里の家ファーム

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「農業」と「福祉」の連携

2016年10月08日 | 社会・経済

障害者が地域農業の担い手、売り上げ拡大の農園も

広がりつつある「農業」と「福祉」の連携

  JB PRESS 2016.09.30Fri 白田

  NPOや社会福祉法人が農業に進出したり、農家が障害者を雇って農作業を行ったりする「農福連携」が進んでいる。社会福祉法人の中には、認定農業者となったり、6次産業化を進めたりして、収益を上げている事業所もある。国も「農福連携マルシェ」やシンポジウムを開催するほか、助成金制度を創設するなど後押ししている。

 なぜ、いま「農福連携」が広がりつつあるのか。背景を探りつつ、具体的な事例をみてみたい。

「農」と「福」が連携することで互いの課題を解決

 農福連携が盛んになってきている背景として、まず農業側では、農家の高齢化で労働力が減少し、耕作放棄地が増加していることが挙げられる。2015年度の農林水産省「農林業センサス」によると、農業就業人口は約2097000人。1985年時点から6割以上減少している。農家の平均年齢は66.4歳となり高齢化が進んでいる。耕作放棄地も約423064ヘクタールで、埼玉県とほぼ同面積。1995年時点の2倍近くに増えている。このような背景から、新たな担い手が必要とされているのだ。

 一方、福祉側の背景としては、賃金の引き上げが課題となっている。企業に雇用されれば最低賃金以上を受け取ることができるが、企業に雇用されない障害者は「就労継続支援」という訓練を受けることになる。雇用契約を結び利用する「A型」と、雇用契約を結ばないで利用する「B型」に分けられるが、2014年度の1カ月分の平均賃金を見ると、A型で66412円、B型で14838円。これに障害者に支給される障害者年金を加えても、なお生活していくには苦しいのが実態だ。しかし、農業に従事することで、実際に賃金がアップする例が数多く現れはじめた。

 つまり、「農」と「福」が連携することで互いの課題を解決する「Win-Winの関係」を築ける可能性があるのだ。

国の支援は本格化

 国の支援も本格化している。農林水産省では20163月に「農福連携推進フォーラム」を開催。先進事例の紹介を交えながら、農福連携を行っている団体との意見交換を行った。5月には厚生労働省と農林水産省が東京・有楽町で「農福連携マルシェ」を開催。障害者施設の農業の紹介や生鮮野菜などの展示・即売会を行った。

 助成金制度も整ってきている。厚生労働省は2016年度から「農福連携による障害者の就農促進事業」として11000万円を計上。農業技術や6次産業化で指導や助言ができる専門家の派遣、農産物や加工品のマルシェの開催に対し経費を補助する。

 農林水産省では、福祉目的の農園の開設・整備に加え、農機具の洗い場やトイレ、資材置き場の設置などに対する助成、また専門家の派遣、研修会の開催などに対する助成を行っている。さらに、障害者の雇用を進めるため、障害者が作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設の設置に対する助成や、ハローワークなどを通じて障害者を雇用した雇用主に助成金を支給する制度もある。

 実際に障害者が農作業を行う際にネックになるのが、農業知識の不足だ。障害者にとっては、専門家からの支援が受けやすくなることはメリットになる。農業者側にとっても、マルシェの開催などで、障害者が実際に農業に取り組む姿を見れば、理解が深まるかもしれない。

 行政、福祉、農業の関係者で構成する協議会も北海道、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、九州、沖縄の9つのブロックに設置され、農業分野での障害者の就労を進めている。

独自の農福連携の制度を創設する自治体も

 独自の農福連携の制度をつくる自治体が増えてきている(表)。ほとんどが最近始まった取り組みだ。

 

独自の農福連携の制度のある自治体。青森県八戸市や栃木県真岡市などの取り組みは全県レベルに拡大している。(農林水産政策研究所「地方公共団体等における農福連携の推進体制の構築に関する分析」およびインターネット調査により筆者作成)
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 障害者が農業を始めるにあたって、いきなり農地を借りたり、購入したりするのはハードルが高い。一方、障害者施設が農作業を農業者から受託する「施設外就労」であれば、比較的容易に農作業に取り組める。しかし、施設外就労を行うとしても、農家と障害者施設の双方とも情報が不足しており、どこにどのような作業を依頼できるのか分からないことが多い。そこで、仲介や斡旋をしてくれる窓口が求められる。

 香川県では、健康福祉課が農林水産部やJAと連携して、農家の施設外就労を促進している。「NPO法人香川県社会就労センター協議会」(以下、センター)が窓口となり、農家と障害者施設の農作業受託のマッチングを行う。農家がセンターに農作業を依頼し、センターにいる専任コーディネーターがマッチングを行い、農作業を障害者施設に発注するというしくみだ。

