goo

『いつか陽のあたる場所で』(読書メモ)

乃南アサ『いつか陽のあたる場所で』新潮文庫

この小説はタイトルがいい。

いくら失敗したとしても、何とか取り戻せる希望のようなものが感じられる。

どこかで聞いたことがあるタイトルだと思ったら、以前NHKのドラマで放映されていたことを思い出した(ストーリーはかなり違うが…)。

前科のある二人の女性が社会復帰した後、不安の中で精いっぱい生きる姿が描かれているのだが、「普通に生きること」がいかに幸せであるかを実感することができる。

例えば、主人公の芭子(ハコ)についての記述。

「このところ、芭子はアルバイト先で必要に迫られたこともあって、パソコンの使い方を覚えた。今まで毛嫌いしてきたが、実際に使ってみると便利なことが分かったし、その上、インターネットにも少し慣れてきて、ついこの間、思い切って念願のノートブックパソコンを買ってしまった。今は、暇さえあればパソコンに向かっている。刑期を終えて一年半、ひたすら息をひそめて、目立たないように、地味に、質素に暮らしてきた芭子にとって、それは、初めて得た趣味であり、潤いであり、新しい世界だった」(p.190)

何気ない日々の生活の中にある「ありがたい恵み」を、再めて噛みしめる必要があると感じた。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )