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『現代語訳 徒然草』(読書メモ)

嵐山光三郎『現代語訳 徒然草』岩波書店

吉田兼好の『徒然草』を、嵐山光三郎さんがわかりやすく現代語に訳してくれたのが本書。

まさに「つれづれなるままに」さまざまなことが(やや冗長に)書かれたエッセイだが、後半になるほど内容が深くなる。

最も印象に残ったのは「雪仏」というタイトルがついた次の箇所。

「人の生活を見て思うことは、春の日に雪だるまの仏像をつくり、その雪仏のために金銀、珠玉の飾りをとりつけたり、お堂を建てようとしているのに似ている。お堂が完成しても雪だるまの仏像を安置することはできないでしょう。人が、まだ自分の寿命があると安心しているうちに寿命がなくなっていくことは、とけていく雪仏とおなじではないでしょうか。こんなはかない一生でも、人はあくせくはたらいて、お堂の完成を待っているんですね」(p.115-116)

ただし、嵐山さんの解説によると、兼好は正反対のことを言っていることもあり、多面的なものの見方をしているところに特徴がある。たとえば、次の箇所。

「だから、一生のうち、自分がなしとげたいと思っていることのなかでなにをいちばんやりたいのかを、よくよく考えて、そのほかのことは断念して、やりたいと思う一つのことだけにはげむことが大切なんだ。一日のうち、一瞬のうちで、多くのことがやってくるなかで、なにをすべきかをよく考えてえらび、そのほかのことはやらずに、いちばんやりたいことへ急がなくちゃいけない。あれもやりたいこれもやりたいと執着しているようでは、一つのこともなしとげられない」(p.136)

「あくせくするな」といいながら「やりたいことを絞り込んでがんばれ」と言っている兼好。でも、そうした姿勢は必ずしも矛盾しているわけではなく、「世のはかなさを感じつつ、頑張る」ことが大切なのではないか、と感じた。




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