ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始めいつのまにか、トライアスリートになってしまった私。

【STAP報道検証20】難波先生より

2014-07-26 12:13:28 | 難波紘二先生
【STAP報道検証20】
 他紙は報道が絶えたが「毎日」は科学環境部が頑張っている。
http://mainichi.jp/select/news/20140721k0000m040122000c.html
 7/20「毎日」が報じた須田桃子・八田幸輔記者によるスクープで、2点の新しい事実が判明した。
 雑誌ネイチャーの今年1月末に掲載されたSTAP細胞のからくりに関するものだ。
 第一は、細胞増殖関連の遺伝子群の発現強度をSTAP細胞とES細胞で比較したグラフで、2012//6雑誌「セル」に投稿された原稿では、株化されたES細胞での発現が高レベルで一定しているのに対して、STAP細胞は培養7日目にES細胞のレベルに達し、以後10、14日目と次第に低下して行く。
 ネイチャー論文は同じグラフなのに、1,3,7日目だけで10日目以降のデータがカットされている。不都合な棒グラフをトリミングしたことにより、グラフは「STAP細胞は、培養1日目には増殖遺伝子の発現がないが、3日目で立ち上がり、7日目にES細胞と同等かそれ以上の遺伝子発現が起こり、かつそれが続く」という間違ったイメージを与えるものとなった。
 科学研究に仮説は必要だが、自分の立てた仮説(シナリオ)に不都合なデータを選択的に取り除くときれいなデータになり、仮説に合致するようになる。これは「データのトリミング」で、科学における不正のひとつである。「セル」誌から却下された時の査読意見に、「10日目以降の増殖関連遺伝子の発現低下は不自然だ」という指摘があり、2013/4に「ネイチャー」誌に投稿した際にトリミングを行ったようだ。
 第二の新事実(これは紙版「毎日」には載っているがネットではまだ見あたらない)は、2012/6の「セル」誌への投稿に際して、著者らがあらかじめ査読者として「山中伸弥」の排除を求めていたという事実だ。娘に聞くと、雑誌によってはこれができるものがあるそうだ。80年代に論文を投稿したら却下され、いつの間にか同じアイデアで行われた実験が別の研究者の論文になって、雑誌に掲載されるという、いわゆる「アイデア盗用」が論文審査を利用してなされたという事件が多発した。それを防止するためライバル関係にある研究者を査読者から「除外希望」するのは、不合理ではない。
 山中伸弥氏のノーベル賞受賞は2012/10だから、「セル」誌投稿時に授賞が決定していたわけではないし、iPS細胞とSTAP細胞(もしあると仮定すれば)では作製の原理がまったく違う。山中氏も免疫遺伝学に関しては素人だから、STAP細胞の最大の論理矛盾「免疫遺伝子が再構成してT細胞という体細胞になった(電気泳動でGermlineが消失)のに、STAP細胞を作成すると欠損した遺伝子の介在配列が復旧されて、元のGermlineが復活する」を発見できなかったかも知れない。
 まあ捏造者自信が不勉強で、論文に内在する自己矛盾に気づかないから投稿できたのだろうが、小保方というドシロートに山中に対する強烈な対抗意識があったとは思われず、「ヴァカンティ、若山」の側に「山中排除」という意図があったのだろう。「毎日」記事によると、このセル誌投稿時点(2012/6)では笹井芳樹氏は論文にタッチしていないそうだ。これも後続報道に期待したい。

