悶茶流的同性愛小説

小説を書く練習のためのブログ。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

大吾の思い出 その34

2011年01月12日 | 小説 「大吾の思い出」
クリスマスの三日前。手術から一週間が過ぎ、ついにおばさんの意識が戻った。
とは言うものの、まだ目を開けられる程度で、はっきりとした意識があるわけじゃないらしい。
先輩は学校へ登校するようになったが、放課後の部活は休んで毎日病院へ通っていた。
マメ柴と真知子先輩も、二人では何も出来ないということで、自ずと部活は休んだ。
俺は暇になったマメ柴と毎日一緒に下校するようになった。

「ねえ新ちゃん、クリスマスさ、僕らで何かやらない?」

「何かって?」

「クリスマスパーティーとか、プレゼント交換とか」

「おいおい、俺とマメ柴でパーティーしてプレゼント交換すんのかよ」

「何言ってんの、大吾先輩も誘うに決まってるじゃん!」

「先輩は真知子先輩のパーティーも断ってたし、
おばさんもまだ入院中だし、クリスマスどころじゃないだろ、たぶん」

「真知子先輩はちょっと強引なんだよ。知ってる? この間あんなハッキリ断られたのに、
また大吾先輩を誘ってたんだよ? クリスマスは駄目でも、イブの夜はどう? って。
僕のことはあんなあっさり却下したのにー!」

「でた僻みっ! ――で、どうなったんだ?」

「またハッキリ断られてた!」

俺は思わずその場面を想像して笑ってしまった。
マメ柴もつられて笑う。

「とにかく、豪華なパーティーじゃなくていいしさ、プチパーティー?
先輩の家とか、新ちゃんの家とか、僕の家はちょっと遠いから難しいけど、
誰かの家で集まって、一緒にケーキ食べて、ささやかなプレゼント交換しようよ。楽しいと思うよー!
大吾先輩にはプレゼンとのことは内緒にして、サプライズにするとか!」

悪くないと思った。
俺は今までクリスマスにはほとんど興味がなくて、親が買ってくるケーキや、
玄関に飾られる小さなツリーを見て、ああ、クリスマスの季節なんだな、と思う程度だった。
もちろん小学生の頃にクラスの何人かでプレゼント交換をしたことはあったけど、
ワクワクするような気分にはならなかった。でも、サプライズのプレゼントはなかなか良いアイデアだし、
大吾先輩とマメ柴が一緒なら楽しくなりそうだ。

「そうだな、いいかもな」

「でしょー!? そうと決まれば、クリスマスまでもう三日しかないから、
さっそく明日一緒にプレゼント買いに行こうよ!」

「わかった」


++++++++++


翌日、俺はマメ柴の提案を電話で先輩へ告げた。
プレゼント交換のことは内緒にして、俺か先輩の家で集まって、一緒にケーキを食べようということだ。
相談の結果、プチパーティーはイブの夜に俺の家ですることになり、母さんも父さんも快く承諾してくれた。
放課後、俺はマメ柴と一緒に駅前のショッピングモールへ出向き、プレゼントを探した。
お互い別行動で、それぞれのプレゼントを買う。まずはマメ柴のプレゼントだ。
俺はマメ柴が喜びそうな物を必死で考える。なかなか思いつかない。
雑貨屋、おもちゃ屋、本屋、文具屋を見て周ったけど、目ぼしいものは見つけられなかった。
仕方ない、先輩のプレゼントを先に買おう。先輩のやつならすでに決めてある。
俺は母さんから前借りしたお年玉を握り締めて、ある物をレジへ持って行き、
会計の時にプレゼント用のラッピングをしてもらった。先輩、喜んでくれるといいな。
そのとき不意に、マメ柴へのプレゼントを閃いた。小豆色の……犬の……トレーナー……。
俺は前に先輩と入った服屋にダッシュする。しかし、犬のトレーナーはどこにも見当たらなかった。
あんなダサい服誰も買わないだろ常識で考えて! 何でないんだよ! うぅ…まいったな……。
ゲンナリしてると、愛想の良い女性店員が「よかったら試着してくださいね」と声をかけてきた。
最後の手段、店員に訊くしかない。

