
黒人監督スパイク・リーもいまや名匠の域。デビュー以来、人種問題を強力なバネにしたメッセージ性の強い作品を連発して「社会派」のレッテル張られてきたが、最近はそれにストーリーテリングの面白さが加わって目が離せない監督の一人だ。
黒人作家ジェームズ・マクブライドの同名小説の映画化で、本人が脚本も書いている。ジェームズ・マクブライドの母親は白人でポーランド生まれのユダヤ人である。
映画は1983年冬のアメリカ、郵便局に切手を買いにきた男性が黒人職員に真正面から射殺されるショッキングなシーンから幕を開ける。その「なぜ?」を解き明かす形で物語は第二次世界大戦下のイタリア・トスカナへと飛ぶ。
一種の戦争秘話だが、黒人のみで編成された「バッファロー・ソルジャー」と呼ばれる米軍部隊が体験する「奇跡」の物語だ。
冒頭の射殺事件で犯人の家から彫像の頭部が発見される。バッファロー・ソルジャーの一人がフィレンツェで拾って以来、ずっと持ち歩いていたものだ。
フィレンツェのアルノー川にサンタ・トリニータという名の橋がかかっている。オリジナルは1252年に木造で構築されたものである。1628年にその四隅を四季を表現した彫像が飾ったが、1944年のドイツ軍撤退時に橋は破壊され、彫像も行方がわからなくなっていた。
バッファロー・ソルジャーに拾われたのは「プリマヴェーラ」と称される春の彫像の頭部だったのだ。
「奇跡」を生み出すのは、隊とはぐれた4人の黒人兵が出会うアンジェロという名の少年だ。倒れていた少年を救った4人はトスカナの山村に身を寄せ、言葉は通じないながらも村人との間の交流がつかの間の休息を与える。
なぜ少年は傷つき彷徨っていたのか?アンジェロはナチスの虐殺で壊滅したセントアンナ村のただ一人の生き残りだったのだ。
射殺事件の真相は?少年はその後どうなったのか?物語が深い層をなし、その語り口の豊かさに酔う、至福の映画体験といえるだろう。
イタリアを舞台にしているという、土地柄の性なのだろうか?イタリア映画だとタヴィアーニ兄弟やジュゼッペ・トルナトーレの監督作品に共通するような語り口だ。
ナチスの生んだ、歴史の表舞台には出てこない多くの悲劇は映画にもよく取り上げられる。
2009年10月10日、トルコとアルメニアの間で国交樹立協定に調印がなされ国交が回復した。両国に深い影を落としてきた事件は1915年に遡る。トルコがアナトリア地方で150万人のアルメニア人を虐殺した、その事実をトルコ政府が認めなかったことによる。
「南京」を例にとるまでもなく、この種の話が共通認識にたどり着くのは至難を極める。
普通なら知らないはずのこの国交に関する話題が目にとまったのは映画のおかげだ。アトム・エゴヤン監督の「アララトの聖母(2002、日本公開は2003)」はこの虐殺の史実を映画化しようとする監督が主人公である。
アトム・エゴヤンはカナダの映画作家だが両親はアルメニア人で、亡命したエジプトで生を受け、後に家族でカナダへ移住している。監督にとってのルーツ探しの映画にもなっている。
今夜はここまで。明日の夜をお楽しみに。









