日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

早春の出雲を行く - やまいち

2017-03-19 16:51:34 | 居酒屋
当初から意図していたわけではないものの、四時を回ったところで松江に戻るという流れは結果として理想的でした。岸に沿ってそのまま歩けば「やまいち」が開く四時半になるからです。
ただし、一度は見送りの方向に傾いていたことを白状しておきましょう。というのも、この好天下で明るいうちから呑もうという気分ではなくなってきたからです。折り返しの電車に乗れば、今度は宍道湖の夕景が車窓に広がります。山陰でこれだけの好天に恵まれる機会が、今後何回巡ってくるかと考えたとき、今日は乗車に徹するしかなかろうという考えが、にわかに強くなってきたとでも申しましょうか。ところが、腹を決めて改札をくぐろうとしたところ、川跡の方で火災があり、運転見合わせになっているとの案内が。この駅を出るには出るものの、先へ行って足止めされる可能性が高いとの説明でした。これにより乗車という選択肢はなくなり、元の鞘に収まるという顛末です。

こうして「やまいち」の暖簾をくぐるにあたり、懸念材料が二つほどありました。一つは連休中日に開いているのかどうかという問題で、こちらについては店先に暖簾が出ていた時点で解消されました。そうなると次なる問題は満席で振られる可能性です。開店と同時に席が埋まるほどではないにしても、予約満席という可能性については覚悟しました。一か八かで暖簾をくぐると、こちらの名前をたずねる第一声が。やはり予約で満席かと一瞬覚悟するも、カウンターの奥の方に案内されて事なきを得るという結果です。
しかし、その後入った二人組には六時までという条件が付きました。つまりそこから先は予約満席ということです。さらに一人客が入ったところで完全に予約満席となったらしく、直後のお客は断られました。この時点でまだ五時を回っていません。五時前でも振られる可能性がある状況で、間一髪の滑り込みだったことになります。

このような状況もあり、先客はいずれも県外からの一見客で、直後に入った二人組だけが常連のようでした。店主、大女将とおばちゃんの老練な客あしらいは心地よく、大ぶりなおでんもしみじみ味わいたくなる逸品とはいえ、右も左も予約の一見客ということになると、居心地の点で画竜点睛を欠くのは否めません。今日は手早く飲み食いして席を譲るのがよかろうと考え、平目の刺身、おでん二品、あとはお約束のめし汁漬物をいただいて、徳利を二本空けたところで席を立ちました。
本当の山場は店を出たところで訪れました。西の空が真っ赤に染まり、夕日が宍道湖の彼方へ沈んでいくところだったのです。その様子を橋の欄干から眺めれば、目の前を大橋川が滔々と流れ、彼方に松江大橋が架かり、大きく広がった視界の左手に合銀の本店が屹立して、それと対称をなす位置におぼろげな夕日が浮かんでいました。雲一つない快晴ならば眩しすぎた、しかし遠景が霞んだこの時期だからこそ出現した、実に見事な夕景でした。
教祖が橋の袂の名酒場として幾多の著作で絶賛してきた「やまいち」ですが、松江には同じく橋の袂の「庄助」という名酒場もあります。川の水面が街灯を映す情景などは、新大橋より松江大橋に断然分があるように思われ、ならば「庄助」こそが橋の袂の名酒場だろうと、前回訪ねたときは思ったものです。しかし、松江大橋では夕日があらぬ方向に沈んでしまい、これほど見事な夕景は期待できそうにありません。少なくとも夕暮れ時に関する限りは、新大橋の袂にある「やまいち」に分があり、教祖があれほど推すのもそのためだろうとようやく得心できました。この季節、この時間帯に訪ねたからこその発見です。

やまいち
松江市東本町4-1
0852-23-0223
1630PM-2130PM(日祝日 -2100PM)
不定休

豊の秋二合
平目
おでん二品
めし汁漬物
ジャンル:
お酒・お茶
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