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♯849 日本のニート

2017年08月09日 | 社会・経済


 ニート(NEET:Not in Education, Employment or Training)とは、読んで字のごとく「就学」「就労」「職業訓練」のいずれも行っていない状態(の人)を意味する用語です。

 この言葉は、日本では15〜34歳までの非労働力人口のうち通学や家事を行っていない者を指すとされ、またの名を「若年無業者」と言って、「家でぶらぶらしている若者」や「引きこもりの若者」などを表す代名詞として広く認識されています。

 しかし、国際的に見れば、NEETのニュアンスは日本とは若干違っているようです。

 OECDの定める定義では、NEETは「働いておらず、教育や職業訓練を受けていない15~29歳の男女」とされており、いわゆる「家事手伝い」や「自宅浪人生」「働く必要のない若者」なども含んだ数値として統計上に表れてきます。

 5月29日にOECDが公表した報告書『若者への投資:日本-OECDニートレビュー (Investing in Youth: Japan - OECD REIEW ON NEETS)』は、若年人口が減少し働く若者の数が約150万人減少する中、日本のNEETが1990年代初頭の2倍以上に増加している状況を(危機感を持って)指摘しています。

 同報告書は、日本におけるNEETの数を(2015年現在で)約170万人と見込んでおり、同世代に占める割合は10.1%と、実に10人に1人以上がNEETに分類されるという(驚くべき)結果を示しています。

 もっとも、NEET率のOECD平均値は14.7%とさらに高く、世界を見渡せば、上位にはトルコ(30%)やイタリア(27%)、ギリシャ(25%)、スペイン(23%)などの国々が並んでいます。こうした国々では、移民問題や経済の悪化などにより仕事にあぶれた低学歴の若者がその主役となっているようです。

 一方、(そうした状況から)OECD各国の平均値ではNEET全体の17%に過ぎない高学歴者が、日本では38%(短大卒以上)を占めていると報告書は指摘しています。

 現在の日本の労働市場は人手不足で、若い労働力は引く手あまたの状態です。当然、高学歴者に関しては、就職もさらに容易と言えるでしょう。

 そのような中、(OECDの中にあっても)日本の若年労働者の就労状況は極めて特異な存在だと言わざるを得ないと報告書は指摘しています。求職活動をしていないNEETの割合は諸外国よりも有意に高く、日本では3分の2以上のニートが仕事を探していないのが現状だということです。

 報告書はその理由(のひとつ)として、OECDの統計に上ってくる日本のNEETには、家事や育児のために働いていない女性、いわゆる専業主婦が数多く含まれていることを挙げています。

 OECDの基準では、たとえ家事や育児をしていても、就業も通学もしていなければNEETとして理解されます。その根底にあるのは、家事と育児が理由でNEETになっている女性も、多くが「可能であれば働きたい」という意欲を持っているという考え方です。

 報告書は、生産年齢人口が急速に減少しており移民も少ないことを考慮すれば、(日本では)全ての若者が労働市場に積極的に参加できるよう支援することが不可欠だと指摘しています。保育所の整備も含め、働く意欲のある若者が無理なく働ける環境整備が求められているということです。

 さて、さらに今回の報告書が(日本における最も)「深刻な問題」と指摘しているのが、「30歳未満の推計32万人(この年齢層の約1.8%)が引きこもり状態にある」という事実です。

 これらの人々の多くは、社会や教育、労働と再び結びつきを持つために長期にわたり集中的な支援を必要としている。学校や地域の社会奉仕活動を改善し、社会から離脱する恐れのある若者を助けるべきだと報告書は論じています。

 実際、内閣府の調査でも、6カ月以上にわたって、仕事や学校に行かず自宅にいる15〜39歳の「ひきこもり」は、全国で推計54万人以上に上るとされています。さらに、統計に上らない40歳以上の該当者や親和群も含めれば、全国で110万人以上に達するのではないかとの推計もあるようです。

 安倍晋三政権は昨年6月に「1億総活躍プラン」を閣議決定し、引きこもりなど「社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者」に対し相談支援などを充実させ、「就労・自立を目指す」と謳っています。

 日本のNEET問題の本質的な解決のためには、日常の生産活動からドロップアウトしてしまった彼らの社会性を取り戻し、(将来に)意欲をもって暮らすことを意識づけることが最も求められているのではないかと、改めて考えさせられたところです。

 

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