「え?……」
「ああ、まあ、そうよねー。チルノも久しぶりに会ったっていうのに、突然こんなこと言われたら、わけわかんないわよねー。ごめんごめん。
ちょっと順番に説明するわ」
「はい」
レティはまず今回の地震やモンスターの凶暴化などは、“特異点”というものが発生したために起こる事態だと説明した。
60年に1度、幻想郷には“特異点”なるものが発生する。
幻想卿に災害をもたらすモノ、それが“特異点”と呼ばれるものであった。
通常は力のあるモンスター内などに発生して、幻想卿に天変地異を引き起こす。
そのため幻想郷の平和を守るために、森羅カンパニー社長、八雲紫はそのモンスターを必ず倒してきた。それがずっと繰り返されてきた。
「森羅カンパニーがモンスター研究を盛んに行うのは、そういう理由もあるみたいなのよね。
でも、今回は違う……“特異点”は私の中に発生した。
おかげでつらいわ。
なんだかすごくモノを壊したくなる衝動に駆られるの。そんな嫌な衝動が沸き出てくる。
言うなれば“特異点”は“幻想郷の敵”になるのよね。
自警団をやっている私が、幻想郷を愛しているはずの私が、幻想郷を壊したくなるのよ。
なんだかなーって思っちゃった」
レティは痛みを含んだ笑みを浮かべた。
「今もそう……破壊衝動がひどい。
だからね、社長に言って出来るだけ隔離してもらったんだけど……
でも……やっぱり、社長の力でも無理みたい。私は幻想郷のためには、必ず倒されなくちゃいけない。そういう存在になっちゃったの。
でね、思ったの。
どうせ倒されるのなら、私はチルノに倒されたい。
正義の味方のあなたと闘って、倒されたい。
そう思ったの。だから社長にお願いして、この場所を用意してもらった。
だから、私と闘ってって、お願いしたの」
「せ、先輩っ!
そんな、幻想卿の敵だなんて、そんなのいつもの悪い冗談ですよねっ!?
そんなのって、そんなのってないですよね!!?」
「ごめんね……この2週間、森羅カンパニーと色々やってきたけど、無理だったの」
レティは許しを請うように、うつむいた。
「そ、そんな……私が先輩を倒す? 倒さなくちゃいけない?
そんな、そんな……」
「チルノ……あさってまでなら答えを待てるわ……今、結論を出さなくても構わないから。
ごめんなさいね、ひどいわがままを言って。解ってるつもりだけど、お願いしたいのよ。
あさっての日に、改めて答えを聞くわ。それまで良く考えてほしい。
じゃあね……」
レティはそう言って、チルノのそばから離れていった。
チルノはただただ、呆然とするより他無かった。
このほとんどが白で支配された世界で、チルノはただ1人、答えを探していた。

幻想郷はすでに夜遅くになっていた。
森羅カンパニー内のエレベーターが戻ってきた。
「おかえりチルノ」
目の据わったチルノを出迎えたのは、藍だった。
「社長はどこにいるの!?」
怒声のような開口一番だった。
「下の空間の維持に手一杯で、出てこられないよ。地震が微震で済んでいるのは、社長のおかげなんだ。
レティに会っただろう……それが君を呼んだ理由だよ。社長を呼んで済む問題なら、君を呼んだりはしない」
激高するチルノと対照に、藍の態度は冷静そのものだった。
「そんなこと言ったって!!」
「正直、こっちも時間が無いんだよ。レティはもう限界に近いんだ。
レティはこちらの実験に色々付き合ってくれた。でも無理だったんだ。
この2週間、彼女はずっと苦痛に耐え続けてくれたんだ。
常人だったら、とっくに狂ってるくらいの苦しみにだ。
そんな彼女の望みは、君と闘うこと、君に倒されること。その願いをかなえる手伝いをしたいと思って、どこが悪い?」
「じゃあああ、アタイの気持ちはどうなるんだよっ!?
先輩を倒せって!?
馬鹿言うな!! そんな簡単に言うな!!
あの人はな、アタイの友達なんだよ!!
目標なんだよ!! 憧れなんだよ!!
それがなんで闘わなくちゃいけないんだよ!?」
チルノは吼えた。
「それが、彼女の望みだからだ」
藍の言葉が空間を支配した。
チルノは二の口が告げなくなった。わなわなと怒りに全身を震わせるが、言葉を口にすることが出来なかった。
チルノ自身、分かってはいるのだ。森羅カンパニーが全力を尽くしたことくらい。
それを理性では納得していても、感情が納得出来ないで苦しんでいた。
「もし、君がこの一件を断ったとしたら、レティは社長が倒すことになる。それは何があろうと変わらない。分かると思うがね。
そして、社長からの伝言だ。『“友達”なら助けてあげなさい』……だそうだ。
私個人からもお願いする。彼女を助けてやってほしい。頼む」
藍は姿勢を正し、深々と頭を下げた。

