日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

スポーツの早期育成はリスク覚悟で

2017年09月06日 08時18分32秒 | 日々雑感
 卓球の福原愛選手は3歳から練習を始め、一流選手に成長した。泣き虫愛ちゃんと親しまれる一方、中国リーグに一人参加し腕を磨くほか、中国語もマスターする等の努力をし、人間としても成長したようである。

 愛ちゃんに刺激されたのか、彼女より12歳年下で゙2000年生まれの伊藤美誠選手、平野美宇選手が現在大活躍中である。両選手も2歳、3歳の頃に卓球を始めたそうだ。このようにトップアスリートの中には、ごく幼い頃に競技生活の第一歩を踏み出した人が少なくないようであり、逆にトップに立つためには幼くして始めなければならないようにも感ずる。

 近年、特にスポーツに関し子どもの競技活動の早期専門化、つまり、低年齢期から特定の競技選手を育成強化する早期スポーツエリート教育が盛んになりつつあるようだ。その背景として、日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が大いに影響している。

 先日のレスリングの世界選手権で優勝した須崎優衣選手と奥野春菜選手は18歳、川井梨紗子選手と土性沙羅選手は22歳であり、優勝後の選手の感想は共に3年後のオリンピックでの優勝が目標と抱負を語っている。奥野選手2歳半の時に、須崎、川井、土性選手は小学校1、2年の時にレスリングを始めたとのことである。

 卓球にしてもレスリングにしても、父親か母親が、あるいは両親が、元卓球選手、元レスリング選手であった家庭が多く、政治家と同様に、スポーツの専門化、世襲化が押し寄せている感がする。良き環境に恵まれて羨ましい反面、それ以外の選択の余地が狭められるのは気の毒である。

 しかし、低年齢のうちに特定の分野に専門的に取り組み、高度なトレーニングを行うことには弊害も指摘される。スポーツエリート教育、早期の競技専門化による弊害として、メディカルとメンタルの両面が指摘される。

 メディカル面では、練習などに伴うけがや障害、特に慢性障害の発症率が高まることが報告されている。要因の一つに、低年齢のうちに特定の競技に専門的に取り組むことで、同じ動作をくり返すことが挙げられる。野球で言えば投球やスイングなどの動作であろうが、特にゴルフのスイングは実生活ではめったに見られない動作である。

 メンタル面では、英才教育の弊害としてよく言われているのは、“燃え尽き症候群”だ。あまりにも早い段階からやらせ過ぎてしまうと、早くは高校生くらいで燃え尽きてしまうそうだ。世界大会で優勝してもそれで満足せず、3年後の東京オリンピックまで闘志を持続させるのは大変な努力を必要とするのであろうが、更にオリンピック後の人生の目的を考えると他人事ながら心配になる。

 スポーツ選手の場合、選手寿命は短い。30歳前に例え一流になれたとしても、その後の人生を有意義に送るための知識、教養を身に着けているのかが心配になる。

 国は、エリートアカデミー味の素トレセンを生活拠点として、全国から発掘した優れた素質のあるジュニア選手を近隣の学校に通学させながら、各競技団体の一貫指導システムに基づいた指導を行っている。これは、スポーツを国威発揚の場と考える国の政策の一環であるが、メンタル面のケアを十分行っているのであろうか。特に落ちこぼれた選手のケアーに注力して欲しいものだ。

 早期英才教育の結果、一流選手となり、それなりに有名になれば、引退後の新たな道が開けるかも知れないが、途中で挫折した場合、その後の人生の選択肢が残っているのだろうかと心配になる。男の平均寿命も80歳を超えた。引退後の人生の方が長い。そのため最近は、子どものうちに様々なスポーツや遊びを経験することが推奨されている。

 しかし、その道のトップになるためには、早くから専門化しなくてはならないとの意見もあるが、リスクが大き過ぎる感がする。2017.09.06(犬賀 大好-370)