世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

山へ⑨

2017-11-15 04:12:51 | 風紋


それから、冬にさしかかるまで、山での採集は毎日続いた。山の宝はすばらしかった。土器の壺に、栗の実が満々と満ちて、それがいくつも家の周りに並んだ。酒つくりの上手な女は、さっそく林檎を壺にいれ、水と種を入れて酒を造り始めた。子供がとってきたグミや、キノコを干す板がそこら中に並んだ。寒い冬を過ごすためにとってきた榾も、広場に山のように積まれた。

また人々の中から自然に歌が生まれた。

山はいい
山はいい
なんで神は
こんなにたくさんくれるのか
ひとよひとよ
いいことをしろ
正しいことをしろと言って
くれるのだ

アシメックも毎日、山に言った。山にいくたびに、オラブに呼び掛けた。だが返事は一切なかった。それでも呼び続けた。

そして、もうそろそろ冬がやってくるという、最後の山行きの日、アシメックは意を決して、境界の岩を越え、オラブを探してみた。道に迷わないように枝折をしつつ、用心深く藪をまたぎながら、オラブをよびつつ探してみた。

「オラブ! もう冬が来る。寒いだろう! どうやって暮らすつもりだ! かえってこい!!」

だが、何度叫んでも答えはなかった。アシメックはあきらめるしかなかった。

そんなアシメックの様子を、村人たちは、尊いものを見るように見ていた。悲し気に泣く者さえいた。オラブのやつめ。アシメックはいいやつなのに。

山行きが終わると、冬がやってくる。とうとうオラブは見つからなかった。ただ一度だけ、川で漁をしている男がこう言ったのを、アシメックは聞いた。

「昨日、ケセンを泳いでいる変なやつがいたけど、あれはオラブかもしれない」
「ケセン川で?」

それを聞いた時、アシメックはふとアロンダのことを思い出した。まさかとは思うが。

しかしその不安が的中するとは、このときアシメックはひとかけらも思ってはいなかった。





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