瑠璃ガール<6>

2017-05-14 | ss(現代・高等科編)
※本館「現代編」設定の2人です※





昼間、あれほど人の多かった砂浜が、夕暮れの今はずいぶんと人少なになっていた。

地元の人なのか犬を散歩してるご夫婦や、ジョギングをしてる若い女性の姿がある。

高彬はカバンを足元に置くと

「瑠璃さん、波に足を浸しておいでよ。気持ちいいよ」

そう言って砂浜に腰を下ろした。

「高彬は?」

「荷物、見てるから」

「・・」

「行っておいでよ」

「・・うん」

高彬の言葉に促され海に向かう。

まだ昼間の熱を籠らせた砂がサンダルの隙間から入ってきて、あたしはサンダルを脱ぐと片手に持って歩いた。

波打ち際の湿り気を帯びた砂はひんやりと気持ち良く、レースみたいな波が絶え間なくやってきては、あたしの足を撫でて行く。

思えば、今年初めての海だった。

海には入れなかったけど、でも、何かと思い出深い日になりそうで───

景色を見渡す振りをして砂浜の方をチラリと見ると、高彬がじっとこっちを見ていたのでドキっとしてしまった。

慌てて水平線に目を移す。

「・・・」

たまたまよ、たまたま。

たまたま、こっちを向いてただけ。

きっとあたしじゃなく、夕景に映える海を見てたに違いないんだから。

高彬に背を向けているのをいいことに、海に向かって盛大にため息を吐いた。

高彬は優し過ぎる。

あんな風に介抱してくれたり、本当だったらバスで楽して帰れるのに、あたしを送るために電車にしてくれたり、「少し楽しんでおいでよ」なんて海に付き合ってくれたり。

この優しさは責任感から来てるってことはわかってるけど・・・

「・・・」

あたしはやって来た波を軽く蹴った。

思えば父さまも、変なことを高彬に頼んだものだわよ。

初等科入学式の日に、『瑠璃を頼む』だなんて言うから、責任感の権化である高彬は躍起になってあたしを<守って>くれてるに違いないんだから。

まぁ、あたしと高彬は幼馴染だから、高彬に取ってもあたしは、全くの他人とも違う、文字通り<馴染みがある相手>ではあるのかも知れないけど。

だけど、もし高彬と幼馴染じゃなかったら、あたしも他の子みたいに堂々と女の子アピール出来てたのかも知れないのになぁ、なんて思ったりもする。

幼馴染の呪縛って言うの?

いつも<それ風に>振る舞っちゃうって言うかさ。

今さら、あたしが高彬の前で女の子アピールしてもねぇ・・・と言う感じ。

幼馴染って、案外、不利なのよ、きっと。

まず女として見てもらえてないだろうし。

だからこそ、あのビキニ、少しは有効かと思ったんだけどなぁ。

ま、亜実みたいな「ボン、キュッ、ボン」には程遠いけど。

足元にキラリと光るものを見つけて、爪先でいじってみたら薄ピンク色の桜貝だった。

かがんで拾おうとして───

持っていたサンダルを落としてしまった。

(あっ)

と思った瞬間、タイミング良く来た波がサンダルを攫って行き、慌てて一足は拾えたんだけど、もう片方はあれよあれよと沖に流されていく。

プカプカと浮いているサンダルは、きっともう腰の高さくらいの深さのところで、さすがに拾いには行けなかった。

「どうしたの」

後ろから声がして高彬だった。

「サンダルが・・・」

見る間に引き潮に乗って遠くなっていくサンダルを2人で呆然と見送り

「どうしよう・・」

「・・・」

何となく目を合わせる。

さっきよりも濃くなった夕日が高彬の顔に当たり、不思議な陰影を作っていて、それが顔立ちの綺麗さを際立たせてる気がして、またしてもドキッとしてしまう。

「おぶってあげるよ」

「え?!」

おんぶ?

