マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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瀧倉鬼の葬式

2009年05月02日 09時24分27秒 | 桜井市へ
鬼の葬式と呼んでいるケイチン鬼打ちが桜井市瀧倉で行われた。

かつては行司の家で行われていたが役目を廃止してからは集会所の座敷となった。

数十年途絶えていた鬼の葬式は鬼的に矢を射る行事で一老が弓を引く。

弓はサクラの枝。

矢はススダケまたはススンボと呼んでいる細い女竹。

鬼的は太い女竹を細く切って編んでいく。

そこに墨書した鬼を貼り付ける。

準備が整ったころお椀に山盛りしたマクラメシ。

箸を挿している。

その膳には半切りにしたダイコンに四本の幣を挿す「死花(しか)」。

灯明に火を点し線香をくゆらした膳はマクラゼンという。

野辺送りの葬送の儀で墓場に行くときに持っていくものと同じだという。

鬼的はかど角柱に立てて六人衆が座した。

弓を持った一老は天、地、東、西、南、北へ矢を射る。

最後はとどめの鬼打ち。

般若心経一巻を唱えて行事を終える。

悪い鬼を成仏せよと唱えた心経だ。

大正七年の「神社私祭調書」によれば、御田植祭(一月十二日だった)行事のひとつだったケイチン鬼打ち。

当時は四方竹、注連縄を張った広庭で行われていた。

カラスキ、マングワ、スキ二挺の農具。

松苗、稲一穂やカワヤナギ、牛玉御札などがあって、モミ撒きなど耕運の真似で所作をして五穀豊穣を祈願していた。

松苗は女人三人が赤い襷を掛けて田植えの真似をしていた。

お田植えを終えてから悪魔(鬼)祓いの弓矢の行事。

矢や松苗を持ち帰り苗代の水口または畦に挿していた。

お田植え所作はみられないが、悪魔を倒す弓引きの行事は鬼の葬式として再現された。

葬式が終わったころ、雪は鬼の涙雨に変わった。

(H21. 3. 3 Kiss Digtal N撮影)