ネット自粛週間の前にお話投下。
チルノとレイセンの部分。ワードで5ページ、3時間強かかっちゃった。
はううう、勉強せねば~~(いろんな意味で
第二部第1話 http://blog.goo.ne.jp/msaj9/e/e7300b6cd5017a2bc0091317ba642482
第二部第2話 http://blog.goo.ne.jp/msaj9/e/a275235804ddb7e8e41c95340004fa95
軽快な金属音がやかましく鳴り続ける。
2人の少女の円舞曲は、とても騒がしいものだった。
チルノとゼフィスの二刀流対決は、お互いに一歩も引かない乱撃戦に突入していた。
2人が互いにドラムか太鼓を叩くかのような、剣の打ち込み合いが続く。
「楽しくてたまりませんわ!」
「そいつは結構!」
互いの剣戟が互いの剣戟を弾き合う。
気の合う仲間のように、お互いの斬撃をぶつけ合う。
どちらにも有効打は撃てない状態だった。
だがゼフィスは満面の笑みを浮かべ続けて、二刀を振り回し続けている。
その剣に殺意はあったが、邪気はなかった。
純粋に、ただただ純粋に、相手を倒すために振るう剣には、不思議なことに悪意が籠められてはいなかったのだ。
そのことを撃ち合い続けるチルノも感じていた。
(まずいな、こっちまで楽しくなってきた)
強い相手、レティを相手にするような、山を登るような闘いも悪くはないが、こんな拮抗した力量の相手と戦うこともチルノの心を熱くさせた。
もう数百合も打ち合われた二刀の乱舞。
チルノは一定のパターンを感じ取っていた。
パターンとまではいかなくても癖として捕らえられる範囲にまで、ゼフィスの剣舞を捕捉しはじめていた。
ゼフィスが2本の剣を左右から同時に振るう。
チルノは“逆手に持ち変えた”ウエハースブレイドで受け止めた。
「なにっ!?」
ウエハースブレイドの回転部分を変形させて、ゼフィスの剣を絡めて取る。
2人はどこかの聖者がはりつけられたような十字のポーズになった。
無防備なゼフィスにチルノが、思いっきり頭突きをぶちこんだ。
ごち~~~ん!!
「うくぅぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゼフィスはたまらずのけぞって絶叫する。
剣を手放してさえ、その場から離れて距離を保った。
「うううう、このチンチクリンは、なんて原始的なことを…」
ゼフィスのおでこは真っ赤に腫れ上がり、衝撃の大きさを物語る。
「どうだい、アタイの慧音先生譲りの頭突きは?
泣けるだろ?」
かくいうチルノも、ちょっぴり涙目だ。
「いたしかたありませんわ。本気を出しますわよ」
「本気? 剣もないってのに?」
チルノが聞き返す。
ゼフィスは2本の剣を手放したままだった。
「アポート!」
ウエハースブレイドの変形機構を解いて、ゼフィスの剣はチルノの近くに落ちた。
……はずだった。
「へ?」
目を離したつもりはないが、ゼフィスの両の手には、紛れもなく2本の剣が握られている。
「なんで剣を? あれ、あれ? 落ちたと思った剣がない!?」
「物体転移の呪文くらい使えなくては、魔神将の名が廃るというものですわ」
唱えた呪文の力によって、ゼフィスは剣を取り戻していた。
「母に抱かれし、闇の衣。我を守りたまえ。
自動的に、主観的に、楽観的に、我の盾となりえたまえ。
闇の盾よ、我を守りたまえ」
ゼフィスがさらになにかの呪文を詠唱した。
チルノにはなんの呪文だかわからなかった。
「さああ、あなたにこれが打ち破れるかしら?
