ヴィンチェンツォ・ベッリーニが作曲した歌曲「優雅な月よ」は優美で抒情的な旋律を生かした名曲である。2月7日この曲をAOI音楽館で歌うことにしているが、ベッリーニについては、あまり知らないので調べた。彼は1801年にシチリア島のカターニアで生れ、パリ近郊で没したクラシック音楽の作曲家である。オペラの作曲家として有名であり、ロッシーニやド二ゼッティと共に19世紀前半のイタリアオペラ界を代表する天才であった。父親も祖父も音楽家であり、音楽を学ぶ前から作曲を始めたと云う神童であったと云う。しかし彼は34歳の若さでパリで亡くなっている。
彼は18歳でナポリの王立音楽院に入学し、24歳のとき音楽院内で公演されたオペラの処女作『アデンソンとサルヴィーニ』が認められ、その後『海賊』等、幾つかのオペラを書いている。1831年30歳のときオペラ『夢遊病者の女』をミラノで発表、大好評を博しているし、同年オペラ『マノン』1835年1月にはオペラ『清教徒』をパリで発表している。この『清教徒』を演奏してから、9ヶ月後の9月23日34歳の若さでこの世を去っている。彼が残したオペラ作品は11曲で、全て優美で繊細な旋律のオペラで、「オペラのショパン」と称されているとあった。その多くは今でも演奏されている。べッリーニの肖像からも、優しく品のある顔であるが病弱な印象は拭えない。
彼はオペラ以外、幾つかの歌曲を残しているが、その大部分は死んでから「遺稿」として発見されたものと云われている。この歌曲「優雅な月よ」もその一つである。こんなに美しい曲なのに、どうして生前発表しなかったのかと思うが、34歳の若さで病死してしまったことからその意図は分らない。しかし、この曲はべッリーニがナポリの王立音楽院に在学中だった1824年頃(23歳)の作と云われている。≪夜空に浮かぶ月を眺めながら恋人を思う気持を心を込めて歌う曲で≫。甘く優しく、ゆったりとした旋律は誰もが共感できる歌であると思う。
私が、この曲を聞いたのは、まだ半年ほど前のことだったが、直ぐこの曲を歌いたいと思った。それはイタリア歌曲にない美感覚があった。彼が生れたシチリア王国はイタリア的色彩が強い国だと思った。現在シチリアはイタリアの一部であるが、この優美で繊細な曲はそれとは全然違うものに思えた。聴けば聴くほど、この曲にのめり込んでいった。今回歌うが、この素晴らしい旋律の流れを止めないよう滑らかに歌い上げたいものだと思う。それが叶うか分らないが頑張るつもりだ。