「駅まで行けば靴屋があるだろうし」

「い、いいわよ。サンダルなくても歩けるし・・」

「危ないよ。細かいガラスの破片でもあって怪我したらどうするんだ」

「じゃあ、タクシー拾うわ。呼んでもいいし」

「あれで?」

指さされて海沿いの道路を見ると、帰りの混雑で上下線ともものすごい渋滞をしている。

「あんなのでタクシー呼んでも、どれくらい待たされるか分からないよ。駅までそう遠くないし、歩いた方が早い」

「・・・」

「はい。乗って」

高彬が後ろを向いてしゃがみこんだ。

「・・・」

高彬の背中───

「・・・」

おずおずと肩に両手を置き、身体をそっと凭れ掛ける。








<続>



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8 コメント

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羨ましい・・・ (あさぎ)
2017-05-14 14:23:46
瑞月さん、こんにちは~。

委員長のお仕事もお忙しい中、連日の更新ありがとうございます(^-^)
残念ながら委員の事はお手伝いできませんが、私はようやく役から解放されたので、妄想のお仕事(?)の方をご一緒させて頂けたらと思っております(^_-)-☆

さてさて現代編の二人、青春してますね~!
高彬と幼馴染だなんて、羨ましい以外の何ものでもありませんが、それはそれで悩みがあるんですねぇ・・・。

もちろん責任感もあるけど、その優しさを素直に受け取ればいいだけなのよ~と、瑠璃に教えてあげたいっ!
とは言えもうちょっと、やきもきしている二人を「愛でたい」気もするので、心を鬼にして見守りたいと思います。
----って嘘です、ただS気質で楽しんでるだけです(笑)

まあ、本館では長年の想いが伝わったようですし、こちらではもうちょっと悶々としていただきましょう!
それにしても、夕日が照らす高彬の顔、さぞかし美しかったでしょうねぇ・・・(やっぱり羨ましい)
Unknown (鈴夏)
2017-05-14 17:27:13
瑞月さん、こんにちは。連日の更新、楽しく読ませて頂いています。

さてさて、二人とも青春してますね!瑠璃のセクシー水着を見られなかったのは残念ですけど、ビキニは二人きりでの海デートまで、とっておくのかしら~(*´ω`*)

幼馴染みって、時にはむごいですね。お互いに意地を張り合ったり、素直になれなかったり。
高校時代の二人を、キュンキュンしながら見守っていますよ~。

次回はおんぶですと⁉良いの?高彬?!瑠璃の胸が背中に当たる感触に、イロイロ悶えそうですよね(笑)う~ん青春‼
Unknown (ベリー)
2017-05-15 09:23:45
ドキドキするような眩しいような熱い目線で瑠璃の事をみてたに違いないですね!
羨ましいいーーーー!
瑠璃も瑠璃なりに「幼な馴染み枠」で気苦労してたんだなあ 確かに優しい高彬のそれは、幼馴染なのか好きだからなのか、父上に言われたからなのか、困惑してしまいますよね
本当は大好きなんだよ〜って言ってあげたいわ〜

そうです、顎のライン、しかも斜めちょい後ろですよ(ハイマニアックでた)
色気あると思うんですー!うふふふ

おんぶだなんてロマンチック♡ ドキドキ〜
>>あさぎさま (瑞月)
2017-05-15 11:21:49
あさぎさん、こんにちは~!

>私はようやく役から解放されたので、

あさぎリーダー!お役目、お疲れさまでした。


>妄想のお仕事(?)の方をご一緒させて頂けたらと思っております(^_-)-☆

そんなあさぎさん。
妄想を「お仕事」だなんて!
私たちにとって妄想は「My Life」・・人生、そのもののはずではありませんか(笑)
あの日の(いつ?)約束を、よもやお忘れとは・・・(笑)

>もちろん責任感もあるけど、その優しさを素直に受け取ればいいだけなのよ~と、瑠璃に教えてあげたいっ!

この辺りの意地っ張りな感じが瑠璃ですよねぇ。
高彬も器用に自分の気持ちを伝える人じゃないですしね。

>とは言えもうちょっと、やきもきしている二人を「愛でたい」気もするので、心を鬼にして見守りたいと思います。
>----って嘘です、ただS気質で楽しんでるだけです(笑)

2人の恋が成就してしまったら、オロオロする高彬を見る機会も減ってしまいますし、もうしばらくはこの状態を楽しみたいと思いま~す!

>それにしても、夕日が照らす高彬の顔、さぞかし美しかったでしょうねぇ・・・(やっぱり羨ましい)

これは綺麗だったと思いますよ~。
夕暮れの海と高彬・・・
写真集、出してほしいくらいですよね!(販売元→守弥出版)
>>鈴夏さま (瑞月)
2017-05-15 11:33:28
鈴夏さん、こんにちは~!

