MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯409 マイナンバー始まる

2015年09月16日 | ニュース


 気が付けば、「マイナンバー」がそれぞれの家庭に通知されるまで、既にあと半月に迫っています。そして約3か月後の1月からは、まず社会保障や税、災害対応などの行政分野において、実際にマイナンバーが活用され始めるということです。

 施行期日が迫ったこともあり、メディアなどにおいて「話題」という形で取り上げられることも増えてきたこの制度ですが、導入によって具体的にどのように私たちの暮らしに影響が及ぶのかについては、今ひとつはっきりしないのも事実です。

 内閣府のホームページは、当面、マイナンバーを年金や雇用保険の資格取得、ハローワークなどの事務、医療保険や福祉分野の給付などに活用していくとしています。また、税の確定申告や特別徴収などの際に記載が求められるようになり、さらには預金の口座などにも紐づけされて、各種申告などの効率化に役立てられるということです。

 さらに、先日財務省が発表した消費税の負担軽減措置においては、国民一人ひとりの食料品などの購入額をマイナンバーで把握し還付する案が(いきなり)示され、様々な議論を読んだのは記憶に新しいところです。

 政府はこれから先、このマイナンバーの利用範囲をどこまで広げていこうとしているのか。

 9月11日のYahoo newsでは、マイナンバーの普及によって身近な場所でどのようなことが起こり得るかについて、ITジャーナリストの神田敏晶氏が興味深いレポートを寄稿しています。

 政府が約3,000億円以上の税金を投入し普及させようとしているこのマイナンバー制度の主要な目的は、(ひとことで言えば)確実な税収確保に他ならないと、このレポートで神田氏は指摘しています。

 マイナンバーを使って所得を国民一人ひとりに紐づけできれば、内緒で副業を持っている人や自営業者や個人事業主、富裕資産がある人などの収入と税金の関係が丸ハダカにされることになると神田氏はしています。

 氏によれば、国税の立場からすればこれは願ったりかなったりで、証券会社や保険会社等の金融機関で利金・配当金・保険金等の税務処理をマイナンバーで行うことで(いわゆる)「眠れる1600兆円」の金融資産とマイナンバーが紐づき、さらに登記事務にも導入されれば、土地、不動産などの資産と個人との紐付けも時間の問題になるだろうということです。

 そうした視点から神田氏は、マイナンバー制度は、国民のありとあらゆる財布の中身を可視化する最大のツールとなり得ると考えています。

 近々でまず起こりうることを想定するならば、例えば昼間は企業でOLをしながら夜のバイトをしている副業の女性達に問題が発生するだろうと氏は説明しています。

 週に何回かだけアルバイトをしているような人にも、給与を支払う際にはマイナンバーが必要となる。事業者側から申告されたマイナンバーで名寄せされれば、当然彼女達の昼間の収入と夜の収入が合算され、社会保険料や住民税などに影響する。昼間の会社にも副業がバレてしまい、面倒くさいことになることが予想されるということです。

 そうなれば、彼女達はマイナンバーの申告をしないでもよい店を探しはじめ、怪しいブラックな事業者のもとにスタッフが集まるようになるかもしれない。そしその一方で、健全な経営をしていた夜の店がバタバタと倒産する、「マイナンバー倒産」という事象が起き始めたりするかもしれないということです。

 さて、それはそうとして、マイナンバーは行政によって活用されるばかりでなく、こうした12桁の個人番号の利用が一般化し便利になればなるほど、企業やネット上でも、個人を認証するためIDやパスワードの代わりにマイナンバーを流用する人たちが出てくるだろうと、神田氏はこのレポートで予想しています。

 もしもそうなれば、行政サービスのみならず、国民一人一人の行動や経歴が本人の知らない所でマイナンバーの下に様々に紐づけられることになり、生い立ちから思想・信条、収入、資産、健康状態、家族関係、交友関係、どこに行ったか、何を買ったかに至るまで、全てが一つの番号の下に管理される事態も生じてくるかもしれません。

 また、そうした状況の下では、統合された情報に対するセキュリティの管理の徹底が、より重要になることは論を待ちません。一つのちょっとした情報が外部に漏れてしまっただけで、紐づけされた情報が(それこそ)ずるずると垂れ流しになる可能性も、決して否定はできないのです。

 現時点では、余りに実感のないまま「ふわっと」降りてきた感のあるマイナンバー制度ですが、これから先、国民の間にどのように根をおろしていくのか。また、集められた個人の情報を、誰がどのように責任を持って管理していくのかなど、この制度にはまだまだ解決すべき課題が多いように感じられます。

 いよいよ、来月からマイナンバー制度が始まります。導入に踏み切った世代の責任として、私達のそれぞれがしっかり見守っていく必要がありそうです。




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