菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

1人+1人=独り    『天使の涙』

2009年09月24日 00時02分12秒 | オレは好きなんだよ!

【俺は好きなんだよ】第172回

 

『天使の涙』(1995)
 
 
原題は、『堕落天使』。英語題は、『FALLEN ANGELS』。
『恋する惑星』の第3話としてあった物語を拡大。姉妹編となっている。


スタッフ。
監督:ウォン・カーウァイ
製作:ジェフ・ラウ
脚本:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイル
美術:ウィリアム・チャン
音楽:フランキー・チェン/ロエル・A・ガルシア
  
 
出演。
レオン・ライ
ミシェール・リー
金城武
チャーリー・ヤン
カレン・モク


物語。
そろそろ足を洗いたい殺し屋とそのパートナーである美貌のエージェント。
仕事に私情を持ち込まないのが彼らの流儀で、二人は滅多に会うことはない。
しかし、その関係が揺らぎつつあるのを2人は知っている。
エージェントが根城とする重慶マンションの管理人の息子モウは5歳の時、期限切れのパイン缶を食べすぎて以来、口がきけなくなった。
定職に就けない彼は、夜な夜な閉店後の他人の店に潜り込んで勝手に“営業"する。
時に強制的にモノやサービスを売りつけるが、いたって明るく屈託がない。
ある日、彼は失恋したての女の子に出会って初めての恋をする。
しかし、彼女は失った恋人のことで頭がいっぱいで、彼のことなんか上の空だった。
一方、殺し屋はちょっとキレてる金髪の女と出会い、互いの温もりを求める。彼と別れた金髪の女とエージェントは街ですれ違いざま、互いの関係を嗅ぎ当てる。
エージェントは殺し屋に最後の仕事を依頼した・・・。



スタイリッシュを越えて、映像の特殊なスタイルを物語のテーマにまで近づけようとした実験作ともいえる挑戦作。
それを象徴するのは、全編にわたる極端な超ワイドレンズの使用。
他にも、露出オーバー、直線的なはずなのに浮遊感のある時間軸、コマ落とし/コマ伸ばし、音楽の使用方法・・・。


当初、3話構成のはずであった『恋する惑星』の入らなかった第3話のアイディアを発展させたもの。
カーウァイは「同じスピリットから生まれたもので、続編ではない」と発言している。


ある意味では、カーウァイ作品の過剰な模倣作品にも見える。
ゆえにカーウァイにあこがれた他の作品が、『天使の涙』のようになっているのを当時はよく見かけたものだ。
その一本がウォン・カーウァイが製作もした『初恋』。(実は、おいらはこちらの方が好み)
しかし、それらと一線を画すのは、そのモノローグの詩的さ。
けれども、詩は、波長の一致が無ければ、意味不明にさえもなりうる。
そこをぎりぎりのところで支えるのが、クリストファー・ドイルとウィリアム・チョンの美術。
それを実感させられるのが、『ブルベリー・ナイツ』の甘ったるさ。
カメラマンは、。
かの名カメラマンでさえも、彼の詩を支えるには、少々、紗が強すぎたよう。

だが、その波長があったものには、カルテと処方箋にも匹敵する。
痛みは増すクスリかもしれないけどね。
そして、こぼれる涙。


スタイリッシュを突き詰めた先には、泥臭さがあった。
切れば血が出るようになったウォン・カーウァイの骨を観よ。






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