「あ、あのー、前にここら辺で、小豆色の犬のトレーナー見たんですけど、あれってもう売り切れたんですか?」

「小豆色の犬のトレーナー?」

「真ん中にでっかい犬の絵がプリントされてるやつです」

店員は顎に手を当ててしばらく考えると、

「ああっ! あれね! あそこのワゴンの中にありますよ」

店員の指差す方向を見ると、レジ前のワゴンの中に薄っすらと小豆色が見えた。
ワゴンには「クリスマス500円セール!」と書かれた大きなポップが貼られている。

「ありがとうございます!」

俺は宝の山を見つけた海賊のようにワゴンに飛びつく。
ワゴンの中には、サイズ違いの犬のトレーナーが全部で7着もあった。
デザイナーもデザイナーだけど、どんなセンスのバイヤーがこれを仕入れたんだよ。
心の中で毒づきながらSサイズを探し当てた。これでよし。
他にも目を見張るようなダサい服がワゴンの中でひしめき合っているのを見て、ふと思いつく。
俺と先輩の分も買おう。全員分買ってもたったの1500円だ。
三人でこのダサ犬トレーナーを着たら、三馬鹿兄弟みたいで面白いだろうなぁ。コントができそうだ。
俺は思わずニヤけてくる顔を必死で真顔に戻しつつ、さっきの女性店員に頼んだ。

「あの、これ買いたいんですけど――」

「はい、ありがとうございます」

「ちなみに、この服、一個一個プレゼント用に包んでもらうことできますか?」

「えっ? このトレーナーですか?」

女性店員はにこやかな顔から、急に半笑いの下品な顔をした。
まるで、『こんなダサい服を三つも買うのもなんだけど、
それをわざわざ一個一個プレゼント用に包まなきゃなんないの? あたし』とでも言いたげな顔だ。

「すいません、お願いします」

「は、はい。かしこまりました」

女性店員は下品な笑いを浮かべたまま、値段のタグを外し、綺麗に畳んでラッピングしてくれた。
俺は恐縮しつつそれを受け取ると、マメ柴と待ち合わせしてる場所に向かった。
時間を確認すると、待ち合わせから30分以上過ぎていた。

「わりぃ! 遅くなった!」

「ほんとに遅いよー! もう! で、プレゼントはOK?」

「おう! OK!」

「おう! じゃあ帰ろっか、新ちゃん!」

「うん」

「あっ、そうだ。今度のプチパーティーのことは、マチ先輩には内緒だよ。
あれだけ断られたのに、大吾先輩が僕達とパーティーやるって知ったら怒るでしょ」

「わかった」


++++++++++


そしてクリスマスイブがやってきた。
学校を終えて家へ帰ると、部屋中に香ばしい匂いが充満していた。
キッチンのテーブルの上にでっかいサラダボールが置かれ、
冷蔵庫の中にシャンメリーやコーラが入っている。母さんはルンルン気分で料理を作っていた。
プチパーティーは夜の7時から始める予定だ。俺は自分の部屋へ戻り、服を着替えてプレゼントを確認する。
先輩のプレゼントとマメ柴のプレゼント。よし、問題ない。俺は自分がワクワクしてることに驚いた。
こんな楽しみなクリスマスは初めてかもしれない。
しばらくするとマメ柴が家へ来た。出迎えたコロンを腕に抱えると、コロンは嬉しそうにマメ柴の顔を舐める。
次に大吾先輩が来た。母さんと先輩が顔を合わせるのはこれが初めてで、母さんは先輩を一目見るなり興奮して、
「新太郎の話で聞くよりずっとハンサムじゃないの」と目をギラつかせて連呼した。そうこうしてるうちに7時になり、
母さんを含めた4人で食事を始めることになった。父さんは仕事で帰りが遅くなるらしい。
みんなでキッチンへ行くと、一見華やかで豪華な料理が並んでいた。
でも……よく見るとそれは――

「……って、鶏肉ばっかじゃん!」

「はぁ? 何よ、ちゃんと鳥の丸焼きもあるじゃない。丸焼きでしょー、唐揚げでしょー、ドラムスティックでしょー、
ナゲットでしょー、照り焼きにパスタサラダまであるのに、何贅沢言ってるのよあんた」

「いやいや、そういうことじゃなくて、鶏肉すぎるだろこれ」

マメ柴と先輩は笑っていたけど、俺は何だか恥ずかしくなった。
何でよりによって全部の料理を鶏肉で作るんだよ。
しかも、揚げたり焼いたりしただけの物に、市販のソースをつけて食べるだけって。

