消された伝統の復権

大阪産業大学経済学部 教授 、京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(53)新しい金融秩序への期待(53)米国支配の終わり(3)

2009-01-12 23:56:56 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)


 グラム・リーチ・ブライリー法


 ところが、1999年に米国の金融近代化法ができました。法案審議を主導した各委員長名前を取って、「グラム・リーチ・ブライリー法」と呼ばれています。この法律で、グラス・スティーガル法によって銀行、保険、証券という金融業務を分離していた垣根が撤廃。金融に関するあらゆる業務が、金融持株会社を創設することで、一つの母体で運営されることが可能になりました。米国の金融制度の大転換であり、金融制度は一挙に世界恐慌以前のなんでもありの体制に戻されました。

 1980年代の日本のバブル期、ジャパンマネーがアメリカを席巻した時期がありました。当時の日本の商業銀行は、世界一の貯蓄額を誇っていた。アメリカは日本の商業銀行をつぶすために、今までに聞いたことのないような論陣を展開してきました。「預金は銀行にとっては借金だ、大事なのは自己資本だ、自己資本比率だ」と。当初は自分の銀行が保有している証券がある程度資本として換算されましたから、ことの重大性に日本は気づかなかった。第2弾は「自己資本を超える株式の保有は許さん」。見事にはめられたんです。その結果、21行あった都市銀行が3行だけになりました。

 1999年の金融近代化法(グラム・リーチ・ブライリー法)が、すべての諸悪の根源です。この法律を作ったのはロバート・ルービン。ルービンは、ゴールドマン・サックスの会長をへて、財務長官に、その後シティグループの総帥の一人に。現在の財務長官のポールソンもゴールドマン・サックスの会長でした。アメリカの5つの投資銀行のうち、リーマンが破たんし、ベアー・スターンズがJPモルガン・チェースに合併、メリルリンチがバンカメ(バンク・オブ・アメリカ)に合併し、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの2つになった。サブプライムローンで傷つかずに、大もうけしたのがゴールドマン・サックスです。偶然とは思えません。

 この法律によって、銀行、証券、保険、クレジットなどあらゆる金融業務を参加に持つ金融コングロマリットが現れた。シティーグループもその一つです。そのシティーグループが、日本の日興コーディアル証券を買収した。しかし、銀行をも業務とするシティグループがなぜ日本の証券会社を買収することができるのか。日本には証券と銀行を分離する証券独自法という法律があるのに。

 保険会社であるAIGは、本来ならばサブプライムローンを買うことができなかったはずです。生命保険を集めて一生懸命運用して、不動産つくって、ビルをいっぱい買う。安定した不動産を持っておいて、株式の乱高下などいざと言う時に、これで支払わなければいけない。これが保険の本来の姿です。

 ところが金融近代化ができて、AIGは「モノライン」の金融業務に手を出した。モノラインは支払いができなかったら代わりに支払ってあげますという金融保証の専業会社のことです。AIGは子会社をつくってモノラインと同じ業務をやりはじめた。そこが大赤字になった。AIGが破たんすると金融恐慌になる、救えということになった。

 
 アメリカの時代の終わり


 世界の経済の中心地は東アジアです。しかもこれからは鉄道なんです。鉄道を建設するとき、朝鮮半島はもっとも大事なところなんです。鉄道事業ではドイツやフランスが先行し、アメリカと日本は置いてきぼりをくったんです。安倍首相が戦後レジームの決算だとか、拉致問題が解決しなければ何もしないんだとか、169カ国が朝鮮と国交を持っていることなど一切日本人には知らさずにやってきた。だから安倍首相はアメリカに辞めさせられた。

 金融ばかりに熱中して、アメリカは何も作っているものがないことに気がついた。映画とコンピュータと金融と武器くらい。テレビ、半導体などいろんなものがアジア勢に押されてしまって、何一つアメリカのオリジナリティーはないんです。これに気づきだしたんです。賭博的な金融のみ繁栄して、製造業がつぶれました。

 どうやってアメリカを再生するか。悪いのはすべて投資銀行だ、ヤミ金融だ、つぶせ!ということになったんだと思います。この金融危機の中で、何が起こっているか。商業銀行のバンカメやJPモルガン・チェースが、危機に陥った投資銀行を買収しました。

 投機市場を支配していたゴールドマン・サックスとAIG。そのAIGが叩き潰されました。ゴールドマン・サックスの敵、メリルリンチやリーマン・ブラザーズも消えました。誰が勝ったのかで世の中を見ていく必要があります、

 ともかく、金融危機を乗り切るためにはアメリカは資金が必要。だが米国債を発行しようとしても誰もアメリカの国債を買ってくれない。アメリカの支配、時代は終わったと思います。

 それでも日本政府は、アメリカを支えるために資金を流そうとしています。いつまでアメリカの言いなりの政治はやめるべきです。このへんで私たちは反乱を起こさねばダメです。

 
日本がいまなすべきことは大企業に頼るのではなくて、技術を持っている中小企業が大企業から独立するのを支援すること。地域が共同体として生きられるように、政治が支援することが重要です。

 いずれにしても、金融危機がアメリカ経済だけでなく世界経済に深刻な被害を与えます。自動車や電機産業などで影響が出ています。とくに、中小企業に対する貸し渋りや貸しはがしが起こっています。昭和恐慌の時は田舎に帰って農業を手伝って生きていくことができたましたが、現在はそんなことはできません。雇用と生活を守るためにストライキで闘う以外にないと思います。労働組合には頑張ってほしい。

  金融を国民のものに取り戻そうではないか。そのための広範な国民運動を始めよう。たとえば、銀行の前貸出のうち、一定の比率で地元への融資に回すことを法律で義務づけよう。地場産業を支え、地元の雇用を増やすことに銀行を向かわそう。雇用とまったく関係のない投機ゲームに銀行が走ることを監視しよう。

 ESOPを作ろう。従業員(E)が自社株(S)を会社から譲渡され(O)る仕組み(P)を作ろう。株式を保有することは、金融ゲームを行うためでなく、事業に参加することなのである。

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