ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

水と月

2015-02-22 19:12:26 | 詩集 湾Ⅲ 2011~14

地の底から湧き出るような

暗い水

ひとすじの光もなく

透明なのか

漆黒なのか

見定めることができない

 

土と砂利で盛土したままの道路に区切られて

歪んで窪んだ四辺形が並んで

田植えの前の田んぼのように

暗い水が浸み出して

歪んだ四角の街路に区切られた

低い家並みの街がすべて陥没したように

今は

数棟のコンクリート建築が残されたままで

 

向こうは海

奥深い湾のいちばん奥の

ふたつの岬に囲まれた小さな内側の湾

 

地の底の暗い迷路を満たして

ひび割れた透きまをとおり抜けて

浸み出す水

ひたひたと嵩を増す水

歪んだ四辺形の容れものを

滑らかに覆い尽くす水

満潮の時刻

どこまでも暗い満月の夜

分厚い雲の透きまから

一瞬月の光が差し込んで

 

一瞬明るんだ水面のひとつひとつに

月が浮かぶ

ひとつづつ

月が浮かぶ

地の底から浸み出した黒く輝く水の面に

まん丸い月が映る



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