本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

この世界の片隅に

2017-05-07 07:46:10 | Weblog
■本
33 ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領/アンドレス・ダンサ、エルネスト・トゥルボヴィッツ
34 世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ/くさば よしみ、中川 学
35 謎の会社、世界を変える。―エニグモの挑戦/須田 将啓、 田中 禎人

33 元ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカさんを長年取材したジャーナリストによる本です。昨年に来日された際にホセ・ムヒカさんがマスコミに多く取り上げられていたので、興味を持って読みました。リオ会議での経済成長の限界を指摘し持続可能な生活を提案したスピーチが有名ですが、そのイメージとは異なった破天荒な側面も描かれていておもしろかったです。ゲリラ活動や長期にわたる収監生活を送った過去、そして、大統領在職期間中のアルゼンチン大統領への失言や大麻を合法化した政策など、単なる清貧な人格者に留まらない、癖が強い現実的でしたたかな政治家という側面も浮かび上がってきます。名を上げたリオ会議でのスピーチを振り返って、危機感を煽っただけで何一つ具体的な提案はしていない、と自己分析する冷静さも持ち合わせていて、生きていく上で本当に有益な「知」とはなにか、を自省する上でもとても有益な本だと思います。

34 そのホセ・ムヒカさんのリオ会議でのスピーチを絵本にした本です。子ども向けにわかりやすく要約されていて、絵も考えさせられる表現になっています。世界的な危機の原因は水不足や環境ではなく、物質的な豊かさを求めた我々の幸せの中身であり、見直すべきなのは「わたしたちの生き方」という主張はシンプルながらも強い力を持っています。大人はムヒカさん自身のスピーチ動画そのものを見る方をお勧めしますが、こどもと一緒に話し合う材料となる点ではよい本だと思います。

35 ITベンチャー企業エニグモ社のファウンダー達による立ち上げ時から一定の成果を上げるまでの期間を描いた自伝的な本です。ブロガーに企業のプレスリリースに基づき記事を書いてもらう「プレスブログ」で、私はこの会社のことを知ったので、海外商品等日本で手に入りにくい商品を購買代行するソーシャルコマースサービス「BUYMA」の方が主力サービスであることをこの本を読んで初めて知りました。また、「BUYMA」を普及させるための利用者側の発想から(そして、「BUYMA」の会員数が損益分岐点に達するまでの収入源として)、「プレスブログ」というサービスが生まれたこともわかり、会社全体としての事業バランスがよく考えられている点と構想を事業としてきちんと成立させている点に感心しました。会社設立から数年で書かれた本なので、振り返るには少し早すぎる気もしますが、日本の起業物語として興味深く読みました。この本が出版された2008年からずいぶん時間が経ってますので、後日談も読んでみたい気がします。


■映画
25 この世界の片隅に/監督 片渕須直
26 ワイルド・スピード SKY MISSION/監督 ジェームズ・ワン

25 かなり評判がよかったのでずっと観たいと思っていたのですが、やっと観ることができました。期待にたがわず、素晴らしい作品でした。舞台となった呉市や第二次世界大戦中の日本の風俗の細かい描写が印象的です。悲劇的な時代にもかかわらず、過度に悲観的にならず、淡々と時にユーモアすら交えて描かれる登場人物から、人間が本来持つ強さと気高さが伝わってきます。戦争当時も、当然つらいことが続いたと思いますが、悲しみだけでなく、愛情や嬉しさ、怒り、狡さなどさまざまな感情を人々が有していたであろうという、当たり前の事実をあらためて真正面から伝えているところが何より感動的です。その一方で、演出はかなり挑戦的で、ファンタジー的要素とリアルな描写を行ったり来たりしながら、当時の不安定な心理状況を巧みに描き出しています。声高に叫ばなくても、志が高ければ、伝えたいメッセージが観客に伝わるというお手本のような作品だと思います。

26 タイトル通り空から車が降ってくるという突拍子もない発想を実際に映像化した、ハリウッドアクション大作らしい頭をからっぽにして楽しめる作品です。細かい設定上のベタさや不整合を(21世紀に恋人が記憶喪失になって、都合のよいタイミングで記憶が戻るという設定を臆面もなく使うところが凄いです)力技でねじ伏せる勢い至上主義が痛快です。家族愛をテーマにしているところもベタですが、ターゲットにいかにも受けそうな要素を盛り込むマーケティング力にも長けています。原作漫画の映画化が横行するハリウッドで、オリジナルの脚本で次々と続編が制作されるだけあって、とてもよく考えられた作品だと思います。
コメント
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