世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

冬の子③

2017-11-19 04:12:48 | 風紋


「いいが、どうしたんだ?」

「エマナが産気づいたの。ビーズに色を塗っていたら、急に腹が痛くなったのですって。手伝いにいかなくちゃならないの」

「ほう? 今頃に生まれるのは、歌垣の子じゃないな」

「そんなの珍しくないよ。エマナはお産が重い方だから、今夜は帰れないかもしれない」

「いいよ。大変だな。よくしてやれ」

そういうと、アシメックはソミナを送り出した。

カシワナ族では、死者を扱うのは男の仕事だったが、出産をとりしきるのは女の仕事だった。男はこういうとき、ほとんど何もできない。巫医のミコルだけが、出産に立ち会い、魔が出産の邪魔をしないように、お祈りをするだけだ。

ソミナは家を出ると、まず広場に向かい、そこに積んである村共有の榾を一束とってから、エマナの家に向かった。エマナの家のところまで来ると、ミコルが家の周りに色砂で陣を描いているのが見えた。まじないの陣だ。あの陣を家の周りに描くと、魔が家に入ってこれないという。

ソミナはミコルにあいさつすると、その陣をまたいで、家に入った。すると早速、誰かが声をかけてきた。




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