行きますわよ!!」
ゼフィスが突っ込んでくる。それに合わせて、チルノが左手のウエハースブレイドを振るうが、ゼフィスに届かず、まるで見えない盾に弾かれたようにその場に止まった。
「うぃぃぃ!?」
「闇の盾、物理攻撃を止める防御壁ですわ」
勝ち誇った笑みを浮かべたゼフィスが、チルノの左腕に剣を叩き込んだ。
⑨ ⑨ ⑨
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
間隙を与えずに、銃声は響き続ける。
レイセンは不意打ちを仕掛け、サリスに銃弾を放った。
だが、その弾丸は全てサリスに弾かれていた。たった5mの距離にも関わらず。
レイセンはバックステップをしながら、弾を装填し、次なる弾丸を放つ。
必ず距離を取った。
レイセンは簡単な答えにたどり着いていた。
間合いに入られたら負ける。
本能めいた何かが、軽快にサイレンを鳴らしてくれる。人を気を知らずに。
サリスは淡々と距離をつめてくる。レイセンは弾を撃ち続け、装填し続け、ずっと下がり続けた。
時たま、サリスの肩などに弾が当たったような気がするが、その動きは一向に鈍ることなどなかった。
「魔神って方々は、ダメージとか気にしないのかしら?」
「気にはする。一定以上のダメージを受けたら、行動不能になる」
「そうなの? でも、あなたは無頓着過ぎるような気がするわ」
「かもな。だが、俊敏な獲物を追い詰めるためには、これも詮無きことと諦めた。
……とは思ったのだが、考え方を変えるつもりだ」
サリスはそう言って、構えを解いた。
レイセンのピーター・ザ・ラビットもようやく弾丸を撃ち出すのを一時中止する。
「弾切れを狙った。だが、一向に切れないのは不思議なことだ。これでは、こちらがジリ貧だ」
レイセンは銃口をサリスに向けながら、思案を巡らせていた。
この遺跡に来る前に、レイセン達はてゐから、数種類のアイテムを受け取っていた。
その中に“弱っていたら、どんな種族だろうと捕獲出来るモンスターボール”や、“無限に沸いてくる弾装填具”という、はちゃめちゃなものなどがあった。
(てゐじゃなくて、明らかに師匠の悪巧みの結果としか思えないけど、助かったことは事実よね)
「どうかしら? もしかしたら、私はもう弾を持っていないのかもしれないわよ?」
「それならば幸運だろうがね。ちなみに……2丁目はいつ抜くつもりなんだ?」
「2丁目?……さあ、なんのことだかさっぱりだわ?」
「あなたの腰の後ろのホルダーにある2丁目のことだ。隠そうとしてもすでに無意味だ」
レイセンは自嘲じみた笑みを浮かべて答えた。
「私って隠し事が苦手みたいねー」
「駆け引きはうまいと思うがね。1丁の拳銃で絶え間なく弾を撃ち続ける。それは1丁なら出来るはずだからな。装填する間の時間さえ常に確保していれば。
だが、装填するための腕で2丁目を使えば、その時は難事を切り抜けられるかもしれないが、弾を装填出来ない。
2丁目はどうしようもならなくなったときの保険になる。
……さあ、使ってもらいたいな……その後は、あなたの心臓に槍を突き刺すが」
サリスは淡々と語る。
「そう言われて、使う奴はいないと思うわよ」
レイセンはくだを巻いた。
「なるほど、私は駆け引きが苦手らしい」
「…………」
レイセンは押し黙った。
苦手とはまったく思えなかった。2丁目のピーター・ザ・ラビットは、確かに腰のホルダーに隠していた。
銃は無敵ではない。どうしても弾を装填する必要がある。
もしものときの保険としてあるものが、相手に確実に把握されている。
黙っていてあえて使わせるのも手だろうが、実際に口にして相手にプレッシャーをかけることも充分に効果がある。
レイセンが撃つ弾丸が一発でもそれてしまえば、サリスは容易に間合いに入ってしまうだろう。
レイセンはずっと危険な綱渡りをし続けていたのだ。
必殺の一撃を持つ相手を、ずっと牽制し続けられたこと自体がレイセンの力量を物語るが、それは神経をずっとすり減らし続ける行為でもある。
そのことを解っていたからこそ、サリスは更なるプレッシャーをかけてきたのだ。
「なるほど、分の悪い賭けは嫌いじゃないわ。
でも、本当は自分の命をチップとしてなんて賭けたくないわよ。
ましてや切り札さえ、見切られている相手に」
