Q 映画監督になられたきっかけを教えて下さい。
A 映画監督になりたい! と思ったことはありません。映画を一本撮ったら映画監督になっちゃいました(笑)。何かを創造する仕事、例えば作家とか映画監督とかってその職種に憧れるよりも、自分が何を作りたいのかをアタタメル事が先で、それが形になった時に肩書きがついて来ると思うんです。
以前は「ビデオジャーナリストのヤン・ヨンヒさんです」と紹介されることが多かったんですが、その当時は、「どうしたらビデオジャーナリストになれますか?」という質問を学生達から多く受けました。その度にHOW TO(ハウ・ツー)ものっていう本を読んでいるうちはダメだろう、と答えてました。
例えば、どうしたら彼氏ができるのか、とかのハウツー本を読んでいたら、どんどんつまんない女になるぞ、ということですね。
Q 家族のドキュメンタリー映像を撮り始めたきっかけは?
A 20代の時は自分のバックグラウンドについて考えるのが、しんどかったんです。それが年をとるにつれて自分の家族をおもしろいと思うようになってきました。1993年に山形のドキュメンタリー映画祭に行った時は、ドキュメンタリー映画を観るのがおもしろくて、はまってしまいました。私って、思いたったらすぐ行動するんです。こんなに面白いものがあるんだ! と思い、帰ってきてすぐにビデオカメラを買いました。
その後、1995年にピョンヤンに家族に会いに行く機会があり、ビデオカメラを持って家族を撮り始めました。
Q ドキュメンタリー映画を作るということのメリットとデメリットを教えて下さい。
A メリットは、低予算でも映画が作れるという点ですね。今まで多くのドキュメンタリー作品によって、感動させられたし、自分もこの表現手段で人の気持ちを揺さぶってみたくなったというか。
デメリットは、ドキュメンタリー映画の場合、出演者(キャスト)に注文ができない、という点でしょうか。出演者にああしろ、こうしろと、注文をする監督も中にはいらっしゃいますが、私は絶対にそれだけはやらないということを鉄則にしています。だから私はすごく長くカメラを回します。
そこに撮られる側の無自覚な演技や嘘があるかもしれませんが、それも含めてリアリティーとしての映像に力があるんです。ドキュメンタリー映画を撮ることで、私は自分の家族をヌードにしてしまっている、と自覚しています。家族のプライベートな話を記録して人前にさらすんだから……、とんでもない娘ですよね。
また、これはメリット、デメリットの答えになるのかどうかわかりませんが、どんな映像作品でも観客は、映像の中の登場人物に自分自身を投影させますよね? 私の映画を観た後に、自分の御家族のお話をされる方がとにかく多いんですよ。そこが、この映画を作って一番よかったな、と思える点なんです。
Q 自分の家族をビデオで撮影しつづけていた時期の家族の反応はどうでしたか?
A 最初の3年間、父はカメラから逃げてました。それがだんだんと輪に入ってくれるようになりました。
また、北朝鮮にいる私の甥や姪はビデオカメラという存在を知らなかったんですよ。
ビデオカメラがあったおかげで、私は父との親子関係を再構築できましたし、遠くに離れて暮らす家族とも不思議な絆を作れたような気がします。ビデオカメラは離れて暮らす家族をつないでくれました。
Q 『ディア・ピョンヤン』を北朝鮮でも上映したいですか?
A もちろん、ノーカットで上映できるのであれば、ぜひ上映したいです。
しかし、現在は『ディア・ピョンヤン』をノーカットで北朝鮮で上映するというのは不可能でしょうね。
Q 映画評論家のおすぎさんが『ディア・ピョンヤン』の映画に、特別協力されていますね?
A ええ、おすぎさんは私の、兄のような、姉のような、母のような人なんです。おすぎさんには、私がアメリカへ留学する際に、「男と別れようが、借金しようが、何があっても行きなさい!」と言って、あのいつものおすぎさんの口調で叱咤激励されました。
Q 次回作の展望や監督の夢は?
A そうですね、今後も家族を題材とした映画を撮りたいと思っています。私は映画を撮る時、おもしろい人に出会ったら、その人に対して作品を作りたいと思います。 ”まず人が先にありき“なんです。
将来はビデオカメラとジーンズが似合うおばあちゃんになりたいです。いつも笑いの絶えない、ロックンロールドキュメンタリー!!
ドキュメンタリーというと、暗かったり、重かったり、お勉強みたいなイメージを持っている人たちが、まだまだ大勢います。私の作品を観た人に、「ドキュメンタリーにしては、笑えますね。」と、言われることがあります。
“ドキュメンタリーにしては”、という言葉を失くしたいんです。
Q 最後に、『ディア・ピョンヤン』をこれから観る方々へのメッセージをお願いします。
A 私は自分のことをマッチメーカーだと思ってます。私が撮った映像を通して観客は私の家族とスクリーンを通して出会う、これは新しい出会い系かも(笑)。そして家族、時代、歴史についての思いをシェアする。
そうですね、メッセージは、“自分の身近にいる人に興味を持ちましょう! ”ということです。
* * *
大阪市生野区で生まれ育ったヤン・ヨンヒ監督が、自身の家族を10年間にわたり追い続けて撮ったドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』は笑いあり涙あり、最愛の父と娘の映画だ。数々の国内外の映画祭にて、栄誉ある賞を受賞。
(撮影:原田奈々)
A 映画監督になりたい! と思ったことはありません。映画を一本撮ったら映画監督になっちゃいました(笑)。何かを創造する仕事、例えば作家とか映画監督とかってその職種に憧れるよりも、自分が何を作りたいのかをアタタメル事が先で、それが形になった時に肩書きがついて来ると思うんです。
以前は「ビデオジャーナリストのヤン・ヨンヒさんです」と紹介されることが多かったんですが、その当時は、「どうしたらビデオジャーナリストになれますか?」という質問を学生達から多く受けました。その度にHOW TO(ハウ・ツー)ものっていう本を読んでいるうちはダメだろう、と答えてました。
例えば、どうしたら彼氏ができるのか、とかのハウツー本を読んでいたら、どんどんつまんない女になるぞ、ということですね。
Q 家族のドキュメンタリー映像を撮り始めたきっかけは?
