王様の耳はロバの耳

たったひとりの叫びでも、そのうち風にのって広がれば・・・

お願いだからここに居て

2015-07-08 21:54:25 | 政治
まずはいきなり記事のリンクから。

「米陸軍、兵士4万人を削減へ 国防総省筋」(AFP=時事 7月8日)
>米陸軍が今後2年間で兵士4万人を削減する計画であることが分かった。さらに陸軍に勤務する民間人のうち1万7000人も削減されるという。米国防総省筋が7日、米紙USAトゥデー(USA Today)の報道を認めるかたちでAFPに明らかにした。
>同紙が入手、掲載した文書によると削減は経費を節減するためだという。この国防総省筋は、削減について陸軍が間もなく正式に発表すると述べた。USAトゥデーは、発表は今週行われると報じている。


「「日本防衛の基地なし」米国防総省、極秘文書(1968年)に明記 普天間など閉鎖候補」(しんぶん赤旗 7月3日)
>ベトナム戦争からの撤退や沖縄返還を想定し、在日・在沖縄米軍基地の大幅な再編が検討されていた1968年、米国防総省が、当時未返還だった沖縄を含む日本には「日本防衛のための基地は一つもない。いくつかの部隊が副次的に、そのような任務を持っているだけだ」との認識を示し、米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)などの大幅な基地削減を検討していたことが分かりました。

「米軍基地 どこが「抑止力」 国防総省の文書で明らかに」(しんぶん赤旗 7月3日)
>51年9月に署名された旧日米安保条約は第1条で米軍の「駐留権」だけを明記。「日本防衛」は一言も入っていませんでした。その後、60年1月に改定された安保条約は「日本と極東の平和と安全」のために米軍が基地を使用する(第6条)としました。全国での反基地闘争の高揚を受けてのものです。
>ところが、そのまやかしが、「日本防衛のための基地は一つもない」という米国防総省の文書(↑上のリンク記事)で明らかになりました。同様の認識は、70年1月26日の米上院外交軍事委員会の秘密会(サイミントン委員会)でジョンソン国務副次官が「われわれには、日本の通常型防衛に関するいかなる地上・航空戦力もない。それ(防衛)は完全に日本の責任である」と発言したことにも示されています。


「米陸軍を大幅縮小、1940年以来の水準に 国防長官が方針」(AFP 2014年2月25日)
>チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)米国防長官は24日、米陸軍の兵力を8分の1以上削減し、第2次世界大戦(World War II)以前の規模に縮小する方針を発表した。
>ヘーゲル長官は国防予算案の概要を説明する中で、米国は10年以上にわたってイラクとアフガニスタンで地上戦を展開してきたが、米国防総省にはもはや「長期間大規模な安定化作戦を実施する」計画はないとして、陸軍の兵力を現在の52万人から44万~45万人に縮小することを提案した。



つまり、米国は「日本の基地」=「極東基地」を、もうそれほどの価値がないとしているのである。
「世界の警察」を気取り、戦争を仕掛け、結果、採算が取れずに帳尻が合わなくなってきた。それは上記、2番目の赤旗の記事にあるように、既にベトナム戦争時から米国は採算割れの懸念を抱いていた。

湾岸戦争はやや事情が異なるが、ごく簡単に言えば、ベトナム戦争を含め先のイラク戦争やアフガニスタン戦争において、大義名分はさておき、アメリカは正当な理由(もしくは正当とされる理由)のもとに勝利し、それらの国を手中に収め、広大な市場を手に入れることを目論み、実際にそうなるはずだった。だが、筋書き通りには上手くコトが運ばなかったのである。
資本主義の基本原理は、破壊と消費、そして生産を繰り返すことにある。そしてそのバランスの上に成り立つ。しかし、これらの戦争を経る中においては戦費(投資)が嵩むばかりで回収の目処が立たずに採算割れを起こし、米国の財政をただ圧迫するに至った。ついでに言えば、ケンカを仕掛ければ大概の場合、仕掛けた方が負ける。それが世の常だ。

確かに、アジア圏を睨む上で日本は格好の地の利であった。ハワイやグアムからよりも、日本は中国、ロシアに近い。だが、言わばそれだけの理由である。中継基地としての価値はあっても決して中枢的戦略基地ではなく、上記3番目の赤旗の記事にあるように、そもそもが「日本を守ろう」などという気がさらさらなかったのである。

