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♯812 怒れる世界の若者たち

2017年06月17日 | 国際・政治


 5月7日に実施されたフランス大統領選挙の決選投票では、昨年4月に政治運動「前進」を立ち上げたばかりの若いエマニュエル・マクロン氏が、(極右勢力として伸長してきた)国民戦線のマリーヌ・ルペン氏を予想を上回る大差で下し勝利を手にしました。

 昨年6月のイギリスの国民投票でのEU離脱派の勝利と、11月に行われたアメリカ大統領選挙でのトランプ氏の勝利は、先進各国で孤立主義・保護主義の動きが台頭していることを世界中に改めて印象付けました。

 そのような流れにあっても、フランス国民は最終的に、EU(欧州連合)離脱と移民の排撃を政策の柱に掲げたルペン氏を退け、親EUのマクロン氏を選択した。広がるポピュリズム(大衆迎合主義)や孤立主義・保護主義の波をフランスが防波堤となって食い止めた格好となったことで、世界のメディアは安堵の声とともにこの結果を受け止めているようです。

 特にドイツと並んでヨーローッパの(一方の)盟主であるフランスの場合、その選択によっては、EUが本当に瓦解するリスクが生じ世界経済が大混乱に陥る可能性も否定できません。6月11日には、そうしたフランスで下院議会の選挙が実施され、(決選投票を前に)マクロン大統領の新党「共和国前進」グループが、全577議席の約7割に当たる400議席を超える勢いと伝えられています。

 一方、6月8日に行われたイギリスの下院議員(定数650)選挙では、EU離脱を決めたメイ首相率いる保守党が12議席減少させ半数を割る318議席となり、影響力を大きく失うこととなりました。メイ首相は、大勝して国民一丸となってEUと交渉することを狙って選挙に打って出ただけに、その責任の取り方が注目されているところです。

 このように、欧米を中心に、右から左へと大きく揺り戻しを見せているかのような世界の政治情勢に関し、6月14日の日経新聞のコラム「大機小機」では、「怒れる若者たちと政治」と題する論評において、私たちに興味深い視点を提供しています。

 今年初めの(世界の)話題は「極右の躍進」だった。しかし興味深いことにその後(半年もたたないうちに)韓国では左派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が誕生した。また、フランス大統領選挙では、当選したマクロン氏ばかりでなく極左のメランション氏も(想定外の)善戦をし、一時は決選投票に残る勢いだったと記事は指摘しています。

 イギリスの総選挙でも、メイ首相率いる保守党の圧勝と思いきや過半数を割り込み、労働党が議席を伸ばしている。記事によれば、同党のコービン党首は民主社会主義者を自認し、政権公約でも郵便や鉄道の再国有化を唱える(バリバリ左派の)政治家だということです。

 選挙に先立ち、イギリスの世論調査機関の多くは保守党優位と予測し「読み」を外した。若年層の労働党支持率は高いが選挙にはいかないだろう、そう考えて生データに補正をかけたと記事はしています。

 ところが(豈にはからんや)「彼ら」は投票所に足を運んだ。思えば、韓国の文候補を押し上げたのも、若年層の支持だったと記事は振り返ります。フランスの例も含め、昨今の左派勢力支持の伸長の背景には、若年層の深刻な失業問題などが見て取れるということです。

 イギリスでは、1~3月期における16~24歳の若者の失業率は56万2千人で、ピーク時よりも低下したもののその失業率は12.5%に及んでいるということです。さらに、1年以上の長期失業者は若年失業者全体の15.4%を占めており、メイ首相は彼らの怒りを読めなかったと記事は指摘しています。

 一方、韓国でも、15~29歳の若年層の失業率が(2016年現在で)9.8%に上っており、全体の失業率3.7%を3倍近く上回る状況にあると記事はしています。しかも、4年制大学以上を卒業した高学歴な若年層の失業率は実に11.1%に及んでいて、就職先も給与水準の低い中小企業となるケースが多いとされています。

 さらに記事によれば、9月に総選挙が予定されているイタリアでは、若年者の失業はさらに深刻な状況にあるということです。

 2016年10~12月期の若年失業率は38.6%と、EUではギリシャ(45.8%)、スペイン(42.8%)に次ぐ高さに喘いでいる。(最近の各国の選挙動静から見て)彼らの怒りの矛先が政治のカギを握っているのは間違いないと記事は考えています。

 さて、翻って、日本の状況はどうでしょう。

 2017年4月現在の15~24歳の失業率は5.0%。全体の失業率が2.8%と3%を下回っていることを考えれば高いと言えますが、海外に比べれば相当に低水準にあることは間違いありません。

 そうした状況を念頭に置けば、日本で10歳代と20歳代前半の現政権への支持率が高めなのは、その前の世代が就職で苦労してきたのを目の当たりにしているからではないかと記事は指摘しています。

 一方、日本の場合、問題はむしろ30代後半と40歳代前半の「就職氷河期」世代が未だに「割を食っている」点にあるというのが、日本の現状に対する記事の基本的な認識です。

 苦労を迫られてきた彼ら(団塊2世よりさらに下の)世代が、安心して子育てできる経済環境を作っていくことが、社会や政治の安定につながっていく。政治と経済の安定のためには、(彼らの世代の状況に配慮した)きめ細やかな対応が求められると結ぶ記事の視点を、私も大変興味深く読んだところです。


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