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「不正受給」よりもずっと深刻な「給付しない、させない」社会

2017年08月05日 | 社会・経済

時事オピニオン 2017/7/28FREE

 相談事例から見える不当な生活保護行政

 「不正受給」よりもずっと深刻な「給付しない、させない」社会

   「生活保護」という言葉を聞けば、「不正受給」を連想される方が多いかもしれない。「ズルをして不正にお金をもらっている」「働けるのに働かないで楽をしている」――こうした生活保護に対するイメージは根強い。しかし、生活保護の現場は、このような一般的なイメージとは異なる現実がある。私たちNPO法人POSSE(ポッセ)は年間1000件以上の生活相談を受けているが、そこから見えてくるのは、行政による違法・人権侵害が横行している実態だ。本稿では、私たちが実際に受けた相談事例を中心に、知られざる生活保護行政の現場を可視化していきたいと思う。

生活保護を申請させてもらえない

  生活保護の利用は、生活に困窮している人が行政に対して「申請する」ことからはじまる。本人からの申請を受け、生活保護を利用できるかどうか、収入や資産を調査し、利用条件を満たしていれば生活保護の支給が開始される。利用条件を満たしていなければ却下となる。したがって、生活保護を申請する行為は権利として認められており、行政がこれを拒否することはできない。

 ところが、生活保護の申請をさせないという違法行為が、生活保護の窓口では行われている。この違法行為は「水際作戦」と呼ばれている。では、実際に窓口ではどのような対応が行われているのだろうか。

 【2016年12月 千葉県 30代女性】

所持金がほとんどない状態で生活保護申請に何度も行ったが、すべて追い返された。窓口では「何しに千葉に来たの」「飛行機に乗って帰れ」と言われた。後日また所持金20円の状態で申請に行ったが「若いのだから働け」というようなことを言われ、申請できなかった。

 【2016年10月 東京都 20代女性】

親兄弟からの虐待から逃れるために単身上京し、警察署に相談して住民票の閲覧禁止措置を取った。その後、女性が福祉事務所で生活保護を申請しようとした際、上記の状況にもかかわらず、「親に連絡を取れ」「福祉事務所から親に連絡をする」「実家に帰れ」などの対応がなされた。女性は深刻な精神的苦痛を受け、また生活保護の申請をすることもできなかった。

 【2016年11月 石川県 20代女性】

母子家庭で所持金が1円しかなく米だけを食べているような状況で、3回ほど窓口を訪れ生活保護を申請しようとしたが、水際作戦により申請できなかった。脳貧血を患い就労はできないが、窓口では「あなたは本当に困っている感じがしない」などと言われた。

  ここに挙げたのは、POSSEに寄せられた相談の一部である。市民の安全や生活を守るはずの行政で、このような違法行為や人権侵害が行われている。「働け」「家族に頼れ」などと言われ、生活保護を申請することができないばかりか、ときに人権侵害まがいの暴言を吐かれることすらある。

 生活保護を利用しても楽にはならない

  では、生活保護の受給がはじまれば楽な生活を送ることができるのだろうか。残念ながら、そうではない。生活保護を受けた後、本来は自立を支援するはずのケースワーカーによってパワーハラスメントが行われている。

 【2016年1月 岩手県 50代男性】

走れないほどの心臓病を抱えているが、ケースワーカーに就労圧力をかけられ、ルームランナーに乗り心拍数などを測る検査を病院で無理やり受けさせられそうになった。また受給中は窓口を訪れるたびに暴言を吐かれた。

 【2016年11月 愛知県 女性】

ヘルニアがひどく医師には子供を抱くことすら禁止されている状態であり、診断書も提出しているが、突然家にやって来たケースワーカーに「働け」と責め立てられた。仕事ができないことを説明しても「自分なら働く」などと言って聞き入れてくれない。

   このように、「就労指導」や「自立支援」の名の下に、ハラスメントが行われることは決して珍しいことではない。利用者は「指導」に逆らって生活保護を打ち切られてしまうと、生活ができなくなってしまう。こうした利用者とケースワーカーとのアンバランスな力関係のもとで、「指導」と称したパワーハラスメントが行われている。

 貧困者には妊娠・出産する権利はない?

  生活保護利用者の立場の弱さから、彼/彼女らは、実際に人としての権利を剥奪されている。最近、私たちのもとには、妊娠・出産を否定するかのような扱いを受けたという相談が増えている。

 【2016年10月 千葉県 女性】

ケースワーカーに妊娠を告げたところ「どこで堕ろすんですか」と言われ、出産扶助を出すことを拒否され、中絶するよう言われた。

 【2016年10月 東京都 女性】

生活保護受給中に妊娠したが、ケースワーカーが出産扶助を出さないと言っており、このままでは出産できなくなる。

  生活保護制度は「最低限度の生活」を保障するものなので、当然、妊娠・出産に関わる費用についても出産扶助で支給されることになっている。しかし、「生活保護を受けているような人間には妊娠・出産する権利などない」かのような対応が、残念なことに、福祉行政の中で現に行われてしまっている。

