マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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矢田の田植え

2012年08月13日 07時35分33秒 | 大和郡山市へ
早いところでは5月の末ぐらいから始めるという矢田の田植え。

それぞれの家の都合もあるから一斉ではない作業だ。

田植えをする前は荒起こしに水張り。

その前には苗代作りである。

ここら辺りの苗代にはお札を挿してある田が数か所に亘って見られる。

ツツジが咲くころ。

お花は美しく「しゃんと育てたい」というAさん86歳。

日焼けしたお顔は黒光り。

「これは矢田寺で授かったお札や」といって苗代に挿している。


(H23. 4.26 SB932SH撮影)

矢田金剛山寺(矢田寺)のお札と云えば、正月初めに営まれる修正会の初夜法要。

二日の夜に行われる牛王加持(ごおうかじ)。

牛のひずめの形をした朱印を押したお札が祭壇に供えられる。

祈祷されたお札は後日に僧坊から配られる。

それを神棚に奉っておく。

その後のモミオトシを経て、苗代に挿すのである。

その際には豊作を願うから手を合わして拝むというAさん。

古いほうのお札は2月初めに行われるとんどで燃やすというから一年前のものだ。

そのお札は田植えをされるこの日も祀ってあった。

水を張った田んぼは田植えの機械が稼働する。

かつてはエンジン付きの2条植えだった。

手で押しながら植えていく。

その後は人が乗って運転する4条植えの機械になった。

5条植えや6条植えもあるというが、県内では大規模農法でないことから8条植えは見たことがないと話す。

「矢田さんは春の彼岸がレンドで、4月3日になれば、実生(みしょう)が良い」と云ってタマネギの植え付けに適していると話す。

「5月は端午の節句。シンバ(新葉)採ってきて、ヨシが生えている池から採ってきてチマキを作っていた」ともいう長老。

この日は近くに住むKさんの応援を受けて田植え作業。

途中で一服の小休止もとる。

Aさんは菩薩講に属している。

村の5、6軒で組織されている講中の一人。

菩薩講は矢田のお練りの二十五菩薩を営む講中で、四つある僧坊のうちの南僧坊が管轄だそうだ。

二十五菩薩の講中には河内、大阪からの講社が多かった。

中断されてから随分と月日が経過した二十五菩薩のお練り。

復活するには相当な費用がかかる。

赤鬼、青鬼、車輪付き太鼓台などが保管されているが、修復するには多額の寄付を要する。

そんな話をしてくださったAさん。

とんどや日待ち講も快く取材させていただいた南矢田。

顔見知りの人たちは田植え作業に忙しい。

Aさんの田の水は井戸もあるが、倉持池からの出水。

すでに堰を開けていた。

一方の垣内は会話しているときに開けられた。

池の様子を見に行っていたNさんは、田んぼにまだ水が入っていないことを知って血相を抱える。

当番の人は堰を開けて水を流れをみる。

まだか、まだかと水の行方を見る。

じわーと流れてきた池の水。

水利の圏内はそれぞれによって範囲が異なるのだ。

なんとか間に合ったと田植え機に乗り出した。

そのころには怪しい雲行きになった。

ゴロゴトと鳴りだす雷の音。

徐々に近づいてくる。

真っ黒な雲に覆われ状況になった。

こりゃひと雨降るだろうと作業に取り掛かる。

その瞬間に降った雨はバケツをひっくり返したような雨量だ。

予想もしなかった暗雲がもたらす雨量は外川の道路を川状態にしてしまった。

(H24. 6. 2 EOS40D撮影)