「大丈夫だよ新ちゃん、美味しそうじゃん」

「そうよねえ、マメ柴君の言う通りよ。ビックリするわぁ、こんなに手間かけて揚げまくったのに文句言われるなんて」

「俺も鶏肉は好きだよ」先輩まで母さんの味方をする。

「お腹すいたよ、食べよ食べよ!」と、マメ柴。

グーの音もでないまましぶしぶ席に着くと、俺たちはシャンメリーで乾杯して鶏肉を食べた。
料理は思いのほか美味しくて、味もそれぞれ違っていたせいか、飽きがくることなく食べられた。
料理を食べながら、母さんは先輩にいろいろと質問をした。おばさんのことや、これからのことだ。
先輩はまだ先のことはわからないけど、何とかなると思う、と曖昧な答えを返した。
食事を終えると、片づけをみんなで手伝ってから俺の部屋へ移った。コロンも一緒だ。
先輩は俺の部屋に入るのも初めてで、ベッドに寝転がったり、
ペン立てに入ったクロッキー用の鉛筆を手に取って眺めたり、棚に置いてある置物や写真まで、
じっくりと観察するように部屋中を見て周った。それからもう一度ベッドに寝転がり、
「子供の頃からずっとここに住んでるのか?」と訊いた。
俺は小学2年の時にこの家へ越してきたことを先輩に告げた。
先輩は感慨深そうに「それから新太郎は、ずっとこの部屋で育ってきたのか」と呟いた。
その時、タイミングを見計らったマメ柴が、

「新ちゃん、そろそろ始めよっか!?」

「おう!」

マメ柴はショルダーバッグの中からプレゼントの包みを取り出す。
俺も箪笥の中からプレゼントの入った紙袋を取り出した。
すると、ベッドから起き上がった先輩が驚いたように、

「もしかして、クリスマスプレゼントか?」

「そうです!」

「ああ、そうか。俺も一応買ってある」

「「ええっ!?」」

俺とマメ柴は双子のように声を合わせて驚いた。
先輩にはプレゼントのことは何も言ってなかったはずなのに。
先輩はショルダーバッグから徐に二つの包みを取り出した。
ひとつは小さな包みで、ゴルフボールくらいの大きさしかない。
そしてもうひとつ……俺はその包みを見たとき、びっくりして声が出そうになった。
先輩が手に持っているもうひとつの包み紙に見覚えがあったからだ。
それだけじゃない、包みの形や薄さからして、明らかにそれは……俺が買ったものと同じように見える。

「うわぁー! 先輩ありがと! 僕らにもプレゼントもって来てくれたんだ!」

マメ柴が先輩に抱きつき、コロンも嬉しそうに吠えながら先輩に飛びついた。

「あのー、先輩……これ、先輩へのプレゼントなんすけど……」

俺は恐る恐る紙袋の中からプレゼントを取り出した。
やっぱりそうだ。同じ色の、同じ柄の包み紙。

「あっ、それ――」

「なにそれ新ちゃん、見た目先輩のと同じに見えるけど」

先輩は俺の手から包みを受け取ると楽しげに笑って、

「もしかして同じ物買ったのか?」

「たぶん、そんな気がする……」

先輩は包みを開いて中を見た。

「マッチボックストゥエンティー、モアザンスィンクユーアー。ははっ、やってくれるな、新太郎」

そう言って先輩は、俺に自分の包みを手渡した。
中を開くと、まったく同じマッチボックス20のCDアルバムが入っていた。

「ええー!? 二人して同じプレゼント買ったの!? 何その奇跡!」

俺は嬉しいような、残念なような、何だか複雑な気分だった。
ちなみに、先輩はマメ柴にシルバーの犬型バッヂをプレゼントした。
バッヂの犬はポメラニアンで、可愛いと言うより格好いい見た目で、何よりお洒落だった。
それに、コロンは雑種だけど、見た目はポメラニアンの血が入ってるように見えるから、マメ柴は尚更喜んだ。
しかし、犬の物、という点で、またしても俺と先輩は被っている。
俺は半ばヤケクソで犬のトレーナーが入った包みをマメ柴に渡した。
マメ柴は嬉しそうに「何かなぁ?」と言いながら包みを解いた。