A 20代の時は自分のバックグラウンドについて考えるのが、しんどかったんです。それが年をとるにつれて自分の家族をおもしろいと思うようになってきました。1993年に山形のドキュメンタリー映画祭に行った時は、ドキュメンタリー映画を観るのがおもしろくて、はまってしまいました。私って、思いたったらすぐ行動するんです。こんなに面白いものがあるんだ! と思い、帰ってきてすぐにビデオカメラを買いました。
その後、1995年にピョンヤンに家族に会いに行く機会があり、ビデオカメラを持って家族を撮り始めました。
Q ドキュメンタリー映画を作るということのメリットとデメリットを教えて下さい。
A メリットは、低予算でも映画が作れるという点ですね。今まで多くのドキュメンタリー作品によって、感動させられたし、自分もこの表現手段で人の気持ちを揺さぶってみたくなったというか。
デメリットは、ドキュメンタリー映画の場合、出演者(キャスト)に注文ができない、という点でしょうか。出演者にああしろ、こうしろと、注文をする監督も中にはいらっしゃいますが、私は絶対にそれだけはやらないということを鉄則にしています。だから私はすごく長くカメラを回します。
そこに撮られる側の無自覚な演技や嘘があるかもしれませんが、それも含めてリアリティーとしての映像に力があるんです。ドキュメンタリー映画を撮ることで、私は自分の家族をヌードにしてしまっている、と自覚しています。家族のプライベートな話を記録して人前にさらすんだから……、とんでもない娘ですよね。
また、これはメリット、デメリットの答えになるのかどうかわかりませんが、どんな映像作品でも観客は、映像の中の登場人物に自分自身を投影させますよね? 私の映画を観た後に、自分の御家族のお話をされる方がとにかく多いんですよ。そこが、この映画を作って一番よかったな、と思える点なんです。
Q 自分の家族をビデオで撮影しつづけていた時期の家族の反応はどうでしたか?
A 最初の3年間、父はカメラから逃げてました。それがだんだんと輪に入ってくれるようになりました。
また、北朝鮮にいる私の甥や姪はビデオカメラという存在を知らなかったんですよ。
ビデオカメラがあったおかげで、私は父との親子関係を再構築できましたし、遠くに離れて暮らす家族とも不思議な絆を作れたような気がします。ビデオカメラは離れて暮らす家族をつないでくれました。
Q 『ディア・ピョンヤン』を北朝鮮でも上映したいですか?
A もちろん、ノーカットで上映できるのであれば、ぜひ上映したいです。
しかし、現在は『ディア・ピョンヤン』をノーカットで北朝鮮で上映するというのは不可能でしょうね。
Q 映画評論家のおすぎさんが『ディア・ピョンヤン』の映画に、特別協力されていますね?
A ええ、おすぎさんは私の、兄のような、姉のような、母のような人なんです。おすぎさんには、私がアメリカへ留学する際に、「男と別れようが、借金しようが、何があっても行きなさい!」と言って、あのいつものおすぎさんの口調で叱咤激励されました。
Q 次回作の展望や監督の夢は?
A そうですね、今後も家族を題材とした映画を撮りたいと思っています。私は映画を撮る時、おもしろい人に出会ったら、その人に対して作品を作りたいと思います。 ”まず人が先にありき“なんです。
将来はビデオカメラとジーンズが似合うおばあちゃんになりたいです。いつも笑いの絶えない、ロックンロールドキュメンタリー!!
ドキュメンタリーというと、暗かったり、重かったり、お勉強みたいなイメージを持っている人たちが、まだまだ大勢います。私の作品を観た人に、「ドキュメンタリーにしては、笑えますね。」と、言われることがあります。
“ドキュメンタリーにしては”、という言葉を失くしたいんです。
Q 最後に、『ディア・ピョンヤン』をこれから観る方々へのメッセージをお願いします。
A 私は自分のことをマッチメーカーだと思ってます。私が撮った映像を通して観客は私の家族とスクリーンを通して出会う、これは新しい出会い系かも(笑)。そして家族、時代、歴史についての思いをシェアする。
そうですね、メッセージは、“自分の身近にいる人に興味を持ちましょう! ”ということです。
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大阪市生野区で生まれ育ったヤン・ヨンヒ監督が、自身の家族を10年間にわたり追い続けて撮ったドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』は笑いあり涙あり、最愛の父と娘の映画だ。数々の国内外の映画祭にて、栄誉ある賞を受賞。
(撮影:原田奈々)