紫匂う花房の<5>

2017-04-19 | ss(紫匂う花房の)
※<原作8巻その後>をイメージしたお話です。ネタばれ要素を多く含みますので閲覧ご注意下さい。※



「お久しぶりでございますわね、瑠璃さま」

登華殿の一室で藤宮さまは懐かしそうに言われ

「えぇ、本当に」

あたしも笑顔を返した。

藤宮さまとお会いするのは、優に半年振り───

事件の後、承香殿女御さまのご懐妊の話を聞きに行った時以来だった。

藤宮さまはあの事件の真相を知っている数少ないうちの一人なのだ。

目が合って何となく曖昧に頷き合う。

思うこと、言いたいことがたくさんあるのはお互い様だった。

だけど場所が場所だけに迂闊なことは言えないと黙り込んでいると

「わたくしね、瑠璃さま」

声を落とし、藤宮さまが膝を進めてきた。

扇を開き、内緒話をするように

「この間、遠野宮の夢を見ましたの」

「・・・」

「絢姫と東宮さま、お三人で仲睦まじそうなご様子で・・」

しみじみと言い、すっと扇を閉じると改めてあたしに向かい

「瑠璃さまが吉野にご静養にいらしてた時、何度か瑠璃さまのことを夢にみましたのよ」

「あたしの夢を?」

「えぇ。・・・だから、遠野宮も元気で暮らしていると思いますわ」

何が<だから>なのか分からずに黙っていると、あたしの沈黙の意味がわかったのか

「瑠璃さまは今、こうして元気にお過ごしでしょう?」

「えぇ」

「だから、わたくしが夢に見た方は、きっと元気にお過ごしになってるんだって思いますの」

あたしに説明するようにも、自分に言い聞かせるようにも取れる口調だった。

「藤宮さま」

あたしはゆっくりと大きく頷いた。

「そうですわね。きっと元気でお暮らしですわ」

あれっきり、帥の宮とは一切、連絡を取っていないけど、でも、元気に過ごしているはずよ。

ううん、元気でいてもらわないと困るのよ。

帥の宮と絢姫が不幸になっていたら、命まで懸けた大弐が浮かばれないわ。

もちろん、高彬だって。

他にも宮邸の火事で亡くなった人だっているんだし、2人には命懸けで幸せになってもらわないといけない。

あたしが2人の消息を知ることはないだろうけど、2人は今、幸せだってあたしはそう信じてるわ。

「それにしても、こうして瑠璃さまにお会いできるなんて嬉しゅうございますわ」

藤宮さまに言われ、あたしは膨れっ面をして見せた。

「鷹男が何度も文を寄越すんです。それで、何かあったんじゃないかって心配になっちゃって。それを確かめるためにこうして後宮に来たんです。もし何にもないようだったら、もう文なんか送らないでって言うつもりです」

「まぁ。瑠璃さまったら」

藤宮さまは目を見開き

「今上もきっと瑠璃さまが懐かしいのですわ。そんなに邪険になさらないであげて下さいませな」

あたしは肩をすくめた。

高彬に相談した後、あたしは参内する旨のお文を書いたのだけど、その時に藤宮さまのご同席を条件にしたのだ。

藤宮さまにお会いしたいって気持ちもあったし、万が一鷹男に下心があっても藤宮さまがいれば、そうそう簡単に色っぽいムードにはならないだろうと言うヨミもあった。

「今上は事件の真相をご存知ないのですもの、どうか、瑠璃さまもお優しくして差し上げて」

「・・・」

そりゃあね、あたしだってそうは思うわよ。

鷹男はまだ、帥の宮に裏切られて、女御さまや東宮さまが焼け死んだと思ってるんだもの。

その苦しみ、辛さは想像に余りあるわ。

いずれ、真実を知る時は来るのだろうけど・・・

ふと足音が聞こえ、女房が現れ手を付き

「ただいま、帝がおなり遊ばします」

ゆるゆると口上を述べた。

少しの後、やがて鷹男の帝、その人が現れた。







~続きます。


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2 コメント

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Unknown (ベリー)
2017-04-19 22:47:27
藤宮さまの登場、嬉しいです〜和みますわ。

ふと思ったのですが、綾姫を手に入れるため、かなり陰険な事を色々しでかした帥の宮ですが、それを綾姫は許せたんでしょうかね

ここまで二人が、いえ3人が一緒に暮らせるのも大弐や、色々な人の犠牲の上ですよね
高彬が大火傷した事は知らないし。
今頃お坊さんや尼さんになっているのではないでしょうか、なんて思ってしまいました。
>>ベリーさま (瑞月)
2017-04-20 18:17:56
ベリーさん、こんにちは~。

>ふと思ったのですが、綾姫を手に入れるため、かなり陰険な事を色々しでかした帥の宮ですが、それを綾姫は許せたんでしょうかね

絢姫がどこまで帥の宮のしたことを知ったか、と言うことですよねぇ。
帥の宮がどこまで話すのか・・。
大弐が亡くなったことも高彬の火傷も、8巻の最後の時点では知らないですしね。(帥の宮も)
うーん、確かに帥の宮のしたことは大きいですね…

>今頃お坊さんや尼さんになっているのではないでしょうか

出家していると言うのが一番、考えられる線ですが、東宮がいますからねぇ・・

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