「あっ! 服だ! ありがとー!」

マメ柴が服を持った両手を広げ、トレーナがその全貌を現す。

「うわぁー! えっ…? かっ……かっ……かわゆ、す、なぁ~……」

マメ柴の笑顔が完全に引きつっていた。俺はすかさず先輩の顔を確認する。
先輩は瞬きひとつせず、マメ柴の手に握られたトレーナーを見て唇をプルプル震わせていた。

「その服すごくいいだろぉ!? 一発で気に入ってさぁ、絶対マメ柴に似合うと思うんだ!」

「ほ……ほんと、この犬の絵、すごく……かわいいねえ……」

いやいや、全然思ってねえだろそんなこと。
心の中で悪魔の笑みを浮かべながら突っ込む。

「さっそく着てみてくれよ!」

「う……うん」

マメ柴はその場でトレーナを着た。
何だよ、意外と似合ってるじゃないか……白けるなぁ。
先輩も笑いがひと段落したようで、疲れたような笑みを浮かべている。

「そういやさ、そのトレーナーすごく気に入ったから、俺と先輩の分も買ってきたんだ。
おそろいだよ、おそろい! はいこれ、先輩のぶん!」

俺は先輩のトレーナーが入った包みを取り出して渡す。
それを受け取った先輩は「バカ」と言って、笑いながら包みで俺の頭を殴った。

「いてっ! ちょっ! 先輩この服好きでしょ!? クリスマスセールで500円だったしお買い得じゃん!」

「おい新ちゃん! 僕のクリスマスプレゼントって500円のセール品なわけ!? 先輩にはCDあげたのに!?」

「マメ柴、新太郎はこの服がダサいってわかってて、わざとお前に買ってきたんだぞ」

「あーっ! 寝返りやがったな先輩! だいたい先輩が――」

「マジで引くんですけどぉー! 新ちゃん最悪だねー!」

「ほんとだな。新太郎、お前は最悪だ」

「ちょっ! ええぇー!?」

そんなこんなで、馬鹿みたいなやり取りをしたあと、最後にマメ柴のプレゼントをもらった。
マメ柴は何を考えてか、俺と先輩に同じ物を揃いでくれた。
それはブリキで出来たレトロなデザインの小物入れだった。
手のひらサイズの長方形で、蓋を開けると中にキャンディーが一つ入っていた。
俺は手のひらに乗せた小物入れを先輩と眺め、何とも言えない幸せな気分になった。
ありがとう、マメ柴。ずっと大事にするよ。先輩もすごく嬉しそうだった。
それから俺たちはケーキを食べて、プチパーティーをお開きにした。
(三馬鹿トレーナーを着ての記念撮影もあった)


++++++++++


夜の10時前ということで、先輩とマメ柴のことを母さんが車で送ってくれることになった。
先にマメ柴を送った後、俺は先輩の家へ向かう車の中で母さんに尋ねた。

「母さん、今日先輩うちに泊まってもいい?」

「別に構わないけど、鈴木君は大丈夫なの? 明日も学校でしょ?」

俺は後部座席の先輩を振り返り、「大丈夫っすよね? 先輩」
先輩は少し戸惑ったような表情を浮かべ、無言でうなずいた。

「大丈夫だってさ。このまま先輩の家まで行って、着替えとか明日の準備とってきて、うちへ引き返そう」

泊まる準備を終えた先輩と自宅へ戻ると、母さんが俺の部屋に布団を用意してくれた。
それから俺たちは交互に風呂に入って、部屋の中でマッチボックス20のアルバムを一緒に聴くことにした。
二人で並んでベッドに持たれかかり、先輩が俺の肩に腕を回す。
寒いから首まで毛布をかけて、一つのイヤホンを二人で共有した。
コードの長さが充分じゃないせいで、自然に顔が近づく。
俺は思い切って先輩の首筋に顔をもたれさせた。先輩も俺の方へ少しだけ顔を傾ける。
そうやって一緒に、俺が一番好きな曲の「Soul」を聴いた。
先輩も気に入ってくれたのか、歌詞カードを見ながら何度もリピートして曲を聴いた。
俺は急な眠気に襲われ目を閉じた。右耳からは曲が聴こえ、左耳には先輩の呼吸が聴こえる。

「先輩……眠くないですか?」

「そうだな、そろそろ寝るか」

「はい。俺携帯のアラームセットしてて、いつも7時に起きるんですけど、それでいいですか?」

「あぁ、それでいい」

「寒いから一緒に寝ましょうよ」

俺はまどろんだ意識のまま、返事を聞かずに自分のベッドから毛布と掛け布団を引っ張った。
ついでに枕も取る。そしてそのまま、シングルサイズの敷布団の上に先輩と一緒に横になった。
体が半分くらい絨毯の上に出てしまうけど、別にかまわない。先輩の体が温かくて心地良い。
俺はいつの間にか眠りに落ちた。



つづく。
『小説』 ジャンルのランキング
コメント   トラックバック (1)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 大吾の思い出 その33 | トップ | 大吾の思い出 その35 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
バレンタイン (バレンタイン)
寒い日が続き、家の中に籠っているという人も多いのでしゃないでしょうか?