次の日、チルノはレティと初めて出会った場所を彷徨っていた。
相変わらず微震が続く幻想郷で、彼女は1人佇んでいた。
レイセンとメイリンが探しているかもしれないが、2人を気遣う余裕もなかった。
その後、チルノの足は自然と白沢園に向かっていた。
チルノに気付いた園長の彗音は、園内に招き入れ、冷たいお茶を出した。
「どうした、チルノ? すごく元気がないな。いつものお前らしくないぞ?
明らかに悩んでいるって、顔してるぞ」
「だと思う。アタイもこんなに頭を悩ませたのってないかも」
「そうか……かつてない問題児だったお前も、そんなに悩むことがあるんだなー」
チルノは白沢園の卒業生だった。彗音は身寄りのない子供を引き取り、この学校を開いている。
「センセ、何気にアタイのこと馬鹿にしてない?」
「あはは、そんなことは無いぞ。馬鹿になどしていない。むしろ、お前のことを誇りに思っている」
「誇り?」
「ああ、そうだ。正義の味方のお前を誇りに思っている。
あんなやんちゃだったお前が、ある日を境に突然変わった。
経緯を聞いてはいるが、突然、森羅カンパニーに入ると言い出した時は、正直驚いたものだ」
彗音は昔のことを思い出して、たまらず笑みを零した。
「そら、驚かせて悪かったと思ってるけど」
「チルノ……安心しろ。今のお前はとても立派だよ」
彗音はチルノを抱きしめていた。彗音のふくよかな胸がチルノの顔に当たる。
「色々と悩むことは多いだろう。こんな世の中だ。しょうがないと思う。
でも、私はお前のような生徒を育てられたことを誇りに思っている。
それは忘れないでくれ。頑張れよ……」
「センセ……ありがとう」
チルノは彗音の抱擁に、心が穏やかになっていくのを感じた。

約束の日、レティの前にはどこか吹っ切れたような表情のチルノがいた。
「先輩、決まりました。
先輩は教えてくれた……最強って事は、困ってる人を助けられるって事。
最強のアタイは、先輩を助けます。だから、先輩と闘います!!」
チルノは地面を思いっきり蹴飛ばして、愛剣達を呼び出した。
6本の剣を合体させ、チルノはバスタードチルノソードを完成させる。
そんなチルノにレティは満面の笑みを浮かべた。
「おっけー。ありがとうチルノ。私のわがままに付き合ってくれて。
本当に感謝するわ」
レティも己の愛剣を呼び出した。
見つめ合う2人。信頼し合うが故に闘うと決めた2人だった。
「行きます!!」
「来なさい」
レティとチルノ、友達同士の剣舞が始まった。

アドヴェントチルノのSSを書いてみた(第1話)

2008年08月22日 22時03分45秒 | アドヴェントチルノSS
こんちはっす。
唐突なんですが、これから全6話のSSを載せていきます。

http://homepage2.nifty.com/onenightstand/

One Night Stand様のアドヴェントチルノという同人誌の世界のお話です。
ちょっとねー、妄想が爆発しましてね~、書いちゃったんですよ。
まあ、あくまで俺個人が書いてみたお話ってことでよろしくお願いします。
あとそう、ドシリアスです。本気でごめんなさい。

「マリそば」はもちろん進んでますよー。
……順調ってまでは、言えないんですけどね^^;;;
だぱだぱ


第1話

チルノはバスタードチルノソードを振るう。
渾身の力を込めた斬撃も、彼女の剣捌きにすべて弾かれていた。
今、チルノが全身全霊を賭けて闘っている相手。
それは、チルノの剣の師匠となる“レティ・ホワイトロック”その人であった。
チルノは彼女と剣を交える経緯を思い出しながら、剣を振るっていた。


「最近は、モンスターの凶暴化といい、地震といい、良いニュースがあんまりないわねー」
文々。新聞に目を通しながら、メイリンはつぶやいた。
「そうねー、もうかれこれ2週間近くか。微震とはいえ、ずっと続くと不安になるわよね」
「ん~~、なんか、変な気分が続く……なんだろ、これ?」
「そして、うちの小っちゃい大将は、地震が起こり始めてからずっとこんな感じだし」
レイセンはため息をついた。
いま、七番街では異変が起こっていた。
小さな地震が2週間前から発生し始めて、その震度が徐々に大きくなっているのだ。
それと同時にモンスターの出没頻度が増し、凶暴化するという事態も起こっていた。
地震は微震ながらも数時間ごとに起こるので、モンスターの件と合わせて天変地異の前触れではないかと騒がれていた。
「そうね、ちょっと気が滅入ってきちゃうけど、さて、次のニュースです。
 2週間前に森羅カンパニービル最上階に開業した超高級レストラン「ボーダーオーバー」は、順調な売り上げを上げている。値段は1人あたり「七番街中央通り上海紅茶天国」の一か月分…の売り上げに……相当する……って、なんじゃあああこりゃあああ!!!」
メイリン思わず叫んで、読んでいた新聞を握り締めた。
「へー、あそこのレストランそんなにするんだ。興味はあったけど、行かなくて良かった」
「比べるなんて可愛そうだよ、そのレストランが」
チルノが意味深に店内を見回す。例のごとく、客はチルノとレイセンしかいなかった。
「ううう、こんなことでうちの店名を使うとは……にしても、うちの売り上げなんかいつ調べたのかしら?」
チルノとレイセンは顔を見合わせた。
『さあ?……でも、繁盛してないよね、この店』
チルノとレイセンの頭にゲンコツが落ちた。

「ああ、頭がくらくらする」
チルノは歩きながら頭をなでた。
「余計なこと言うからでしょうが」
隣にいるてゐが苦笑する。
今、チルノ、レイセン、メイリン、てゐは7番街の見回りを行っていた。
地震が発生してから、正義の味方であるチルノ一行は地震で被害にあった住人達の救済に尽力していた。
因幡てゐが、森羅カンパニー経由の依頼として、チルノ達に助力を願ったのだった。
「こう何度も地震が続くと滅入ってくるわね」
「うちの喫茶店も、この前の改修ついでに耐震工事してもらえたから良かったけど、そうじゃなかったら不安だったわね」
「うむ、これぞアタイのおかげよね」
「それは、お店でバトルごっこをした人の台詞じゃないわね」
「しかも自分で修理したわけじゃないくせに」
「あははは」
2人の指摘に、チルノは乾いた笑い声をあげた。
レイセンとチルノが久しぶりに再会したとき、ついついメイリンの喫茶店「中国」でバトルごっこを繰り広げてしまったのだ。
その店の修理は、チルノに貸しをつくったてゐが行った。
そのついでにと、耐震工事もやってもらったので、メイリンとしては安心感があった。
「それにしても、最近、てゐは良く「中国」に来るわよね?
なにか理由でもあるの?」
レイセンが疑問を口にする。
「一応、カンパニーからのお達しだもの。それに従うわよ。
チルノ達と一緒に、街の見回りをしてきなさいって言われてるんだもの。
そりゃ、あなた達のホームベースの喫茶店にも顔を出すようにはなるわよ」
「まあ、そうなんだろうけどね。ちょっと気になっただけよ」
「でも、こうも地震が続くと滅入るよねー。
なんつうか、アタイもここ最近調子出ないし」
「まあまあ。なにはともあれ、見回りを続けましょう。
なんたってうちらは」
『正義の味方だから』
全員がほがらかに笑いあった。

街の見回りが終った後、チルノとてゐだけで森羅カンパニーに赴いていた。
てゐがチルノだけを引っ張ってきたのである。
「なによ~、てゐ~、本当に何の用事よ?」
カンパニー社内を闊歩しながら、チルノは不審のまなざしでてゐを眺めていた。
「いやいや、本当に本当に大事な用事があるのよ、チルノに。
だからお願いよ、来てほしいのよ。お願い!」
「……なんだかなー」
懇願されるにしても、理由がわからないので困惑するチルノであった。
しぶしぶながらも、結局てゐに連れられるままになっていた。
そして、カンパニー奥の一室に通された。
「やあ、チルノ、お久しぶり」
「お久しぶりだね~」
そこには「式神」の藍と橙が在た。
そして、その部屋の中には、何故かエレベーターがあった。
「お久しぶりです」
チルノも少々意表を突かれた。社長直属の「式神」2人の姿と、部屋の真ん中にあるエレベーターに。
「まあ、これでも飲んでくれ。特製ドリンクだ、元気が出るぞ」
藍がポーションらしきものを投げ渡してくる。
チルノは少しは気にしながらも、それを飲み干した。
「ぷは~~、あ、なんかこれおいしいわ」
「そいつは良かった。
さて、さっそく本題だ。君に会ってもらいたい人物が居る。
その人物に会ってもらうために、今日はここに来てもらった」
藍の視線の先には、違和感ばりばりなエレベーターがあった。
「はああ?
アタイに会いたい人……社長ってわけじゃないみたいだし、誰ですか?」
「あのエレベーターを使ってもらえればわかるよ。
そして、そこに在る人物に会ってもらいたい。これは森羅カンパニーとしての正式な依頼だ。
君にしか頼めない大事なことなんだ。頼むチルノ」
藍の眼差しには力が篭っていた。
改めて重たい話だということに気付かされたチルノは、元凶のてゐをにらみつけた。
「どういうことよ? ほんとにあんたって厄介ごと持ち込むわね」
「いやいや、本当にお願いなんですよ。ね、チルノ様、お願いだから受けてってば」
チルノは困った顔で、てゐ、藍、橙を見回す。
「まあ、事情は良くわかんないけど、そういうなら……」
藍はほっとして、息を吐いた。
「感謝する。じゃあチルノ、このエレベーターに1人で乗ってくれ」
「ほえ? 1人で??」
「ああ、そうだ。それが彼女の“希望”なんだ」
「彼女?……希望?……はあああ?」
チルノの頭にはハテナマークが無数に浮かんでいた。
仕方なくチルノはエレベーターに1人だけで乗り込んだ。
エレベーターは静かに下降していった。
そして、数分程かかってようやくエレベーターは停止した。
「なんだか、すごいものものしいわ。なんなのよ?」
チルノは毒づいて開かれた扉から外に出た。
その空間は、本当に真っ白だった。
とても広く真っ白な空間。チルノは唐突に、レティと初めて出会った雪原を思い出していた。
視界の端にとある人の姿があった。
遠くからでも分かる、その見覚えのある姿にチルノは思わず走り出した。
「せ、先輩!」
「やあ、お久しぶりね、チルノ」
それはレティ・ホワイトロックであった。
チルノが正義の味方を志すきっかけになった人物だ。
「お、お久しぶりです。一体、どういうことなんですか、これ?」
「ああ、簡単な理由としてはね、あなたと闘いたいからよ」
「へ?……」
「チルノ……私と闘ってちょうだい。全身全霊、全てを賭けて」