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今年も欧州車の勝利に終わった、AMAスーパークロスレース

2016-05-09 08:39:14 | モータースポーツ
2016年1月9日に開幕したAMAスーパークロスレースは、第17戦5月7日の最終戦ラスベガスをもって終了した。
今年のチャンピオンは欧州のKTMのワークスライダーR.Dungey選手で、全17戦中、実に9戦を一位となって圧倒的に強さでのチャンピオン獲得だ。最終戦、ラスベガスは突然の豪雨で路面状態は最悪だったが、それでも優勝し、雨にも強いKTMを見せつけた。
  「READY TO RACE - KTM」
    450SX
    1. Ryan Dungey (KTM) , 366
    2. Ken Roczen (SUZ) , 331
    3. Jason Anderson (HUS) , 293
    4. Eli Tomac (KAW) , 270
    5. Chad Reed (YAM) , 232
    6. Cole Seely (HON) , 219
    7. Marvin Musquin (KTM) , 214
    8. Justin Brayton (KTM) , 200
    9. Trey Canard (HON) , 196
    10. Jacob Weimer (SUZ) , 128


ところで、第1戦の優勝はHusqvarnaワークスライダーの J.Andeson選手が獲得し、2位はKTM ワークスのR.Dungey選手で幕を開けたシリーズだったが、初戦に勝ったHusqvana車は約40数年以上前にアメリカのプロモトクロスレースから撤退しており、昨年度から本格的に参戦した、ある意味新参のチーム。しかもライダーJ.Anderson は一昨年まで250クラスで戦っており、450クラスの本格参戦は今年2年目だが、その初戦の450ccメインレースで優勝だ。こうしてみると、一般的に眼の前に浮かんできた事は、HusqvanaやKTMって、すごいバイクなんだと思ってしまう。また、HusqvarnaとKTMは兄弟企業であり、KTMの親会社はインド財閥のBaja社で二輪の生産販売も手掛けている有名企業。結局、シリーズでの上位10位のマシンを見ると、KTMが3車、Husqvanaが1車で計4車をKTM系列が占め、残りを日本二輪企業で分け合うと言う結果となった。これで、モトクロスを筆頭とするオフロード車のカテゴリーでは、かっての王者だった日本メーカーを蹴散らした、欧州マシンの頂点が揺るぎないものとなり、名実とともに、欧州社の優秀性を示す結果となった。

KTMと言えば、モトクロス専門誌「Motocross action」誌に、「2016 MXA 450 SHOOTOUT: CRF VS. FC VS. KX-F VS. SXF VS. RM-Z VS. YZ-F」として、全米で市販されているモトクロスバイク6車の性能比較でも、一番マシンは欧州のKTM 450SXFで「It should win, and it did win」という最大限の評価を得ている。二番目は同じく欧州のHUSQVARNA FC450。しかも、 KTM 450SXFは2016年だけでなく、 2010, 2011, 2015 のベストマシンでもあり、ここ2年連続を含む4年、このクラスのベストマシンだと評価されてきた。こうして見ると、モトクロスの世界の頂点に立つのはごく自然の道だったのかもしれない。

前にも書いたが、モトクロスのバイクは二輪の原点の一つである競争するために、そのレースに勝つためだけに、開発販売されるマシンだから、技術的合理性にそって設計されている。本来、技術的合理性の追及は日本の二輪企業が得意とするところで、その技術的優劣を競うレースに勝つことで、日本企業は、その優秀性を世界中に認知されてきた歴史がある。その日本企業が左程の規模にない欧州企業に頂点を奪われ続けて4年、モトクロスバイクを開発しつづけた日本の優秀な技術者達は悔しくないのだろうか。一般的なオンロードバイクは3年もしくはそれ以上の期間を置いて大変更される事が多く、各社の谷間に販売された最新バイクはベストバイクになることが概して多いのと違い、モトクロスバイクは勝つために毎年、大変更もしくは小変更なりの改良をされて市販されるので、毎年各社の取組や技術力が問われる。ましてやモトクロスバイクの大市場である、アメリカ市場に焦点を合わせて開発されているので、雑誌社の評価ライダーも真剣になって甲乙をつけざるを得ない。そんな厳しい環境で、KTM 450SXFの優秀性が証明された。

ちなみに、二輪の大市場でもある、米国の最近の二輪販売台数傾向は2014 U.S. Motorcycle Sales Totals によると、下記のようになっている。
           
ストリートバイクの絶対量(334千台)が一見多いように見えるが、Harley-Davidson Reports 2014 Fiscal Resultsによると、ハーレー社がその1/2弱(171千台)を米国で販売しているので、残りのバイク販売量枠は163千台しかなく、この数を日本と欧州各社がシェア販売するのに対し、オフバイクの販売量81千台は日本各社とKTMとHUSQVARNA社がほぼ独占。しかも、レース専用車としての高収益性もあって米国市場ではオフロードバイクの主流であるモトクロスバイクの販売は二輪各社の大きな収益源となっている。また、景気が戻りつつある米国市場の二輪販売では、オフバイクの伸びは前年度比+11%で、米国市民のオフ車志向は根強い。この構図は30数年前と変わらず、根強い米国市民のオフロードバイクによる家族の絆を伴って、二輪の大市場である米国ではモトクロスバイクを優先せざるを得ない理由でもある。

遙か昔、二輪の先端技術と販売の主流は欧州社が握り、その技術を学ぶべく幾多の日本企業は欧州で開催されるレースに参戦し技術を蓄えてきた。その年月は数年に及び、結果、日本の二輪企業は世界の頂点に立ち、特にホンダは二輪を先駆けに四輪市場に参入し、現在、名実ともに世界に冠たる企業となった。その間、日本企業の浸食で隅っこに追い込まれた欧州二輪企業が、ここ数年、その独自性をフルに発揮して世界市場に進出し、しかも高く評価され販売も著しく伸びている。こうして見ると、かって日本の企業が歩んだ道を、かっての王者、欧州の二輪機企業が強烈なブランド力をもって台頭し確実に歩み続けていると見える。モトクロスを筆頭に、この分野でのKTMグループの勝利が明確になった今、今後、販売網の構築がなされれば、早晩、二輪の大市場米国も欧州社の市場となり得る可能性がある。ここ数年、日本を代表する名門企業の汚点や著しい衰退を見るに、明日は我が身に降る掛るかもしれずと思えば、油断した方が負けだろう。


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