ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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ノラ・ジョーンズ探検隊 その6

2012-11-08 00:25:05 | SSW
VA / THE LOST NOTEBOOKS OF HANK WILLIAMS

ノラ・ジョーンズ探検隊、第6弾です。今回はハンク・ウィリアムス。およそ60年前に29歳の若さでこの世を去ったカントリー界の巨人です。彼が遺したヒット曲、名曲の色褪せない魅力は言わずもがなですが、後続に与えた影響も計り知れません。その影響力はカントリー界だけに留まらず、ロカビリーやホワイト・ブルースの先駆けともいわれ、現在のSSW/アメリカーナの源流のような存在でもあります。

さて、ハンクがこの世を去った時、4冊のノートブックが残されました。いまだ未発表の詩や曲のアイデアが書き貯められたノートブック。そのノートは紆余曲折を経ながらも大切に保存され、数十年の月日を経た末に、ハンクを敬愛する現代のアーティスト達がその詩やアイデアを元に曲を完成させるという形で新たな命が吹き込まれました。それが2011年にリリースされたこの作品「THE LOST NOTEBOOKS OF HANK WILLIAMS」です。

集められたアーティストはボブ・ディランを筆頭に、アラン・ジャクソン、マール・ハガード、ロドニー・クロウェル、ヴィンス・ギル、レヴォン・ヘルム、ルシンダ・ウィリアムス、シェリル・クロウ、ジャック・ホワイト…、そしてノラ・ジョーンズ。などなど。正統派カントリーからアメリカーナ/ロック/ポップスまで、さすがにハンクの影響力が伺えると同時に、これは納得!の面子ですよね~。

それぞれがハンクへの愛情たっぷりなトリビュートを演じるなか、ノラ・ジョーンズは、男に何度も裏切られながら「いったい何度あなたは私の心を引き裂いたの?」と歌う「How Many Times Have You Broken My Heart ?」を収録。不誠実な男に対する嘆きか?怒りか?それとも祈りか?ノラの歌は何処かロマンチックで、彼女らしいカントリー・タッチがとても素敵な曲。バック・ヴォーカルでギリアン・ウェルチが参加しているところにも注目です。

ノラに限らず名演揃いのこのアルバムですが、個人的にはディランと共に製作過程で重要な役割を果たしたというジャック・ホワイトの「You Know That I Know」が白眉ですね。オールド・スタイルに徹していながらも、彼の歌声からどうにもこうにも毒気が漏れてしまうところが何とも魅力的。ジャックも一度思いっきりルーツな作品とか作ってくれたら面白いのにな、と思ったり。あとレヴォン・ヘルムの「You'll Never Again Be Mine」も味わい深い。


ちなみにノラはハンク・ウィリアムス曲のカヴァーをこれまでに何曲か発表しています。意外にもデビュー作「COME AWAY WITH ME」でハンク曲を取り上げているんです。ノラらしいトロっとしたジャズ感で仕立て上げられた「Cold Cold Heart」がそれです。ハンクが51年にカントリー・チャート1位に送り込んだ名曲ですね。ノラはまだジャズ・シンガーという色彩の濃かったデビュー時から既にハンク愛を表明していたんですね~。あと個人的には今年リリースされたリトル・ウィリーズの「Lovesick Blues」が好きです!

でもこの「THE LOST NOTEBOOKS OF HANK WILLIAMS」収録曲はカヴァーとはちょっと違いますからね。ハンク・ウィリアムスが残した作詞もしくはアイデアに、曲を付けて完成させた訳ですから。時を越えた共作です。この「How Many Times Have You Broken My Heart ?」を完成させたノラはどんな気持ちだったでしょうね。ハンク・ウィリアムスとノラ・ジョーンズが並んでクレジットされた時は嬉しかったでしょうね。



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 12.10.15 ノラ・ジョーンズ探検隊 その1(RAY CHARLES / GENIOUS LOVES COMPANY)
 12.10.16 ノラ・ジョーンズ探検隊 その2(THE DIRTY DOZEN BRASS BAND / MEDICATED MAGIC)
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