後宮物語<9>

2017-08-09 | ss(後宮物語)
※原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。苦手な方は閲覧ご注意ください。





気が付いたら、あたしは右近少将の腕の中にいた。

いい匂い・・・

白檀香にほんの少しの麝香の香りが混ざり、多分、薫陸香も入ってて・・・

「大丈夫?」

あまりのいい匂いにぼんやりとしていたら、すぐ近くで声が聞こえ、びっくりして顔を上げたあたしは───

もっとびっくりしてしまった。

顔がすごく近い!

もう、鼻先がぶつかるくらいの距離。

「・・・」

こんな近くで、人の顔、見たことないかも・・・

優しそうな澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。

どれくらいの時間がたったのか──多分、実際にはほんの数秒なんだろうけど──右近少将が、あたしの顔を見ながら、突然、クックックッと笑いだした。

「へ?」

何?

───何?

なんで笑ってるの?

「目が寄ってる」

「・・・へ?!あたし?!」

「そう」

目と目の間を指さされ、あたしは慌ててパチパチと瞬きをした。

や、やだわー。

右近少将の瞳に集中してるうち、いつの間にか寄り目になっちゃってたんだ。

目をほぐそうと上下左右に動かしていると、それも可笑しいのか、右近少将はクスクスと笑い続けている。

「そんなに・・・笑わなくてもいいじゃない」

思わず文句を言うと

「あ、ごめん、つい。もう笑わないから」

右近少将は一端は顔を引き締め、でも、また頬を緩ませている。

「もうっ」

笑われた恥ずかしさもあり、プイッと顔を背けると、慌てたように

「ほんと、ごめん」

と頭を下げてくる。

「いやよ、怒ったわ」

鼻に皺を寄せながら言ってやると

「困ったな。どうしたら許してもらえる?」

右近少将は本当に困ったような声で聞いてきた。

「土下座・・」

「えっ」

「は、あんまりだから・・・、そうねぇ」

あたしはじっと右近少将の顔を見た。

しばし考えて、良いことを思い付く。

「寄り目して」

「え?」

「だから、寄り目。笑われた仕返しに笑ってやるわ」

「・・・」

右近少将は固まり、真意を計るかのようにチラチラとあたしの顔を見ている。

「本気よ」

澄まして言ってやると、少し考えた後

「よし、わかった」

大きく息を吐いた。

「そうこなくっちゃ!」

「一瞬だけだぞ」

「いいわよ」

ちゃんと見ようと正面に回り込むと、右近少将は一瞬だけ、あたしに向かい寄り目にして見せた。

可笑しくって、身体を二つに折って笑っていると

「笑い過ぎ」

と頭を小突かれてしまう。

「あー、良いもの見ちゃった」

ほんと、今をトキメク花形公達の寄り目なんか、そうそう見れるもんじゃないもの。

女房相手にここまでしてくれるなんて、この人、本当に良い人に違いないわ。

たかが寄り目と言えばそれまでだけど、何か感動してしまう。

「ありがとう、右近少将」

お礼を言うと

「高彬でいいよ」

「え」

「右近少将なんて呼ばれると、落ち着かなくて」

「でも」

一応、女房なんだし、いくらなんでも呼び捨てには・・・

返答に困っていると

「まぁ、呼びやすい呼び方でいいよ、撫子どのの」

そこで言葉を切り、少し黙り込むと

「良かったら、名前、教えてもらえないかな」

「え」

「撫子は女房名だろう?」

「・・・」

「良かったら、名前を。・・ダメかな」

とっさには返事出来なくて、あたしは黙り込んだ。







<続>



クイズの正解者、現時点で3名ほどおられます!(一応は、お楽しみのためにどなたかは申し上げませんね)

では、ヒントをもう一つ。

これは、平安時代設定の話だからこそ使えたネタでした。

平安時代と現代の違いと言えば・・・?


ナオ**さま。クイズの答え、ほぼ合っているのですが、ズバリ、「ある言葉」が足りません。
それを書いて下さったら正解となります!




高彬に名前を聞かれ、言葉に詰まる撫子。良いムードの2人に、クリックで応援をお願いいたします。
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2 コメント

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Unknown (ベリー)
2017-08-09 22:45:51
なんだか、もうもう、わかってますよね〜。
こんな風に幼馴染でない二人の会話も良いですねえ。昔から知っているからこそ言えない見栄や変な照れ隠しがなくて。
「え、名前は瑠璃世です。」なんて。名前、言っちゃいなよー!
>>ベリーさま (瑞月)
2017-08-17 22:11:21
ベリーさん、こんばんは~。(返信が遅くなってしまいすみません)

>こんな風に幼馴染でない二人の会話も良いですねえ。

そうですよねぇ。
原作の設定とは違いますが、お互いをこれから「知り合って行く」と言う感じも、なかなかいいですよね!
名前、言っちゃいましたよー。

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