リセとはフランスの中等教育機関の後期過程をさし、日本だと高等学校に相当する。バカロレア(大学入学資格)を取得することが一つの目的となる。
ドイツなら第133夜に登場する「トーマの心臓」の舞台であるギムナジウムがそれに当たる。が、こちらは修業期間が9年と長く、中高一貫教育のようなイメージだ。
舞台は1950年代、フランスはロワール地方のリセだ。
本作の監督はロジェ・ヴァディム。主演のクリスチャン・ヴァディムはその息子で映画での役名もクリスチャンだ。
リセに学ぶ6人の学生の青春の日々が描かれるが、クリスチャンは彼らの日常に波紋を立てる役回りだ。なにか訳のありそうな美貌の母と息子が、ある時町にやって来たのだ。父親の姿はない。その父の不在の秘密が物語に大きなうねりを引き起こす。大戦後の話だが、まだ戦争は影を落としているのだ。
主演したクリスチャンの母親は女優のカトリーヌ・ドヌーヴである。ヴァディムとドヌーブに婚姻関係はなかったが、映画監督であると同時にプレイボーイ(職業ではないのだが・・・)であったロジェ・ヴァディムには、生涯に5人の妻がいた。
最初の妻バルドーは雑誌のモデルをしていた16歳の時に24歳のヴァディムと結婚する。1952年の出来事だ。ヴァディムの監督デビューはその4年後1956年で、妻バルドーを主演に「素直な悪女(日本公開は1957)」を撮っている。バルドーはその魅力で一気にスターの座を手に入れ、時代のセックス・シンボルとなる。しかし、共演したジャン・ルイ・トランティニャンと恋に落ち、57年にはヴァディムと離婚しているのだから皮肉なものだ。
1958年にはデンマークの女優と結婚、アネット・ヴァディムの名で「危険な関係(1959、日本公開は1961)」「血とバラ(1961、日本公開は1962)」に出演させているが2年で離婚、3人目の妻、ジェーン・フォンダを迎えるのが1965年である。
「輪舞(1964)」「獲物の分け前(1966、日本公開は1967)」「世にも怪奇な物語(1967、日本公開は1969)」「バーバレラ(1967、日本公開は1968)」と立て続けに主演させて73年に離婚している。
「世にも怪奇な物語」はオムニバス作品で、ルイ・マルが監督した第2話はヴァディム元妻のブリジット・バルドーが主演である。
1975年には衣装デザイナーと結婚しているが数年で離婚、1990年に最後の妻となるマリー・クリスティーヌ・バローと結婚、彼女とは没年まで離婚していない。
息子クリスチャンの誕生は1963年で、アネット・ヴァディムとジェーン・フォンダの間に未婚の母カトリーヌ・ドヌーヴがいたことになる。
フィルモグラフィーで女性遍歴を辿ることができるという恵まれた(?)仕事振りだが、最後の妻マリー・クリスティーヌの主演映画は撮っていない。
晩年はテレビの仕事が多く、劇場映画で遺作となったのは「可愛い悪女(1987)」である。この作品は日本未公開のアメリカ映画で原題の「AND GOD CREATED WOMAN」はデビュー作「素直な悪女」の英語タイトルと同じだ。時代も舞台も違うが一応リメイクといえる。
遺作がデビュー作に回帰してフィルモグラフィーの輪が閉じ、完結している。
今夜はここまで。明日の夜をお楽しみに。
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