「確かにな。だが、私は分の悪い賭けも好きかも知れない。
じりじりと相手を追い詰めることが出来るだろうが、それをする気がないようだ。
そういえば、名前を聞いていなかったな。あなたの名はなんというのだ?」
「レイセンよ」
「良い名だ。レイセン、あなたのチップをいただこう」
最初のレイセンの不意打ちのお返しとばかりに、今度はサリスが唐突に仕掛けてきた。
どこからか手にした“くない”を2本、レイセンに向かって投げてきた。
「くっ!」
レイセンは“くない”を撃ち落とす。
その間にサリスは間合いを詰めている。レイセンは残りの弾を撃ち出すも、サリスの突進を緩めることが出来なかった。右手で持った槍で弾は弾かれてしまっていた。
レイセンは決断した。2丁目を抜いた。
槍を持っているサリスの右手を弾丸が撃ち抜く。右手が血に塗れ、槍がこぼれ落ちる。
「抜いたな、2丁目を!」
サリスがはじめて笑った。そのとき、すでに左手で“くない”を1本放っていた。
レイセンの左足めがけて。
レイセンはかろうじて避けるがバランスを崩す。
残った右足の軸足にサリスは足払いをかけてきた。レイセンはこれをかわすことが出来なかった。
「しまったっ!」
「アポート!」
サリスが物体転移の呪文を唱える。これは自分のもとに物を呼び寄せる呪文だ。
倒れ付したレイセンの前に、左手で槍を持つサリスがのりかかってきた。
「チェックメイトだ、レイセン! 切り札もなかろう!」
「切り札って、見せないから切り札なのよ」
「なにっ!?」
レイセンは2丁のデリンジャーを構えていた。袖に隠していた、まだ切っていなかった札だ。
デリンジャーの欠点は、射程が短いのが欠点だが、まず外れるはずがない距離だった。
レイセンが引き金を引いた。弾はサリスに命中した。
「なるほど、さすがだ。だが、それさえも読んでいた」
命中したのだが、レイセンの弾丸はサリスの右腕に防がれていた。
致命打を与えることが出来なかった。
完全に自分の右腕を殺してでも、レイセンに左手で持った槍を突き刺す気であった。
「さらばだ、紅き瞳の少女よ!」
レイセンの心臓にサリスの槍が突き刺さった。
チルノとレイセンの部分。ワードで5ページ、3時間強かかっちゃった。
はううう、勉強せねば~~(いろんな意味で
第二部第1話 http://blog.goo.ne.jp/msaj9/e/e7300b6cd5017a2bc0091317ba642482
第二部第2話 http://blog.goo.ne.jp/msaj9/e/a275235804ddb7e8e41c95340004fa95
軽快な金属音がやかましく鳴り続ける。
2人の少女の円舞曲は、とても騒がしいものだった。
チルノとゼフィスの二刀流対決は、お互いに一歩も引かない乱撃戦に突入していた。
2人が互いにドラムか太鼓を叩くかのような、剣の打ち込み合いが続く。
「楽しくてたまりませんわ!」
「そいつは結構!」
互いの剣戟が互いの剣戟を弾き合う。
気の合う仲間のように、お互いの斬撃をぶつけ合う。
どちらにも有効打は撃てない状態だった。
だがゼフィスは満面の笑みを浮かべ続けて、二刀を振り回し続けている。
その剣に殺意はあったが、邪気はなかった。
純粋に、ただただ純粋に、相手を倒すために振るう剣には、不思議なことに悪意が籠められてはいなかったのだ。
そのことを撃ち合い続けるチルノも感じていた。
(まずいな、こっちまで楽しくなってきた)
強い相手、レティを相手にするような、山を登るような闘いも悪くはないが、こんな拮抗した力量の相手と戦うこともチルノの心を熱くさせた。
もう数百合も打ち合われた二刀の乱舞。
チルノは一定のパターンを感じ取っていた。
パターンとまではいかなくても癖として捕らえられる範囲にまで、ゼフィスの剣舞を捕捉しはじめていた。
ゼフィスが2本の剣を左右から同時に振るう。
チルノは“逆手に持ち変えた”ウエハースブレイドで受け止めた。
「なにっ!?」
ウエハースブレイドの回転部分を変形させて、ゼフィスの剣を絡めて取る。
2人はどこかの聖者がはりつけられたような十字のポーズになった。
無防備なゼフィスにチルノが、思いっきり頭突きをぶちこんだ。
ごち~~~ん!!
「うくぅぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゼフィスはたまらずのけぞって絶叫する。
剣を手放してさえ、その場から離れて距離を保った。
「うううう、このチンチクリンは、なんて原始的なことを…」
ゼフィスのおでこは真っ赤に腫れ上がり、衝撃の大きさを物語る。
「どうだい、アタイの慧音先生譲りの頭突きは?
泣けるだろ?」
かくいうチルノも、ちょっぴり涙目だ。
「いたしかたありませんわ。本気を出しますわよ」
「本気? 剣もないってのに?」
チルノが聞き返す。
ゼフィスは2本の剣を手放したままだった。
「アポート!」
ウエハースブレイドの変形機構を解いて、ゼフィスの剣はチルノの近くに落ちた。
……はずだった。
「へ?」
目を離したつもりはないが、ゼフィスの両の手には、紛れもなく2本の剣が握られている。
「なんで剣を? あれ、あれ? 落ちたと思った剣がない!?」
「物体転移の呪文くらい使えなくては、魔神将の名が廃るというものですわ」
唱えた呪文の力によって、ゼフィスは剣を取り戻していた。
「母に抱かれし、闇の衣。我を守りたまえ。
自動的に、主観的に、楽観的に、我の盾となりえたまえ。
闇の盾よ、我を守りたまえ」
ゼフィスがさらになにかの呪文を詠唱した。
チルノにはなんの呪文だかわからなかった。
「さああ、あなたにこれが打ち破れるかしら?
行きますわよ!!」
ゼフィスが突っ込んでくる。それに合わせて、チルノが左手のウエハースブレイドを振るうが、ゼフィスに届かず、まるで見えない盾に弾かれたようにその場に止まった。
「うぃぃぃ!?」
「闇の盾、物理攻撃を止める防御壁ですわ」
勝ち誇った笑みを浮かべたゼフィスが、チルノの左腕に剣を叩き込んだ。
⑨ ⑨ ⑨
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
間隙を与えずに、銃声は響き続ける。
レイセンは不意打ちを仕掛け、サリスに銃弾を放った。
だが、その弾丸は全てサリスに弾かれていた。たった5mの距離にも関わらず。
レイセンはバックステップをしながら、弾を装填し、次なる弾丸を放つ。
必ず距離を取った。
レイセンは簡単な答えにたどり着いていた。
間合いに入られたら負ける。
本能めいた何かが、軽快にサイレンを鳴らしてくれる。人を気を知らずに。
サリスは淡々と距離をつめてくる。レイセンは弾を撃ち続け、装填し続け、ずっと下がり続けた。
時たま、サリスの肩などに弾が当たったような気がするが、その動きは一向に鈍ることなどなかった。
「魔神って方々は、ダメージとか気にしないのかしら?」
「気にはする。一定以上のダメージを受けたら、行動不能になる」
「そうなの? でも、あなたは無頓着過ぎるような気がするわ」
「かもな。だが、俊敏な獲物を追い詰めるためには、これも詮無きことと諦めた。
……とは思ったのだが、考え方を変えるつもりだ」
サリスはそう言って、構えを解いた。
レイセンのピーター・ザ・ラビットもようやく弾丸を撃ち出すのを一時中止する。
「弾切れを狙った。だが、一向に切れないのは不思議なことだ。これでは、こちらがジリ貧だ」
レイセンは銃口をサリスに向けながら、思案を巡らせていた。
この遺跡に来る前に、レイセン達はてゐから、数種類のアイテムを受け取っていた。
その中に“弱っていたら、どんな種族だろうと捕獲出来るモンスターボール”や、“無限に沸いてくる弾装填具”という、はちゃめちゃなものなどがあった。
(てゐじゃなくて、明らかに師匠の悪巧みの結果としか思えないけど、助かったことは事実よね)
「どうかしら? もしかしたら、私はもう弾を持っていないのかもしれないわよ?」
「それならば幸運だろうがね。ちなみに……2丁目はいつ抜くつもりなんだ?」
「2丁目?……さあ、なんのことだかさっぱりだわ?」
