菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

熱き1トンの血流   『エグザイル/絆』

2009年01月18日 00時01分36秒 | 映画(公開映画)
で、ロードショーでは、どうでしょう? 第34回。



「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」



『エグザイル/絆』




ようやく観れたジョニー・トーの新たな代表作。
新作と言うには、はばかれる06年作品なんだけど。
この後に、すでに、もう数本撮ってるみたいそう。


非公式だけど『ザ・ミッション/非情の掟』の続編。
正確には、姉妹編いや、あえて、兄弟編と書きたい。
『ザ・ミッション/非情の掟』だけでも、『エグザイル/絆』だけでも観れる単独作品なのよね。
『ザ・ミッション』が、どこかリアルさを透徹していたのだけど、『エグザイル』は、そこにファンタジー成分含まれている。
なんというか、香港ノワール成分が前面に出ているのよ。
おいらは、鈴木清順的な抽象性があるといった感じを受けた。
でも、リアルさは、あるシーンで儀礼の仕方が実際の黒社会のものと同じだということで、カットを命じられたほどだしね。
いわば、そのバランスが絶妙なのよ。
水墨画のようにそぎ落とされたとでもいおうか。


傑作『ザ・ミッション』のパラレル作品でありながら、こちらも同レベル以上の傑作に仕上がっていて驚かさせるし、ジョニー・トーの充実度に目を見はらされる。
おいら、ことあるごとに、現在アジア・ナンバー1監督は、アン・リーだといってきたが、彼を西の横綱、ジョニー・トーを東の横綱と言い換えたい。

プロフェッショナルで、友だからこその阿吽のコミュニケーションのかっこよさは、健在。
いや、より深まっている。
ある意味、男という生き物を描ききった作品。


説明は極力省かれ、映像とアクションがすべてを語る。
銃撃戦は、ジョニー・トー・スタイルの極みへ達している。
香港ノワールの火は、ここに今、燃え盛った。
しかも、ジョン・ウー的なバレエをするのは、人間ではなく、撃たれる物の数々。
撃たれた空き缶が、ドアが、吹き出す血が踊るのだ。
弾丸も無限じゃないしね。
待つ時、歩く時のそこはかとない距離、言葉でなく通じ合う呼吸、

シャレードの使い方も


多くはないセリフがお互いの心をズシンと伝える。
「どこに行く?」が、すべては集約している。
この悲しさ、可笑しさ、切なさ、厳しさたるや!


しかも、コレが脚本無し(とはいえ、脚本に3人クレジットされているが)で、すべて即興で撮られたというのだから、恐れ入る。
なのに、ひたすら回してみるウォン・カーワァイ・スタイルでもなく、けっこう固めに撮影され、未使用シーンはあまりないんだってよ。
それどころか、監督の役者に演出してないシーンも結構あるそうだし、浮かばなければ、撮影止めたりしてたそう。
まさに、ジョニー・トーがいれば、それはジョニーとー映画になるが体現されている。
なにしろ、これは、ジョニー・トーが大作2部作『エレクション』の後で、映画を愛せなくならないようにと、撮った作品だと言っているのだから。
ある意味では、香港スタイルの伝説がまた生まれたってことだろう。



『エレクション』2部作も、さっそく観ようっと。
と、思ったら、『エレクション2』は、ソフト化されてないんだと・・・。
『エグザイル/絆』の高評価、ヒットで、ソフト化されるといいなぁ。
まだ公開が決まってない『文雀』とかも。



新しくも懐かしい。
70年代アクション的でありながら、圧倒的に00年代の映画になっている。
自由なのに、整った形。
彫刻家が石から石が元から持っていた形を彫り出したと、たまに言うが、まさにそんなような。

プログラムのインタビューで、ジョニー・トーは、
「映画館での100分間、ロマンという視点から見てほしい。」
「楽しんで欲しいだけで、あまり多くを覚えてくれなくてもいい。」
と語っている。
娯楽映画の潔さがそこにはある。


物語の飽和が囁かれているが、21世紀にも、また新たな映画の道が拓かれる可能性さえ感じさせる快作。
アクション好きは、睡眠時間を削っても行くべき。
観てグッと来たら、『ザ・ミッション/非情の掟』も、ぜひ!
香港だけでなく、世界を牽引する映画の巨人の双肩を味わない手はないよ。
いやいや、漢を知りたければ、いや、男だったら、観て損はないと言い切ってやる。

ビルからずどんと落ちてきた1トンの塊ともいうべきドラマですぜ。





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