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借りぐらしのアリエッティ『床下の小人たち』

2010年02月05日 | BOOKS
『床下の小人たち』メアリー・ノートン 作 ・ 林容吉 訳/岩波書店

 スタジオジブリの新しい映画『借りぐらしのアリエッティ』の原作です。
(2010年・夏公開予定 <2010.02.08追記>7月17日公開と発表されました。)

 読んでみて、思い出したのは自分の少女時代。
 田舎の村の小さな小さな団地に住んでいて、無口だけれど働き者の父と明るくマメな母がいて……。そんな尊敬し信頼しあっている両親と、その愛情の中で育った私たち。裕福ではなく、本当に「ありあわせ」で「まにあわせ」の生活だったけれど、振り返ってみると幸せだと思える時代。
 『床下の小人たち』は英国のファンタジーですが、どこか「懐かしい時代の家族の姿」を思い出させてくれる作品です。

 正直に言ってしまうと、子ども時代の私はこの作品を、同じように小人が出てくる「コロボックル物語」シリーズ(佐藤さとる 作)と比べて「面白くない作品」と評価していたようで何度も読み返した記憶がありません。今でも子どもたちに「面白いのはどっち?」と聞かれたら「コロボックル」と答えてしまうと思います。
 それでも、今回改めて読んでみてよかった。
 子どもの頃「これは退屈」と思った方も読み直してみてはどうでしょうか?私も、好奇心旺盛で向こう見ずなところのあるアリエッティを心配する両親のことを理解できるようになって、この作品の魅力を発見できたように思います。

 これから読む人にお伝えしたいのは、このシリーズには「5冊続けて読んでこその良さ」があるという点です。『床下の小人たち』を読んで「あまり面白くない」と思った方も是非、少なくとも第2作『野に出た小人たち』まで読んでいただきたい。(私としては、やっぱり5作目まで読んだ方が全体を面白いと感じられるようになると思うのですが。)続きの巻を読んで、それぞれの登場人物の人となりが分かるようになると、退屈に感じた1巻も面白くなるから不思議です。

 『床下の小人たち』の登場人物は、父親・母親と娘のアリエッティ。そして、彼らが借り暮らししている家に住んでいる人間たち。
 「借り暮らし」というのは、小人たちが人間から少しずついろいろなものを借りながら生活することなのですが、シリーズが進むうちに「自分たちの暮らしにないものを外から借りてくる、他人に頼った生活の危うさ」も描かれるようになります。自給自足からかけ離れて、生活必需品の生産さえ海外に任せつつある日本を風刺しているように思えてしかたがありません。

 映画『借りぐらしのアリエッティ』は、舞台が現代2010年の日本になるんだそう。公式サイトに描かれているのは、洗濯バサミで髪の毛を束ね、まち針を腰に差しているアリエッティ。
 野に出るまでの物語ということですから、私が「面白くなってきたぞ」と感じた前の段階で映画は終わってしまうのでしょうけれど、作る側は登場人物の未来(=続きの物語)からもキャラクターを作りこむことができるのでしょうから、きっと細かに魅力的に描くことができるのかもしれません。
 なんといっても登場人物が小人ですから、その目線から見た景色・人間の使っている道具などがどう見えるのか、ジブリのアニメーションならではの美しい映像を見るのが楽しみです。

<リンク>
映画「借りぐらしのアリエッティ」 公式サイト - スタジオジブリ

<参考>
 メアリー・ノートンの「小人たち」シリーズは5冊。
2冊目からの英語の題名「The Borrowers 」(=「借り暮らし」)に続く形容詞が、みんな「A」で始まっているところが洒落ています。
 1.『床下の小人たち』  「The Borrowers 」
 2.『野に出た小人たち』 「The Borrowers Afield 」
 3.『川をくだる小人たち』「The Borrowers Afloat」
 4.『空をとぶ小人たち』 「The Borrowers Aloft」
 5.『小人たちの新しい家』「The Borrowers Avenged」
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