「あなたの腰の後ろのホルダーにある2丁目のことだ。隠そうとしてもすでに無意味だ」
レイセンは自嘲じみた笑みを浮かべて答えた。
「私って隠し事が苦手みたいねー」
「駆け引きはうまいと思うがね。1丁の拳銃で絶え間なく弾を撃ち続ける。それは1丁なら出来るはずだからな。装填する間の時間さえ常に確保していれば。
だが、装填するための腕で2丁目を使えば、その時は難事を切り抜けられるかもしれないが、弾を装填出来ない。
2丁目はどうしようもならなくなったときの保険になる。
……さあ、使ってもらいたいな……その後は、あなたの心臓に槍を突き刺すが」
サリスは淡々と語る。
「そう言われて、使う奴はいないと思うわよ」
レイセンはくだを巻いた。
「なるほど、私は駆け引きが苦手らしい」
「…………」
レイセンは押し黙った。
苦手とはまったく思えなかった。2丁目のピーター・ザ・ラビットは、確かに腰のホルダーに隠していた。
銃は無敵ではない。どうしても弾を装填する必要がある。
もしものときの保険としてあるものが、相手に確実に把握されている。
黙っていてあえて使わせるのも手だろうが、実際に口にして相手にプレッシャーをかけることも充分に効果がある。
レイセンが撃つ弾丸が一発でもそれてしまえば、サリスは容易に間合いに入ってしまうだろう。
レイセンはずっと危険な綱渡りをし続けていたのだ。
必殺の一撃を持つ相手を、ずっと牽制し続けられたこと自体がレイセンの力量を物語るが、それは神経をずっとすり減らし続ける行為でもある。
そのことを解っていたからこそ、サリスは更なるプレッシャーをかけてきたのだ。
「なるほど、分の悪い賭けは嫌いじゃないわ。
でも、本当は自分の命をチップとしてなんて賭けたくないわよ。
ましてや切り札さえ、見切られている相手に」
「確かにな。だが、私は分の悪い賭けも好きかも知れない。
じりじりと相手を追い詰めることが出来るだろうが、それをする気がないようだ。
そういえば、名前を聞いていなかったな。あなたの名はなんというのだ?」
「レイセンよ」
「良い名だ。レイセン、あなたのチップをいただこう」
最初のレイセンの不意打ちのお返しとばかりに、今度はサリスが唐突に仕掛けてきた。
どこからか手にした“くない”を2本、レイセンに向かって投げてきた。
「くっ!」
レイセンは“くない”を撃ち落とす。
その間にサリスは間合いを詰めている。レイセンは残りの弾を撃ち出すも、サリスの突進を緩めることが出来なかった。右手で持った槍で弾は弾かれてしまっていた。
レイセンは決断した。2丁目を抜いた。
槍を持っているサリスの右手を弾丸が撃ち抜く。右手が血に塗れ、槍がこぼれ落ちる。
「抜いたな、2丁目を!」
サリスがはじめて笑った。そのとき、すでに左手で“くない”を1本放っていた。
レイセンの左足めがけて。
レイセンはかろうじて避けるがバランスを崩す。
残った右足の軸足にサリスは足払いをかけてきた。レイセンはこれをかわすことが出来なかった。
「しまったっ!」
「アポート!」
サリスが物体転移の呪文を唱える。これは自分のもとに物を呼び寄せる呪文だ。
倒れ付したレイセンの前に、左手で槍を持つサリスがのりかかってきた。
「チェックメイトだ、レイセン! 切り札もなかろう!」
「切り札って、見せないから切り札なのよ」
「なにっ!?」
レイセンは2丁のデリンジャーを構えていた。袖に隠していた、まだ切っていなかった札だ。
デリンジャーの欠点は、射程が短いのが欠点だが、まず外れるはずがない距離だった。
レイセンが引き金を引いた。弾はサリスに命中した。
「なるほど、さすがだ。だが、それさえも読んでいた」
命中したのだが、レイセンの弾丸はサリスの右腕に防がれていた。
致命打を与えることが出来なかった。
完全に自分の右腕を殺してでも、レイセンに左手で持った槍を突き刺す気であった。
「さらばだ、紅き瞳の少女よ!」
レイセンの心臓にサリスの槍が突き刺さった。