 発売中の「新潮45」8月号、小畑峰太郎+取材班による「真相追求第5弾:<STAP論文捏造事件>理研を蝕む金脈と病巣」は全21頁の大特集で、抜群に面白い。私は榎木英介『嘘と絶望の生命科学』(文春新書)をいただいたときに、タイトルにいささか違和感を覚えたが、新潮45のこの記事を読んだら、再生医療がらみの研究、バイオヴェンチャーがいかにひどいか、金まみれかが詳細に書いてあり、榎木さんがみずから付けたという、タイトルが決して誇張でないと納得がいった。
 iPS細胞を用いて「加齢性(網膜)黄斑変性症」の世界最初の臨床治験手術をこの夏に予定している理研CDCの高橋政代医師が、ツィッターで理研上層部を批判したのが話題になった。この記事には詳しいインタビューが載っている。眼科医である彼女の発言などから、再生医療の臨床治験が、本来は厚労省の管轄であるのに、理研全体が文科省の管轄であるため、科学ドシロートの下村文科大臣がことあるごとに、ちょっかいを出してくるが我慢ならないようだ。CDB(発生・再生科学総合研究センター)から再生医療部門を切り離すか、自分が出て行くことを示唆している。
 要するに理研が「再生医療の臨床治験」という名目で、自分たちを金集め予算獲得の宣伝材料に利用し、世間を騙していることに、我慢ならないようだ。
 理研の広報戦略にからんで、「株式会社ヘリオス」、「新日本科学」、「リポミック」、「東京大学エッジキャピタル」、「株式会社オーガンテクノロジーズ」といったバイオヴェンチャー企業が、実業はないのに巨額の投資マネーを集めている。株価の動き、出資金の集め方、書かれていることに間違いがなければ、これは立派な経済犯になるだろう。東京地検特捜部による熟読を希望する。昔、英国で起こった「サウス・シー会社事件」を思わせる。(J.K.ガルブレイス『バブルの物語』, ダイヤモンド社)
 昔「産学協同」は国立大学にとって悪だった。独立行政法人になったら「産学連携」と言い方が変わって善になった。昔は国家公務員の併任兼業にはきびしい制約があった。今は大学教授でもバイオヴェンチャーの社外取締役になれる。教授の給料は低くても、研究費、補助金、併任兼業収入により、自由になる金は2倍にも3倍にも増えた。中には科研費を投資信託に回していたあきれた教授もいる。「悪」のもたらす悪は予測がつくが、「善」が生みだす悪は倫理崩壊がからむだけに、予測できないし大きい。
 やがて「研究者」とか「科学者」と聞いたら世間から軽蔑される存在になりはしないかと危惧する。
 7/23「毎日」が「産学癒着、捜査に壁」とノバルティス社の不正を操作する東京地検特捜部にとって、臨床研究におけるデータ改ざんを処罰する法律がないことが、「薬事法違反」(誇大広告)のみで起訴することになったと報じている。いずれ「培養ヒト細胞株」も医薬品になるだろう。データ改ざんや捏造があっては大変だ。ORIの創設や新法の制定を考えるべきだろう。それにしても「産学癒着」は言いえて妙だ。
 7月も下旬に入った。理研の「丹羽追試実験」の発表がそろそろある頃だ。成功するとは思っていないが、理研側がどう言いつくろうかに興味がある。もともとが嘘で塗り固めた研究だから、しゃべればしゃべるほどボロが出る。「人は一つの嘘を本当にするには、二十の嘘をつかなければならない」と言ったのはナポレオンだったか…。
 幸い「日本学術会議」も厳しい声明を発表した。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140725/k10013289011000.html
 日本生化学会とすべての学会の元締めである日本学術会議を敵にまわすとなると、さすがの理研や「科学のカの字も知らない」文科大臣ももみ消しはできないだろう。早稲田大も同様だ。
 いまや世の中のうねりがよい方向に流れ始めたと思うので、「STAP報道検証」も切りのよい20回で打ち止めとしたい。今後は「修復腎移植」問題に「新潮45」と共に取り組みたい。
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-07-26 13:57:14
毎日新聞はSTAP論文が、ネイチャーに掲載される前のサイエンス、セルに投稿した際の論文を入手したと報じましたが、その後の記事が無くどうなったかと思っていました。須田さんは難波先生に叱咤された事を励みに、良い記事を書いて欲しいものです。
生化学界は分子生物学会 (SF物理マニア)
2014-07-27 23:18:13
最後から6行目の日本生化学会は、分子生物学会の誤りではないでしょうか。

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