原作が1960年代半ばに学習研究社から出版された「少年少女ベルヌ科学名作全集」(全12巻)に収録されていた。フランスの作家ジュール・ベルヌの個人全集である。各巻楽しみに、胸躍らせて読んだものだ。装丁も、内容も少年少女と冠するほど子供っぽくはなかった。まだSFという言葉が一般的ではなく、「空想科学」と称していた頃だ。
中には科学、というよりはアドベンチャーだろうという作品もあり、そのためか学研版より前には岩崎書店から「ベルヌ冒険全集」(全12巻)が出ている。収録作品に大きな違いはないはずだ。
ハードカバー単行本箱入りの装丁だったが、箱に描かれたイラストが少年の心を魅了した。ベルヌ作品は多く映画化されており、そのイラストが実写で動き出すのを見たいというのは当然の衝動である。
映画「80日間世界一周」は初公開から10年ほど後のリバイバルロードショーで見た。183分、前奏曲が付き途中休憩のあるような大作だから地方でも1本立て興行だった。プログラムも買ったが、これがいわゆる映画のパンフレットと違いA5サイズくらいのハードカバーの本のような体裁だった。デザインには、多分公開時そのままだと思われる「古さ」が感じられた。まさか10年前の売れ残りではあるまい。が、この作品にはその体裁がなんとなく似つかわしかったように、今は感じる。
19世紀後半、飛行機のない、海外旅行など「夢のまた夢」時代に、ロンドン社交クラブの紳士が80日間で世界一周すると宣言し、賭けが行われる。果たして勝算はあるのか・・・。冒険また冒険の物語のみでなく、映画で見る名所旧跡とゲストの豪華スターを思い切り楽しむことの出来た、夢の時間だった。賭けに挑む紳士とその従者にドン・キホーテの姿を見ることも出来よう。
本作のプロデューサー、マイケル・トッドが考案したトッドAOという新方式のワイドスクリーンが採用されている。70mmと一般的に呼ばれる方式だ。横幅が通常の35mmフィルムの倍だ。正確には65mmのネガで撮影されたものをサウンドトラック付きの70mmプリントに焼きつける、というプロセスを踏む。トッドAOは本作の前年にミュージカル「オクラホマ!」で初めて使用されている。
2004年にはリメイク作品「80デイズ」が製作されている。ジャッキー・チェン主演なのでコメディ度、アクション度はアップしている。彼は紳士役ではなく、中国人という設定のその従者の方に扮している。豪華スターのゲスト出演も踏襲されている。
「80日間世界一周」でもう一つ忘れてはならないのがタイトル・デザインで、世界的なグラフィック・デザイナー、ソール・バスが担当している。企業のロゴ・マークなどを多数製作しているが映画との関わりも深い。その生涯でタイトルをデザインした作品は60本近い。
アルフレッド・ヒッチコック監督との仕事は「めまい (1958)」を皮切りに「北北西に進路を取れ (1959)」「サイコ (1960)」と計3本続いた。特に「サイコ」では有名なシャワー・シーンの絵コンテも彼が描いている。
「サイコ」は1998年にガス・ヴァン・サント監督がリメイクしている(日本公開は1999年)。モノクロだったオリジナルがカラーになり、俳優はもちろん新たにキャスティングされているが、他は台詞もカット割りもまったくオリジナル作品と同じ、極めて異例なというかユニークなリメイク作品になっている。
ということは劇中音楽も、タイトル・デザインもそっくりコピーされている。したがって1996年に75歳で死去したソール・バス最後のタイトル・デザイン作品は、1998年製作の「サイコ」ということになる。
今夜はここまで。また明日の夜をお楽しみに。
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