菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

血肉が皮肉で出来ている。  『笑う故郷』

2017年10月17日 00時00分48秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1171回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『笑う故郷』

 

 

 

『ル・コルビュジエの家』の奇才マリアノ・コーン&ガストン・ドゥプラット監督が、アルゼンチン出身のノーベル賞作家が40年ぶりに帰郷した小さな田舎町で、歓迎ばかりではない濃密な人間関係の渦中に呑み込まれていく悲喜劇の行方を描いたブラックコメディ・ドラマ。

 

主演は本作の演技でヴェネチア国際映画祭主演男優賞に輝いたオスカル・マルティネス。

 

 

 

物語。

アルゼンチン出身の作家ダニエル・マントバーニは、ノーベル文学賞を受賞する。

それから5年の間、新作を発表せず、スペインの自宅で隠遁生活を送っていた彼のもとに、自作の舞台にし続けてきた故郷の田舎町サラスから、名誉市民の称号を授与したい旨の招待状が届く。

ダニエルは、40年ぶりの帰郷を決意する。

 

脚本は、アンドレス・ドゥプラット。

監督のガストン・ドゥプラットの実兄で、今作は 『ル・コルビュジエの家』に続く3人のコラボレーション作品。

 

 

 

出演。

オスカル・マルティネスが、作家のダニエル・マントバーニ。

ダディ・ブリエバが、古い友人のアントニオ。
アンドレア・フリヘリオが、元恋人のイレーネ。

ノラ・ナバスが、ヌリア。

 

 

スタッフ。 

製作は、フェルナンド・ソコロビッチ。
製作総指揮は、ヴィクトリア・アイゼンシュタット、エドゥアルド・エクスデロ、マヌエル・モンゾン、フェルナンド・リエラ。


撮影は、マリアノ・コーン、ガストン・ドゥプラット。

共同監督でどちらも撮影を務めるのは、ドキュメンタリーもコンスタントに作っているからかも。

 

音楽は、トニ・M・ミル。

 

 

 

 


ノーベル賞作家が40年ぶりにアルゼンチンの田舎町に帰郷する悲喜劇。
ヴェネチア映画祭で主演男優賞受賞などプライズハンター。
言葉で立つオスカル・マルティネスの立体感に打ちのめされる。都会セレブ描写から生々しい田舎描写で笑いと悲しみと恐しさで試される。分厚い皮肉に鞣される。文学的構成からの濃厚な映画的展開で召される。
キャストの生っぽさの居心地の悪さが心地よい。
芸術性と大衆性の相性と愛憎。ある意味で、B+級。
リアルと虚構の境目を行間に潜ませる肉作。

 

 

 

おまけ。

『EL CIUDADANO ILUSTRE』。
『THE DISTINGUISHED CITIZEN』。

どちらも『名誉市民』。

2016年の東京国際映画祭の際の邦題は、『名誉市民』。

 



上映時間は、117分。
製作国は、アルゼンチン/スペイン。

 

 

受賞歴。

2016年のヴェネチア国際映画祭にて、主演男優賞をオスカル・マルティネスが、受賞。

2016年のアルゼンチン・アカデミー賞にて、主演男優賞(オスカル・マルティネス)、助演男優賞(ダディ・ブリエバ)、オリジナル脚本賞(アンドレス・ドゥプラット)を、受賞。

 

 



キャッチコピーは、「まったく人間って奴は――」。

 

 

 

 

 

アルゼンチンでは、映画と同時に小説『EL CIUDADANO ILUSTRE』がダニエル・マントバーニ著として、出版されている。

 

 

 

マリアノ・コーン、ガストン・ドゥプラットは、ドキュメンタリー出身で、日本公開の2作以外でも、フィクションを数作制作している。

『Querida voy a comprar cigarrillos y vuelvo』(2011)
『El artista』(2008)
『Yo Presidente』(2006)

この3作もぜひ見たいなぁ。

次回作は、アルゼンチンのBBQについてのドキュメンタリー『Todo sobre el asado』 (2016) だそうです。

 

 

 

 

ネタバレ。

田舎がいいものという話は日本では多いが、海外では田舎が怖い話もかなり多い。

日本でも知られた作品では、故郷ではないが『ホットファズ』も同種のブラックコメディ・アクションだった。

で、『幕末太陽傳』の幻のエンディングを思い出したり。

 

 

ノーベル賞受賞スピーチで皮肉を言ったように、マントバーニは、完全に権威側に自分がなったことで何も書けなくなった。

劇中で言ったとおり、若い頃は怒りこそが創作の原動力だったが、受賞後はどうしてもフラットに不幸は創作の原動力にはなりえないと言ってしまう。

表面では悪態をつきつつも、支援を裏でしたり、市長に気を使ったりする。しかし、若い子に言い寄られれば、抱くし、批判には反撃する。

その背反が彼を創作から遠ざけている。

しかし、帰郷による怒りが彼に創作のエネルギーを取り戻させる。

憎いけど、その憎い故郷がなければ、彼は創作できない。

 

絵画のコンクールに、ホテルの受付の青年の小説への評価とで、彼自身がただたんに偏狭になっているわけでないのを示す。

 

 

 

 

 

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