ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始めいつのまにか、トライアスリートになってしまった私。

【続・カンメラー事件】難波先生より

2014-08-11 18:57:38 | 難波紘二先生
【続・カンメラー事件】
 まずこの事件に関する前回の記述の誤りを訂正します。
 1)1926/8/7付「Nature」には、American Museum of Natural HistoryのG.K. Nobleによる不正告発の「論文(Article)」が掲載されました。9月22日にカンメラーが自殺した後、ネイチャー誌は10/2付号で「追悼記事」を載せています。「レター」でなく、「アーティクル」でしたので、訂正します。
 2)8/7「毎日」の「余録」に「英作家ケストラー」とあり、不審に思いArthur Koestler(1906~83)の経歴を調べたら、私が間違っていたことがわかりました。ケストラーはハンガリー、ブダペスト生まれで、ウィーンに移住したユダヤ人で、ウィーン工科大に学んでいます。1940年より前はドイツ語で著作を発表していますが、同年の『真昼の暗黒(Darkness at Noon)』は英語で発表されています。
 『サンバガエルの謎:獲得形質は遺伝するか(The Case of The Midwife Toad)』(1971)は英語で書かれています。「英語からの重訳」と書いたのは大きな誤りでした。訂正してお詫びいたします。
 姓名のつづりがドイツ系であるために、ずうっとドイツ人作家とばかり思いこんでいました。(特にOウムラウト「oe」はドイツ語に特徴的。)事実は、1945年にケストラーは英国に帰化していました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC
 調べるきっかけを与えてくれた「余録」氏に感謝したい。

 あらためてケストラー『サンバガエルの謎』(岩波現代文庫)巻末の「ネイチャー誌上での論争史年譜」を見ると、1919/3に最初に疑惑が提起され、1926/9のカンメラーの自殺により一応の決着がつくまでに、7年半もかかっている。「STAP事件」はまだ「終りの始まり」かもしれない。
 STAP事件で講談社はブロード&ウェイド『背信の科学者たち』をハードカバーで再版したが、科学史家アレクサンダー・コーン『科学の罠(わな):過失と不正の科学史』(酒井シズ+三浦雅弘訳:工作舎,1990)もすぐれた本です。訳者の1人、酒井先生は医学史の専門家で順天堂大学の教授です。この本の索引は用語配列がよくないが、参考文献は412本の著書・論文を引用していて有益です。
 この書(原本「偽の預言者たち:科学と医学における不正と錯誤: FALSE PROPHETS: Fraud and Error in Science and Medicine」, 1986)は『背信の科学者たち』(1982)を引用しており、原著の記載としてはより新しい。
 『背信の科学者たち』の訳者である牧野賢治氏の自伝『科学ジャーナリストの半世紀:自分史から見えてきたこと』(化学同人, 2014)は先日の「毎日」書評欄でも取り上げられていたが、同氏は「毎日」科学部の出身で、訳はすぐれている。しかし著者は2人ともジャーナリストで、その点でテルアビブ大医学部ウイルス学教授のコーン(Cohn)とは、視点も論点も異なる。
 コーンは「もしカンメラーの実験結果が正しかったら」と仮定し、「婚姻瘤を形成する遺伝子は、初めからサンバガエルの細胞に存在し、特定の環境刺激の下でのみ発現するようになる可能性がある」と論点を見事に要約している(同書pp.79-84)。

 歴史的には「カンメラー事件」が先に起こり、その教訓が生かされないまま、「ルイセンコ事件」が起こった。「旧石器遺跡捏造事件」や今回の「STAP事件」のようなことを、日本で三度くり返してはいけない。そのためにはORI相当の科学不正摘発組織が必要だ。
 8/4「日経」は
 <論文コピペ許さず。増える盗用、危機感強く。
 近畿大や一橋大:検出用ソフト活用、東北大や上智大:手書き義務づけ。
 ネット普及先行、米では:授業計画書で注意、出版大手が指針>
 という見出しで大型記事を掲載している。
 翌8/5には、
 <研究不正、行政が見抜く。米機関、科学捜査官が調査。
 日本でも検討、慎重論も> と米研究公正局(ORI)の組織構成と調査活動の実情について報じている。
米NIHが補助するバイオ・メディカルへの科学研究費は年間3兆円。ORIは27人の専従職員が、この研究費にかかわる科学不正の防止と早期摘発に取り組んでいる。
 日本の専門学者は視野が狭いから「学問の独立性をおかす」と消極的だが、「公正取引委員会」の科学版だと思えばよいではないか。あれだってアメリカをまねてつくられたものだ。

 来年の話をすれば鬼が笑うというが、4年に一度開かれる「日本医学会総会」が来年の4月に京都と神戸で開かれる。
 http://isoukai2015.jp/introduction/index.html
 プログラムをみると「20の柱」というシンポジウムのなかに「再生医療」が入っていて、
 理研CDBの石井俊輔、丹羽仁史、辻 孝、永楽元次。
 東京女子医大の岡野光夫、大和雅之。
という疑惑の渦中にある諸氏の名前がみつかるが、これは大丈夫かな。

 こういう4年に一度という大型の学会ではプログラムは予定の1年以上まえに決められるのが普通だから、総会の実行委員長はきっと困っているだろう。
 http://isoukai2015.jp/program/medicine/program04.html

 会頭の井村裕夫先生は、1931年生まれ、内分泌・代謝学が専門で京大内科教授、京大総長を歴任し、『人はなぜ病気になるのか:進化医学の視点』(岩波書店, 2000/12)という、一般向けのすぐれた著書もある。私は関白藤原道長が糖尿病だったことを、この本から学んだ。
 井村先生が会頭講演で恥をかかないように、弟子たちは配慮すべきだろう。
 http://isoukai2015.jp/program/special.html
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