1960年当時、時の首相は安倍の爺さん、岸信介である。さて、(太平洋戦争に)負けて悔しい岸首相。大日本帝国の起死回生のために様々な模索をしていた。
そうした中で、「米軍が日本を守る」という口実を作って結んだのが、新安保条約、いわゆる60年安保だ。米国との同盟を足掛かりにしようとしたのである。
そして今、それがそっくりスライドしたような形になっているのが安倍の「戦争法案」だという次第だ。

以前も書いたが、アメリカは今、オーストラリアとの同盟強化を念頭に、むしろ太平洋にその目が向いている。
もう既にロシアの脅威はなく、中国と喧嘩する気もない。中国とは取引関係にあったほうが利があると考えている。北朝鮮は、韓国ともめない限り今のところはアメリカにとって問題外だ。
そうなると、日本に基地を置くことにあまり魅力を感じなくなる。
一方、ちょいと南シナ海の中国が目に付く鼻に付くで鬱陶しいが、ここはフィリピンとの関係において解決策を探ればいい。であれば、余程太平洋にウエイトを置いたほうが良いということになる。


さて、わが日本の総理大臣・安倍晋三はといえば、爺ちゃんの意志を継いで日本を「強い国にしたい!」と考えている。
だが、この「強くしたい」の方向は、腕力(武力)に訴えるということであって、人に例えれば、「精神的に心の強い人」ではなく「物理的に力の強い人」のことである。
とにかく安倍はそのために軍隊を作りたい。軍需産業を成長させたい。グローバル企業をたくさん誘致して、アジアへの影響力を強めたい。そうして爺ちゃんの岸信介が成し得なかった大東亜共栄圏の再構築すら夢見ているのだ。
しかしそうするためには今の日本の憲法下ではできない。憲法を変えなければならない。だがおいそれとは行かない。だったらまずはちょいとチョンボして「安保法案」からやろうかと。今アジア諸国に一生懸命カネをバラ撒いていたりもするのも、いわゆるそのための一環でもあって、そうして既成事実を積み上げること。国民を騙して感覚を麻痺させ、やがては改憲。それを狙っている。



今は軍隊を作れない。作れたとしても相当な金も掛かる。だったら米国に擦り寄って今ある条件を有効に利用しようではないかというのが当面の発想だ。
「もうカネがねぇんだよ」というアメリカに、これ幸い、「わかりました、いいですよ。その分は何とか頑張りますから」と言う。今アメリカに引かれたらまずい。少なくとも先が見えるようになるまでは何とか繋ぎとめておかなければならない。
その上で、日米同盟が「抑止力になっている」と言い、北朝鮮や中国が脅威だと煽り、安全保障環境が変化したと言いくるめ、そうすれば国民も納得するだろうと。
しかし、その「抑止力」は見せかけであり、「今、一国で平和は守れない」というのも単なる詭弁だということが、これらの流れを考えればお解かりいただけると思う。
実は、米軍に出て行って欲しくないと一番願っているのは安倍自身なのである。米軍に居てもらわないと困る事情がここにある。

米国の軍備縮小、撤退の計画の動きは勿論政府として承知しているはずだ。だがそれを公に言ってしまっては計画が進まない。
そうしたことを正面から認めたくなくて誤魔化して逃げているのは安倍政府であり、安保条約に固執し、それを盾にしているのも安倍政府だ。もちろん辺野古基地建設を進めているのも安倍政府であって、そうして米軍に居てくれと頼んでいるのはほかでもない、安倍政府なのである。


5月末から先月頭にかけて沖縄の翁長知事が渡米した。新基地反対をはじめ沖縄の民意を説明するするためにアメリカに向かった。
止むを得ないことだが、あいにく米政府の上層部には会えず、対応した担当官からはことごとく「国同士が決めることだ」と体よくあしらわれた。
だがどうだろう。全く意味がなかったかと言えばそうではないだろう。日本の官邸は、既に根回しは済んでいるとばかりにのんびりと構えてはいたが、決して快くは思っておらず、翁長知事の行動には逐一注意していたはずだ。
米国政府もまともに取り合うことこそなかったが、翁長知事の訪米を「知らなかった」とは言わないだろう。
沖縄の基地問題が、すぐにどうこうなることではないにせよ、今後は徐々に変化が現れてくるのではないかと思う。むしろそれに期待できる要素はあるだろう。
米軍基地撤退への闘いは、対米軍ではなく、対日本政府がまず先だ。



《参考記事》⇒「わかりにくい政治 2 《安保法案ってなに?》」
以前、中学生向け(?)に「戦争法案」を書いた記事である。日米関係を含め判り易く書いたつもりだが、よろしければご参考に。


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