 同センターによると、2011年度の延べ作業人数が1752名、延べ参加施設数が286だったが、2013年度にはそれぞれ7704名、1233に急増した。農作業の量も増え、障害者施設に約1000万円近くの工賃が支払われているという。

 最近の事例では、群馬県が2014年から「一般社団法人県社会就労センター協議会」を設置し、障害者施設が手がける製品やサービスを受注していたが、2016年から農作業の受注を開始。農業分野の専門家を配置し、農業のニーズ調査や障害者への技術指導を行い、農作業の斡旋を試みている。

 群馬県障害政策課の松嶋貴明氏は、農福連携の意義についてこう語る。「障害者には個々に作業の向き・不向きがありますが、農業では作業が多岐にわたるため、適性にあった作業を見つけやすいという特徴があります」。

 ほかにも、農家側の高齢化による労働力不足の解消、地域との良好な関係の醸成などの効果が期待できるという。

 2016年は4月から5月にかけて、ビニールなどで覆われたレタス畑の草取り作業、ぶどう農園の収穫、トウモロコシ畑の植え付け・草取り作業などを行った。

 だが、始まったばかりのため課題も少なくないようだ。農業者に障害者の能力が認識されていないことや、農業者が障害者施設に農作業を委託することに慣れておらず、工賃の設定に困っていることなどだ。また、障害者施設にとっても、時間外である早朝や夕方、土日などに行う作業への対応をどうするかなどの課題があるという。

 松嶋氏は「農業に従事して、日々必要な食べ物を社会に提供することは、日常生活を営むうえで必要不可欠な部分を担うことにつながります。障害者・障害者施設が、『食物を提供している』という新たな社会的役割の創出ができれば、『障害者がいる社会』がより普遍的になるのではないかと期待しています」と語る。

 この他、自治体とJAが連携して企業が障害者の雇用を促進する目的で作られた「特例子会社」を誘致したり、出資する企業を募って障害者施設を設立した事例もある。JAの支援は大きく農福連携に貢献しているという。今後、自治体による独自の取り組みはますます広がっていきそうだ。

障害者が地域の農業の担い手に

 日本セルプセンターが2014年に実施したアンケート調査1696事業所のうち回答は832)によると、障害者福祉事業所のうち、「現在農業活動に取り組んでいる」と回答した事業所は33.5%にのぼり、割合は年々増えつつある。

 農林水産政策研究所企画広報室長の吉田行郷氏による「農業分野での障害者の働く場の創出に向けた取組とその農業・農村への影響」(全農林労働組合『農村と都市をむすぶ誌』20168月号)によると、企業による障害者雇用の一形態である特例子会社でも、近年、農業分野に進出している会社が増加しており、201561日時点で422社の8%に当たる32社が農業活動を行っている。企業や生活協同組合が障害者施設を立ち上げ、農業に取り組む例も増えてきているという。

 ピアファームは障害者の賃金を2008年の月額23000円から2014年には約43000円に上昇させた。それだけでなく、地域での雇用の場の創出、耕作放棄地の活用、地域の農作物を直売所で販売し販路を拡大するなど、いまや重要な地域の農業の担い手となっているのだ。

「農福連携」の道も最初の一歩から

「障害者に農業はできるのか」という疑問を覆す事例が数多く現れ始めた。吉田氏によると、「当初は疑問を抱いていたプロの農業者も、まず草刈りから任せてみて、できることが分かってくると、収穫作業や剪定作業も頼むようになり、いまは戦力と認識するようになっている例もある」という。「(1人で全作業をやるのでなく)農作業を切り分け、複数の障害者が、それぞれ得意な作業を行うチームとしての対応は可能」だという。

 上述した2つの農福連携の事例は、単に障害者の居場所づくりや賃金向上だけにとどまらず、周辺の耕作放棄地を引き受けたり、新たな商品を開発したり、地域の農作物の販路拡大に貢献するなどして、障害者が地域の重要な担い手になっていることが分かる。農福連携は大きな可能性を秘めているのだ。

 ただし、一足飛びに農家で障害者の雇用を進めたり、障害者施設が農業活動を本格化させようとするのはハードルが高いかもしれない。「京丸園」の事例では、障害者の農業体験から開始して、作業内容を見直しながら少しずつ雇用人数を増やしている。まずは農業体験から始めて、繁忙期などに障害者施設に農作業を委託してみるという方法もある。上述した香川県や群馬県では農作業の委託のマッチング制度がある。

 一方、農業に参入しようとする障害者施設にとっては、農業技術の習得が課題となる。農業に参入した障害者施設の中には、もともと農業経験者がいたり、農業経験者を雇ったりしている例もあるようだ。農業経験がいない場合は、自治体に専門家派遣の制度がないかを確認したり、地域の農家に指導をお願いするという方法もある。

