世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

冬の子④

2017-11-20 04:13:35 | 風紋


「ああ、ソミナ、囲炉裏に榾をくべておくれ。湯がなかなかわかないの」

言ったのは村の産婆役をしている、ソノエという女だった。囲炉裏に水の入った土器の壺を入れ、湯をわかそうとしている。エマナは家の隅の茣蓙の上でうずくまり、しきりにうめいていた。

「木舟をかりてきたよ」
と言いながら、ソミナの後からまた他の女が入ってきた。出産は女の大仕事だから、多くの女が協力し合う。その女は小さな舟のような形をした木の器を持って来た。中には少し水が入っている。

木舟というのは、舟作りの技術を応用して作った器だ。小さな舟の形をしている。それはカシワナ族が出産の折に使う産湯桶だった。女たちは子供が生まれると、この木舟にぬるま湯を張り、生まれたばかりの赤子を洗うのだ。

木舟を囲炉裏のそばにおくと、その女は茣蓙の上でうめいているエマナのところに行った。そしてエマナの腰をなでてやりながら、励ました。

「がんばろうねえ。今日が山だよ。痛いかい?」
するとエマナはうめき声の影から、吐くように言った。
「ちきしょう、トレクのやつ!!」

それを聞いたソノエは、どうしようもないというように笑って顔を振った。



ジャンル:
小説
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