「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

写楽の手ぱつと開かれ花野かな 石母田星人

2017-11-02 05:23:24 | 日記
 『私にもこんな連想力があらったら』と、羨ましく思う。花野に来ての感動が、写楽の絵の、あのゴム手袋を無理やりに膨らませたような手と、驚きを視覚的に表現されたとも、ぱっと開いた手が花野を出現させたようにも読める句である。
 花野の、春の花の華やぎとは違う趣や、花期が短く、あとは荒涼たる枯野となるばかりの一面の草の花は、写楽の色使いや、約十ヶ月という短い期間に役者絵を版行し、忽然と画業を絶って姿を消した絵師であったことも含まれて、季語と呼応する。私も一人の詠み手として句の巧みさに魅了されたが、この句は俳句を知らない誰が読んでも花野が鮮明に見え、感動が真っ直ぐ伝わる句である。(博子)

コメントを投稿