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“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”を史上最高解像度で観測

2017-05-06 11:54:57 | 宇宙 space
地球から48億光年彼方にある銀河団を取り囲む高温ガスを、
アルマ望遠鏡がとらえました。

ただアルマ望遠鏡では、高温ガスの存在を直接知ることは出来ないんですねー
なので今回行われたのは、“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”と呼ばれる現象の観測。

“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の観測としては、
これまでで最も高い解像度が得られたことで、銀河団を取り巻くガスの分布や温度を、
詳しく観測する新たな手法の確立につながったようですよ。


銀河団を取り囲む高温ガス

銀河は、太陽のような星や星間ガスが集まっている天体ですが、
その銀河も宇宙の中で集団を形成して存在していることがあります。

銀河が数百個から数千個集まったものは銀河団と呼ばれていて、
そこには銀河の質量の合計よりも数倍も大きな質量を持つ、
大量の高温ガスが含まれています。

今回の研究では、この銀河団を取り囲む高温ガスを調べるために、
アルマ望遠鏡による観測を実施。

ただ、高温ガスから放射されるX線は、
アルマ望遠鏡ではとらえることは出来ないんですねー

なので、高温ガスの様子を調べるために、
高温ガスが引き起こす特殊な現象“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”を
電波で観測しています。


“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”

地球にはビッグバンの名残りとされる電波“宇宙マイクロ波背景放射”が、
あらゆる方向からやってきています。
  “宇宙マイクロ波背景放射”とは、
  天球上の全方向からほぼ等方的に観測されるマイクロ波。


“宇宙マイクロ波背景放射”の電波が、銀河団の高温ガスを通り抜けるとき、
高温ガスに含まれる電子と電波が衝突し、電子の持っていたエネルギーの一部が電波に渡されます。

その結果、高温ガスを通り抜けた電波は、
もともとの“宇宙マイクロ波背景放射”の電波よりも高いエネルギーに偏ることになるんですねー

これを地球から観測すると、高温ガスのある方向では、
他の方向に比べて“宇宙マイクロ波背景放射”の電波が弱くなる現象が起こります。

この現象を提唱者の名前を取って“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”と呼びます。
  銀河団をつなぐ1000万光年のフィラメントの橋
    


高解像度の観測

観測の対象となったのは、
おとめ座の方向48億光年の距離にある銀河団“RX J1347.5-1145”。

この銀河団は“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”が比較的強く、
これまで様々な電波望遠鏡で観測されてきました。

とくに2000年に国立天文台野辺山宇宙電波観測所の
45メートル電波望遠鏡で行われた観測では、高温ガスの分布にムラが発見され、
これまでのX線観測に基づいて想定されていた滑らかな分布とは異なることが、
示唆されました。
アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した銀河団“RX J1347.5-1145”。(青色)アルマ望遠鏡による“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の分布。銀河団の中止に近いほど“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”が大きく、電波が弱くなっていることが分かる。

高温ガスの分布を詳しく知るには、より高い解像度での観測が必要になります。

ただ、銀河団をのっぺりと覆う高温ガスは、
解像度の高い電波干渉計では観測しにくい対象の1つになります。
  複数の電波望遠鏡をつないで、それぞれの観測データを合成することで、
  1つの巨大な望遠鏡とする観測設備を電波干渉計と呼ぶ。


でも、日本が開発を担当したアルマ望遠鏡のアタカマ・コンパクト・アレイによって、
広い視野を実現し、広がる天体の分布を正確に調べることができるんですねー
  アタカマ・コンパクト・アレイ(愛称“モリタアレイ”)は、
  アルマ望遠鏡のうち日本が担当した直径7メートルのパラボラアンテナ16台。


研究チームでは、これまでの約2倍高い解像度と10倍高い実質感度で、
この銀河団における“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の観測に成功。

その結果、これまでの観測を強く裏付けるガス分布が得られただけでなく、
高温ガスの圧力分布が、これまでよりも高い解像度と密度で描き出され、
この銀河団が激しい衝突を起こしていることが確実になりました。

“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の存在が始めて提唱されてから50年近く経ちますが、
この現象は非常に微弱なので、高解像度の観測を実現するのはまさに至難の業でした。

今回、アルマ望遠鏡によってその壁がついに破られ、
宇宙の進化を探るための新たな道が切り開かれたことになります。


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ジャンル:
宇宙開発
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