世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ダイコン

2007-12-29 10:58:20 | 箱庭写真集

これは、今年の春に写した、ダイコンの花。海沿いの道を車で走っていると、空き地の隅の一群れの白い花があるのを見つけ、あわてて車を停めて、撮ったものです。

ダイコンの花は、難しいですね。目でみると、ほんとうに美しいのに、写真に撮ろうとすると、いやいやをするかのように、逃げてしまうんです。なかなかポーズをとってくれないの。たいていの花は、自分の一番美しい顔を見せてくれようとするのに、ダイコンは、決まり悪そうに眼を伏せてしまうか、顔を背けてしまうのです。

自分はそんなに美しくないと思っているのかしら。いえ、そうではないのです。ダイコンは、自分の美しさは、気取ってポーズをとってみせるものではないと思っているのです。ダイコンの美しさは、目に見えぬものをほこりとしているということを、きりりと目でいうときに現れるもの。

ダイコンは目立たない。白く、清らかな花なのに、決して主張しない。ただそこらに目立たないように咲いていて、いつも、だれかの、もっとも美しいところを見ようとしている。ダイコンは、自らは目立たないのに、一番大切なことをしているもの。それが大好きなのです。

だれにもわかってもらえないけれど、一番大切なことをしている。みんなの中で、一番耐えている。目立たないところで、立派にやっているけれど、決して理解はされない。そんなものがいるとき、ダイコンはいつも、じっと見ている。

ダイコンにだけはわかる。だから、ダイコンはいつも、言っている。わたしは知っているよ。おまえがどんなにがんばっていたかを。見ていたよ、いつも。

ほんとうに大切なことをしているものは、もっともバカだといわれる。だれもそんなことをしないよ。損するばかりじゃないか。うそばっかりだよ。やめなさいよ。

みんながそういうとき、ダイコンだけは、じっとまっすぐに見ている。わかるよ。わたしにはわかるよ。おまえは、ほんとうに、いいこだよ。

そんな花が、つまらない空き地のすみに、ゴミ捨て場のごみの隙間に、咲いている。誰かが捨てた野菜くずから芽生えたのだろう。だれも見向きもしない。あんなに美しいのに。

ダイコンの美しさがわかるひとは、すべてを知っている人です。
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