七五白書 (白けないために)

年金暮らしが書くニュースの“読みかじり”。
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60歳からの主張

2009-01-29 05:09:28 | 閲覧日数 10〜

 全国老人福祉施設協議会の主催で、60歳以上を対象に募集した自由課題の小論文と川柳による「60歳からの主張」の5回目になる入賞者の表彰式が、過日「もうひとつの成人式」として行われました。

 入賞者が自分の作品を読み上げると、審査員からは、「世の中を笑い飛ばすパワーがある」(児玉清さん)、「これから自分に待ち受けているさまざまなことを分かった上で、豪快に進んで行くすごみが伝わってくる」(吉永みち子さん)といった講評が寄せられたといいます。

 【小論文で入賞した三重県桑名市の池田義男さんの『広げよう「小さな勇気」の輪』の概略を紹介したい。誰の身にも起こり得る電車の中の出来事を取り上げているからである▼座席はほぼ満席で、七十五歳の池田さんも立っていた。そこへ杖(つえ)をついている同年配の女性が乗車。座らせてあげたいと見渡すと、二人連れの高校生の一人が座席に荷物を置いていた▼妻からは常々「正義感から注意などしてはだめよ。殴られたり、時には刺されたりもする怖いご時世なんだから」と言われている。さあ、どうするか…

 見かねてついに「その荷物、下に置いてこの人を座らせてやってよ」と声をかけると、高校生は黙ったまま荷物をどかした。妻の顔を思い浮かべてホッとしたが、話はここで終わらない。同じ駅で降りた高校生が何と自主的に女性の荷物を持ち、出口まで付き添ったという▼小論文の表現を借りれば<態度に表すのは苦手のようだけど、接してみれば優しく気のいいヤング>だった。これからは、進んで若者に声をかけよう。心を通わせてみよう。味わい深い主張である】(2009.1.26 東京・筆洗)

 【「古女房年金だけが赤い糸」。軽口をたたくことができる伴侶は、ありがたい存在である。「宝クジ買えばまだ出るドーパミン」。期待と興奮で、脳の中を伝達物質が駆け回る。「着信のたび老春の血がうずく」。青春があって、老春がある。「預貯金なし携帯もなし被害なし」。このからっとした笑いはどうだろう

 少し前の月刊誌で作家の重松清さんと評論家の鶴見俊輔さんが、老いについて語り合っていた。生きている限り、脳は動いている。そして今は病気やけがでしゃべれなくなっても、パソコンなどで感情を表現することができる◆豊かな内面を出し入れできる可能性はぐんと広がっている。吸収して、感じて、表現して。そんなぜいたくな老いになればいい】(2009.1.23 神戸・正平調)

 【《ヒラ通し 定年後すぐ 町会長 楠畑正史64歳》。一生懸命に会社のために働いてきたが、なぜか「長」はチョウのようにひらひらとかなたを飛ぶ。やっと「長」がわが身に付いたのが定年後。これからはご近所のため、社会のために「長」で頑張ろう。 (中略)▼《肩書きが 消えて人間 取り戻し 男性65歳》。人間、案外、肩書きで本来の自分を失っていることがある。名刺1枚で、一般の人が入れないところへも入れたし特別な人にも会えた。肩書きが取れるとただの人。肩書きにどっぷりつかっていた自分を発見する。少し寂しいがこれでいいと思う。

 《もてあます 妻の小言と 空き時間 男性64歳》。夫が出勤している時間は奥さんにとっては気ままな時間。だが、定年になった夫がぬれ落ち葉のように家にべったり。小言も出ようというもの。夫にとっては、妻の小言と仕事のない時間が何よりの苦痛だ。▼(中略)60歳からの人生を、川柳で軽くいなしながら生きていくことは100歳への道でもある】(2009.1.21 紀伊民報・水鉄砲)  

 【劇画「ゴルゴ13」が漫画誌に連載されて四十年になる。世界をまたに掛けるプロ狙撃手。一発の銃撃で悪事やら変事やら込み入った窮地をきっぱり収める。疲れ知らずである▼作者のさいとう・たかをさんがインタビューに答えていた。連載スタート時、主人公は自分よりも一つ年上の設定にした。してみると、ゴルゴも今や七十三歳になってしまう。鋭い眉(まゆ)。寡黙の中にみなぎる自信と不屈。とても老齢とは言えぬ▼(中略)

 毎年公募する「60歳からの主張」作品には高齢化社会へのめげない決意が並ぶ。小論文の優秀賞は七十九歳の女性。題して「おいらく行進曲」。家族に「恥が上着を着ている」とからかわれようが、ずんずん歩む▼国でも会社でも、誰のためでもない。すべては新しい自分のために。「古タイヤのゴムのように、弾力のなくなった感性にはなりたくない」と決めた。「年相応」という名の枠に収まらぬがいい。これぞゴルゴ的元気である】(2009.1.17 神奈川・照明灯)

  【「60歳からの主張」も年輪の旅路を語る交差点だ。その中から生活の声が伝わってくる川柳を紹介すると、優秀賞を受けた「引き際の美学を悔いる預金残」は62歳の男性の作品。やはり現実は厳しかった▼年金の支えに不安がつきまとう今、「年金をもらったところで夢がさめ」と67歳の男性。69歳の「年金と子供と妻に裏切られ」は夢より怖くて、切ない▼(中略)

 限られた収入でやりくり算段の日々。62歳の男性の「ガソリンのかわりにしたい体脂肪」からはため息が聞こえそうだ。人知れぬ苦労をしているのにと思いながら74歳の女性もつぶやく。「体重の増えた分だけ預金減り」▼生きていればいいことがある。明るく前向きに歩む女性の宣言。73歳は「ストレスを抱え与えて長生きし」。「ときめきはエイジレスへの一里塚」は83歳。80歳男性の「わが家には面を被(かぶ)らぬ鬼がいる」も愛情たっぷりの賛歌だろう】(2009.1.23 福島民友・編集日記)

 【人生のアフターファイブ」をいかに生きるか。悩ましいが避けては通れない問題だ◆団塊世代の多くは今、そんなことを考える時間が多くなったのではないか。全国老人福祉施設協議会が募集した『60歳からの主張』の受賞者たちの生き方が参考になる。埼玉県入間市の堀年男さん(66)は公民館サークルに通う妻の送り迎えをしていたら、「よかったら、のぞいてみませんか」と館長さんに誘われて川柳教室をのぞいたのがきっかけだった

 「孫帰り残した鶴の先を折る」。そのうち作品がラジオで紹介されるほどの腕前に。そのことが同窓会で話題となった。いい気分で照れていたらアルコールの回った一人から「悠々自適の川柳作家か、余裕だな」と皮肉られたが、堀さんは聞き流した。「妻のアッシーをしていなかったら川柳との出会いはなかった」という堀さん。確かにそうだが、心ない皮肉を聞き流すことができたことが大きかった(中略)◆チャレンジする人生に年齢制限はない。】(2009.1.16 佐賀・有明抄)

 

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