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東京五輪:サントリー、佐野デザイン取り下げ

2015-08-14 10:51:32 | 東京五輪2020
昨日、サントリービールの「プレゼントキャンペーン」において、賞品のトートバッグのデザインに疑惑が生じていた問題で、サントリーと佐野研二郎氏がそれぞれコメントを発表、一部の賞品取り下げを発表し、ついて、NHKが地上波にてそのニュースを報道をした。(同夜、ニュース23ほかでも。)

これもいわゆる「Netのチカラ」だろう。まさに、Net住人の大歓声が聞こえてくるようである。これで事態は大きく動いたと言える。

もっとも、ここまで“火だるま”になれば、一般マスメディアもいよいよ馬耳東風では済まされない。
まだ「各社一斉」とはならないが、それも今後の動向次第だ。

「佐野氏デザインバッグ 酷似指摘で取り扱い中止」(NHK 8月13日)

>大手ビールメーカー「サントリービール」では、発売しているノンアルコールビールの購入者を対象に佐野さんがデザインしたバッグをプレゼントするキャンペーンを先月から行っています。
>バッグのデザインは当初30種類用意されましたが、このうち複数のデザインがインターネット上で、ほかの作品のデザインなどによく似ていると指摘されたほか、メーカーにも同様の指摘が寄せられていました。
>サントリービールによりますと、こうした状況を受けて佐野さんから申し出があり、デザインした30種類のバッグのうち8種類のバッグの取り扱いを中止することを、13日に決めたということです。
>佐野さんは、先月発表された2020年の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムをデザインしましたが、ベルギーのグラフィックデザイナーが2年前に作った劇場のロゴマークと極めて似ているとして、デザイナー側はIOC=国際オリンピック委員会などに使用の差し止めを求める文書を送っています。
>これに対して、佐野さんは今月5日に会見を開いて、「盗用だと指摘を受け大変驚いているが、全くの事実無根だ」と否定しています。

>■佐野氏の事務所コメント
>今回、一部のデザインの取り下げを申し出たことについて、佐野さんの事務所はホームページで、「ネット上などにおいて著作権に関する問題があるのではというご指摘が出ており、多数の方々にご心配をおかけしてしまっている状況がございます。このような状況を受けまして、いくつかのデザインについて取り下げをお願い致しました。これらのデザインについては、いずれも身近にあるアイデアや素材をモチーフにしたものではありますが、現在、専門家を交えて事実関係等の調査・検討を開始しております」とコメントしています。
>また、NHKの取材に対して事務所の広報担当者は「指摘があったバッグのデザインについては事務所が受注した仕事で、佐野がほかのスタッフとともに手がけたものでした。指摘されたデザインのうち、制作プロセスにおいて懸念を拭えないものについて調査を進めていて、取り下げを依頼した」と説明しています。



↑クリックで拡大(サントリー・ホームページより)

取り下げられた賞品は8点だが、Net上での指摘は10数点に及んでいる。
取り下げにおける具体的かつ明確な「原因」や「理由」は示されていないが、だがいずれ、これで佐野研二郎氏側は瑕疵を認めたことになる。

しかし一方、佐野氏の会社「MR_DESIGN」のホームページに掲載された文書を見れば、言い訳と共に保身に回るようなニュアンスで、一方的かつ、そこに「お詫びの文言」といったものは一切無い。そうして残念ながら謙虚さも、謝罪の姿勢も見出すことができない。


↑クリックで拡大(MR_DESIGN・ホームページより)

何故なのか、これは「日刊ゲンダイ」の記事を読めば頷けるだろうか。



──釈明会見以降も相次ぐ盗用疑惑の報道をどう見ていますか。
「事実と違うことが報じられていて、本当に残念です。佐野は人のデザインを模倣するスタンスで仕事をしていません」

──佐野氏が手掛けたサントリーのプレゼントキャンペーン用のトートバッグのデザインが、米国サイトにアップされたものと酷似している。盗作ではありませんか?
「確かにトートバッグのデザインを監修したのは佐野です。しかし、細かい実務を担っていたのは何人かの"部下"です。その部下たちの話を聞いた上でないと、返答はできません。今は事務所が夏季休暇に入っているので、調査にもう少し時間がかかります。そもそも、ゼロベースからデザインを作り出すことは一般的ではありません。あくまで一般論ですが、どこかで見たデザインから無意識に着想を得ることは、珍しいことではありません


つまり、「落ち度」はあくまでも「スタッフにある」というスタンスだ。まぁどこそこにありがちな話ではある。
しかし、サントリーのキャンペーンでは「佐野研二郎デザイン」と明確に佐野氏のデザインであることを銘打っていて、実際がどうあれ、この責任は佐野氏に帰属するのは明らかだ。他人の所為にして逃れることなどは出来ない。

また、NHKのニュースでもあったように、「専門家を交えて事実関係等の調査・検討を開始している」とは何を意味するのか。確かに弁明の材料を整えるのには相応の時間も必要だろう。

そして、「ゼロベースからデザインを作り出すことは一般的ではない」「どこかで見たデザインから無意識に着想を得ることは珍しいことではない」。
それは制作に携わったことのある人間からすれば、むしろ“常識”と捉えられることではある。要はその後の料理の腕前だ。
だがこの場合、言い換えれば「模倣もあり得る」、「他のデザインに依拠することもある」ということを自ら告白しているのに他ならないのであって、強いては、かの「五輪エンブレム」もその上で制作されたことを、何ら否定しないことにも繋がってくる。

ともあれ、サントリーが思い切ってキャンペーン中止にしなかったのは何故か。
佐野氏の会社の文面に見られる、どこか他人事で投げやりで横柄で、事の重大さを把握していないのではないかとさえ思わせるものは何なのか。
そもそも本人が語らずにカミさんに代弁させるあたり、既に真摯な対応とは言えないだろう。礼儀を知らず、却って火に油を注いだ結果になりはしまいか。

一事が万事とはよく言ったもので、こうしたことの一言一句、一挙一動、一挙手一投足が全体にも及び、姿勢そのものを現していると言えなくはない。ある意味、驕りが招いた結果で、もう失墜は免れようがない。終わりの始まりなのか、後は時間の問題だ。


さて一方、それでもまたここで佐野氏を擁護する記事が上がった。

「衆愚に流されず東京五輪エンブレム現行案を堂々と採用すべき」(Livedoor NEWS 8月13日)

大部分は、まるでJOC(日本オリンピック委員会)が言いそうなことをそっくりトレースしてくどくどと述べているに過ぎない。
だからどうなんだというところだが、この期に及んでまだこんなことを言っているのかと、ただ気の毒に思えて仕方がない。

後半、
>「このエンブレム自体への好き・嫌い」は個々人で当然あるでしょう。ただ、「好き・嫌い」あるいは「五輪そのものへの賛成・反対」によって、「似ているかどうか」あるいは「パクりかどうか」についての判断を下すのは筋違いです。ましてや、佐野氏の真摯な説明に耳を傾けることも理解することもなく、思い込みや個人的感情に基づいて批判の大声を上げるのは衆愚とも言える行為です。理は東京五輪エンブレム側にあり、何ら恥じることなく、堂々と、このエンブレムを採用して問題ないのです。
>「どこの誰ともわからないデザイナーが作った、どこの何かもわからない劇場の、商標登録もされていないロゴマークが、東京五輪エンブレムと一部分において似通っていた」というだけの事例を、さも大問題かのようにしているのは日本の衆愚です。組織委員会には衆愚に流されることなく、毅然とした態度で事態の収拾に臨んでもらいたいところ。
>私は、現行エンブレムの採用に、積極的に賛成します。
>個人的には好きなデザインではないですが、現状の「パクり疑惑」に同調することのほうが、もっと恥ずかしいからです。


もちろんいろいろな考えや意見があって当然であり結構なことである。しかし、こと関してこれには呆れた。援護しているつもりで大衆の心を逆撫でをしていることに気がつかないのか、それこそなんと愚かな物言いであろうか。

Netの大多数の声を「衆愚」と切り捨てる。
では、「衆愚」を「大衆の声」とするならば、「大衆」が望むことは「愚か」だということになるのか。

否、「大衆」が望んでこそ、「大衆」が求めてこそのオリンピックではないのだろうか。全てを包括し、その上での大衆の「好き・嫌い」は極めて重要な要素である。「大衆」に支持されない、受け入れられない行事など、国民の金を勝手に使う莫大な無駄遣いの上にある、極一部の人間による単なるマスターベーションにしか過ぎない。
どうか、上のような哀れな考えは捨ててほしいと思う。


ところで、Netのうわさ(?)によれば、ベルギー・リエージュ劇場のロゴをデザインしたオリビエ・ドビ氏が立てる弁護士はタダモノではないとか?
原告がドビ氏になるのかリエージュ劇場になるのか定かではないが、いずれ、ベルギーの王族絡みだという話しも。

オリビエ・ドビ氏が極めて常識人であるとして、さて、状況を鑑み、国家的組織を相手に訴訟を起こすなどと安易に考えるのかどうか。
そう思えば、彼にはそれなりの背景があり、勝算を見越しているからこそのことだというふうにも言えるのではないのか。それだけ根拠がある故での強気であることもまた間違いはないだろう。
であれば、その勝敗はさておき、訴訟になればそれだけで「東京五輪エンブレム」に不名誉な傷がつくことだけは確かだ。世界報道も避けられず、ともすれば、場合により国際問題にまで発展しかねない、その可能性すら内包している。

このサントリーの一件で、もう「疑惑」だけでは済まなくなり、少なからず信頼を損なった佐野研二郎氏。
その佐野研二郎氏のデザインした「東京五輪エンブレム」を使い続けることのリスク。国は、JOCは、東京都は、今一度目の前にある現実を目を見開いてよく見て、そしてよく考えることだと思う。このまま行けば無限大に無駄を生むことになる。



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