 まずは、職員が農作業の委託などを通じて農業技術を習得する必要があるだろう。農業分野に本格的に進出する場合は、これら人材の確保に加えて、農地を借りたり、農業関係の補助金を活用するなど設備投資を行う必要も出てくるかもしれない。

 千里の道も一歩から。周囲のサポート体制があれば、障害者は新しい価値を生み出していける存在なのだ。障害者が地域の農家を助け、地域住民と関わっていくことで地域の理解が進んでいく。そんな好循環が生み出されることを期待したい。

  ここで疑問を持たれる方もいるかもしれない。「障害者が農業で儲けるのは難しいのでは」と。

 日本セルプセンターが2013年に行ったアンケート調によると、農業活動をしている施設では、年間売上高100万円未満が46.4%と多いが、1000万円以上も10.2%ある。家庭菜園的な取り組みが多いが、中には本格的に収益事業を行っている施設もあることがうかがえる。

 収益事業として農業に取り組む施設には、認定農業者となったり、6次産業化を進めたりして、地域の農業の担い手となっているところもある。なお、認定農業者になれば、「スーパーL資金」などの低利融資制度や、担い手を支援するための「基盤整備事業」など様々な支援を受けられるメリットがある。

 以下に、農業分野から福祉分野に進出した事例と、福祉分野から農業分野に進出した事例の2つを取り上げてみたい。

事業見直しで収益確保――静岡県「京丸園」

 1つ目は、静岡県浜松市にある「京丸園」。農業法人が障害者を雇用し、業務内容を見直すことで収益を上げている事例だ。

 静岡県内でも有数の規模を誇る水耕栽培農園で、ミニミツバ、ミニネギ、ミニチンゲンサイなどを1年通じて栽培している。「姫みつば」「姫ねぎ」「姫ちんげん」「京丸トマト」などの 濱田健司氏(JA共催総合研究所研究員)の著書『農福連携の「里マチ」づくり』(鹿島出版会)によると、同園の取り組みのきっかけは、求人に障害者が応募してきたことだった。最初は短期間の農業体験だったという。園主の鈴木厚志氏は、「パートさんたちが彼らをサポートしてくれるという、予想もしなかったことが起き(中略)、職場の雰囲気もよくなった。その結果、作業効率が上がった」と述べている。

 その後は“ビジネスパートナー”として定期的に障害者を雇用している。現在、従業員は社員・パートを合わせて60名で、うち障害者22名を直接雇用しているという。鈴木氏は「いままで自分たちがやってきた業務を一つひとつ見つめ直し、何をしているのかを体系化・可視化することで、誰でも農業に参画できるようにした」と話している。

 一部の人の経験や勘に頼っていた農業を、誰にでもできる“ユニバーサル農業”に。同氏は「農園の経営を引き継いだときは、年間の売上は6500万円くらい。(中略)それから20年、障害者を1年に1人ずつ雇用してきて、売上もいまでは29000万円までになった」と語っている。

認定農業者として本格的に営農――福井県「ピアファーム」

 2つ目は、福井県あわら市にあるNPO法人「ピアファーム」。吉田氏の前出記事によると、社会福祉法人「コミュニティネットワークふくい」から2008年に独立する形で設立された。認定農業者となって本格的に営農を行っている。

 設立前は、近隣農家の梨栽培の作業を受託していたが、設立を機に農家から樹園地を借り受けて自ら梨の生産・販売を行うようになったという。その後、ブドウ栽培を開始し、アスパラガス、にんじん、さつまいもなどの野菜の露地栽培やハウス栽培も行い、栽培面積を拡大していった。

 吉田氏によると、「ピアファームの経営耕地面積は2010年には2.7haだったのが、2014年には7.3haまでに拡大している」。さらに、「認定農業者となることで(2011年)、福祉関係の補助金だけでなく、農業関係の補助金、融資も積極的に活用し、耕作放棄地となっている農地を上手く再生して経営面積を拡大している」という。

 ピアファームは155戸の農家と契約して農作物直売所を経営しており、梨やブドウの商品開発、それに観光ブドウ農園の開設など、さまざまな事業と組み合わせることで収益性を高めている。

 同氏によると、2014年度にはピアファームが生産している農作物の総販売金額は2100万円、また農産物直売所などでの販売金額は11000万円だという。現在、25名の障害者、27名の職員を雇用している。

自社ブランドも栽培している。


こんなこともできるんだよという意味でこの記事を紹介した。「農」は、どこへでもくっつくことができる。「農」の利用価値は大きい。「農」の考え方も人それぞれだ。

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