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♯810 流星号、応答せよ!

2017年06月14日 | 日記・エッセイ・コラム


 最近、50歳をとうに過ぎた友人たちの間で、アップルのウェアラブル端末、いわゆる「アップル・ウオッチ」が流行っています。手に入れたばかりのおじさんたちが(アップルからお金をもらっているわけでもないのに)こぞって嬉し気に誰彼となく見せびらかし、機能を説明したがったりするので煩しくて仕方ありません。

 近頃では(そういう意味では「一時代前の」メディアである)テレビでも盛んにCMを流しているようですが、最初は何のコマーシャルかもよく分からない(ノリだけのように見える)イメージ戦略も、詳細なマーケティングにより(きっと)流行りもの好きの彼らの嗜好をがっちり掴んでいるのでしょう。

 とは言うものの、実際、腕時計に向かって話しかけたり、気になる情報を見たり、メールをチェックしたり、アップル・ペイを使って(さらっと)支払いをしたりしている姿を見ると、それはそれで文字どおりのスマート(な)ウオッチだなと感じないわけではありません。

 透明感のあるシャープでシンプルなデザインなど、(初めてアップルⅡを目にした時のように)流石と感じさせるものがあるのも事実です。こうしたモデルが3万円かそこらで買えるのであればぜひ手に入れたいと、(奥さんに内緒で)夜な夜なアマゾンを手繰るおじさんたちが多いのも十分に頷けるところです。

 そもそも、50代より上の世代にとっての「腕時計」というアイテムは、ある種「特別」な意味を持った存在と言えるかもしれません。

 60~70年代の子供たちにとって、腕時計はまさに「大人」のシンボルであり、万年筆やライターなどと同様に「男の社会」を感じさせるアイテムでもありました。一般的に、中学生になっても腕時計を持っているのは、クラスでも恐らくお金持ちと目されるような何人かだけで、大方の少年が「セイコー・ファイブスポーツ」などといった若者向けの時計を買ってもらえるのは、高校に入ってかそれ以降のことでした。

 カシオから1万円以下のデジタルウオッチが発売されるのは、それからさらに5年も10年も後のことで、それ以前の少年にとって腕時計は、憧れの存在以外の何ものでもありませんでした。小学生は皆、折から流行っていた「スーパージェッター」や(世代によっては)「ウルトラ警備隊」になり切り、マジックやボールペンで左腕に描いた時計に向かって無邪気に話しかけたり叫んだりしていたものです。

 さて、5月17日の日本経済新聞の巻頭コラム「春秋」では、そのような(腕時計ひとつにも高度成長や科学進歩の夢を纏わせることのできた)よき時代と、半世紀後の現代をリアルに結び付けて私たちに見せています。

 「流星号、流星号、応答せよ」…アラカン(アラウンド・還暦)の男性ならば、多くの方々が覚えているであろうこの台詞。

 50年以上前に放映されたSFアニメ「スーパージェッター」では、主人公が腕時計型の通信端末から呼びかけると、自動運転車「流星号」がマッハ15のスピードでさっそうと空を飛んで駆けつけてくれます。「あんなマシンがあったらいいな」と、未来への夢を膨らませた少年少女が日本中にいたことだろうと、このコラムは綴っています。

 それから半世紀を経て、その夢はいまや現実のものとなりつつあるように見える。腕時計型の端末は既に実用化され、自動運転車も実証実験の段階を迎えている。そして最近、空を飛ぶ自動車の開発に向けた機運も浮上したと記事は記しています。

 実際、米国ではライドシェア(相乗り)大手のウーバーテクノロジーズが、ブラジルの旅客機メーカー、エンブラエルなどと組んで小型の垂直離着陸機(VTOL)を開発し、3年以内に「空飛ぶタクシー」を実現させるという計画を発表しています。

 勿論、本当に「流星号」を現実のものにするには、技術開発だけでなく法整備などの環境整備も必要になるためまだまだ時間はかかるでしょうが、記事は、21世紀の早い段階で実現の見通しが出てきたことに、技術革新のスピードを実感せざるを得ないと驚きを示しています。

 「未来の国から、やって来た…」と主題歌も歌っているように、「スーパージェッター」は、遠く30世紀から20世紀に時空を超えてやってきたタイムパトロールの一員です。

 忘れている方も多いかもしれませんが、彼の腕時計には(流星号を呼ぶだけでなく)周囲の時間を30秒間だけ止めることができる「タイムストッパー」という機能も付いていて、捜査や救助の際の「決め技」として活用されていました。

 こうした、(時間を止めたり過去に戻ったりという)タイムマシンの技術だけは、人類が手にするまでに(恐らく)相当の時間がかかることでしょう。しかしそれでも、こうして育まれた未来への夢や憧れが、(半世紀後の現代へ続く)様々な科学的革新の原動力となってきたのは確かであり、想像力は創造力の源泉だと今更ながら思うとこの記事は結ばれています。

 空飛ぶ自動車の開発は、トヨタをはじめとした多くの企業において既に様々に取り組まれています。

 彼ら技術者が子供の頃、腕に腕時計をサインペンで書いていたかどうかはわかりませんが、鉄腕アトムやブレードランナーなどで描かれた未来都市の有り様が、気が付けば(まんざら)絵空事とも言えない時代がやってきているということでしょう。

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