 行政によって行われる「殺人」

   このようなパワハラや人権侵害の横行は、生活保護利用者の自立を妨げ、保護を長期化させていく。精神疾患の悪化などにより、医療費も増大していくだろう。

 また、それだけではなく、人命すら奪われていくことになる。「水際作戦」を受けた生活困窮者の自殺や餓死、殺人事件は、2005年以降明らかになっているだけで11件起きている。

これは、調査や報道で明らかになったもので、氷山の一角に過ぎない。

 生活保護利用者の多くは、家族や地域との縁が切れており、唯一のつながりがケースワーカーであることも少なくない。そこでこのような対応が行われれば、利用者の「生」の否定へと結びついてしまう。厚労省の調査によれば、生活保護受給者の自殺率は全国の平均と比べて2倍以上高い。

保護を必要としているのに受けられない/受けていない人々

  それでもやはり、生活保護を受けている人たちに対して感情的に「許せない」「多少の権利の制限は仕方がない」と考える人たちも多い。

生活保護を受けることは「不正」だとする感情は、なぜこれほどまでに強力なのだろうか。

 そもそも、生活保護の不正受給は金額ベースで0.4%程度に過ぎず、決して多いとは言えない。他方で、生活保護を利用できる条件がある人のうち実際に利用している人の割合(捕捉率)は、15〜18%となっている。つまり、現在生活保護利用者は216万人ほどなので、実に800万人以上の人々が生活保護を受けられるにもかかわらず、受けていない状態にあるのだ。この捕捉率は、諸外国と比べても極端に低い。

 ワーキングプアの増大がバッシングを強める

  これは、生活保護が定める最低生活費以下で生活している人たちが膨大に存在しているということを示している。そして、彼/彼女らの多くは働いている貧困層、ワーキングプアである。

 さらに、2008年には、12都道府県で生活保護と最低賃金の逆転現象が見られた。フルタイムで働いても、最低生活費以下の収入しか得られないのである。近年では、最低賃金の上昇と生活扶助費の引き下げが進み、この逆転現象は「解消」されたとされているが、生活保護に適用される公租公課の控除や勤労控除などを考慮に入れれば、働いていても最低生活費に満たない、あるいは最低生活費水準ギリギリという層は膨大に存在する。

 ここから、生活保護利用者に対する敵対的な意識が生み出される。働いている人々の目には、生活保護を利用している人たちはあたかも「恵まれている」かのように映るのである。働いて生活を成り立たせるべきだという労働倫理の強い日本では、生活保護を利用することが倫理にもとる「不正行為」とみなされ、「多少の権利の抑制は仕方がない」と考えられることになる。

 残念なことに、ケースワーカーの多くもこうした意識を内面化しており、「不正を取り締まる」ことこそが「正義」であると考え業務にあたっている。その結果、上述したような違法行為や人権侵害へと結びついていくのだ。それが社会的コストの増大、人命の喪失へと帰結してしまうことはすでに述べた。

 「普通」に暮らせる社会へ

  貧困に陥ったとたん、様々な権利を制限され、ときには生そのものが否定されてしまう。日本社会では、生存権がいまだに確立しているとはいえない。

 しかしながら、貧困は社会的に生み出されるものであり、誰もが何かのきっかけで貧困に陥るリスクを抱えている。生活保護利用者に向けられている違法行為や人権侵害の矛先が、いつのまにか自分に向いているということは十分にありうることなのだ。誰かの権利の制限は、自分自身の権利の制限につながる可能性がある。

 しかし、「働けない者」の貧困の悲惨さだけを訴えても、「働ける者」の過酷さが広がるいまでは、共感を呼ぶどころか、反発の方が強まってしまうだろう。ワーキングプアを生み出す労働市場のあり方を変えることなしに、「普通」に暮らせる福祉社会を実現することはできない。働くことによって(最低ではなく)最低限度の生活が成り立つようにしていかなければならない。具体的には、最低賃金の引き上げや長時間労働の規制が重要になるだろう。

 いずれにせよ、生存権が書き込まれた憲法25条の条文を守ることではなく、この現状を変えるための「不断の努力」こそが、生存権を確立していくうえで求められているのである。

 

 渡辺寛人( NPO法人POSSE事務局長/ブラックバイトユニオン共同代表)

   1988年、神奈川県生まれ。法政大学現代福祉学部卒業。2009年から学生ボランティアとしてNPO法人「POSSE(ポッセ)」に参加。東日本大震災後の11年4月から仙台POSSE代表として被災地支援に取り組む。14年8月にPOSSEの仲間約20人とブラックバイトユニオンを結成して共同代表に就任。現在、東京大学大学院博士課程に在籍。社会福祉士。共著に『断絶の都市センダイ』(14年、朝日新聞出版)。

 

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2 コメント

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Unknown (ケンスケ)
2017-08-05 20:31:16
腹立ちます
怒りがこみあがります
言葉悪いがぶっ殺してやりたいです
    ↑
こういうこと書くから嫌われるんです(笑)
でもね役所の人間ってこういうの多いですよ
俺も経験ありますから・・・
その時思った
あいつら皆殺しだ・・本当に思いましたよ
いや、ほんとに、まったく・・・ (mooru)
2017-08-05 22:09:59
ただ断られるのではなく、人格そのものを否定されちゃ、死にたくもなるよね。日本の自殺率が高いのも役人のせいかも?

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