>瑞月さん、こんにちは。連日の更新、楽しく読ませて頂いています。

ありがとうございます(^^)/嬉しいです。

>瑠璃のセクシー水着を見られなかったのは残念ですけど、ビキニは二人きりでの海デートまで、とっておくのかしら~(*´ω`*)

ビキニはこの先も何らかの形で出てくることを考えておりますので~。

>幼馴染みって、時にはむごいですね。お互いに意地を張り合ったり、素直になれなかったり。

そうなんですよね。
なまじっか親しいばかりに、なかなか恋愛に切り替えられないって部分もあるんじゃないかと思うんです。

>次回はおんぶですと⁉良いの?高彬?!瑠璃の胸が背中に当たる感触に、イロイロ悶えそうですよね(笑)う~ん青春‼

かなりの密着度ですからねぇ!
まぁ、言いだしたのは高彬ですし、ここは絶えていただきましょう~。

鈴夏さん。
実は私の方から鈴夏さんに連絡をとりたいなぁ、と思っていたところだったんです。
それで、いただいたコメントを使うようで申し訳ないのですが、すみませんが、本館の方のメールフォームから一度、ご連絡をいただいてもよろしいでしょうか?
(深刻な話とか、そう言うのではありませんし、お時間のある時にお願い出来ればと思います)

すみませんがよろしくお願いいたします。
>>ベリーさま (瑞月)
2017-05-15 11:56:49
ベリーさん、こんにとは~!

>ドキドキするような眩しいような熱い目線で瑠璃の事をみてたに違いないですね!

そうですよね!
水平線を見てたなんてことあるわけないですよね~。
瑠璃に熱視線ですよ。

>確かに優しい高彬のそれは、幼馴染なのか好きだからなのか、父上に言われたからなのか、困惑してしまいますよね

そうなんだと思うんですよ。
元々、高彬は優しいと思いますし、よっぽどの自信家(もしくはノーテンキ)じゃなかったら、「高彬ったらあたしが好きなのね」とは思わないと思います。
高彬も口下手と言うか、変に回りくどいようなこと言うようなとこもありますしねぇ。

>そうです、顎のライン、しかも斜めちょい後ろですよ(ハイマニアックでた)

出ましたね~、マニアックで、更にピンポイント!

いやいや、でも、よーく分かりますよ、その角度のかっこよさ。
真横からじゃないんですよね。
眼球(笑)は見えない感じなんですよね?
耳から顎へのラインと、それに続く頬のラインって感じですよね?
あ~~、私が上手に絵を描けたなら!
掲示板にアップするのになぁ。
ベリーさん、描けません?(笑)
私、あとでちょっと描いてみます!それっぽいの描けたら掲示板に載せてみますね!(恥をさらすとも言いますが)
Unknown (ベリー)
2017-05-15 22:48:52
ハイ、マニアック専門ベリーです 笑

そうなんですよね、まさに瑞月さんがおっしゃるその画です!耳からの顎のラインとか!
高彬ってきっと端正な顔だと想像するんです。確か原作にも顔だって悪くないとか言ってましたよね?
でも女性によくある「雰囲気美人」と言うか、「雰囲気美男」だと思うのです。全体のバランスとか、空気とかって性格とか育ちから中味から出るハンサムっていうか。

わたし、絵なんて描けませんよ、描けませーん!涙
私はドラえもんさえもお絵描き歌で歌っても描けず、子供に笑われるくらいなのですから!
>>ベリーさま (瑞月)
2017-05-16 10:08:44
ベリーさん、こんにちは~(*^^)v!

>ハイ、マニアック専門ベリーです 笑

「マニアック専門ベリー」
何か、こう言う何かの専門店が実在しそうな気がする今日この頃・・

>耳からの顎のラインとか!

それな!(あら、やだ。うっかり若者言葉が)

>高彬ってきっと端正な顔だと想像するんです。

専門店ベリーさん!
「きっと」じゃなくて「絶対」ですよ!「想像」じゃなく「事実」です!

>確か原作にも顔だって悪くないとか言ってましたよね?

あの高彬には滅法辛口の瑠璃が「普通以上にはいい」と言っていましたからね。
もうスーパーウルトラミラクルイケメンに決まってるじゃないですか!

イケメンな上にもちろん「雰囲気美男」なんです。

>体のバランスとか、空気とかって性格とか育ちから中味から出るハンサムっていうか。

うんうん、さすが専門店ベリーさん、いいことおっしゃいますねぇ!

>私はドラえもんさえもお絵描き歌で歌っても描けず、子供に笑われるくらいなのですから!

え?そうなんですか?
私、ドラちゃんは描けますよ!
横顔の絵は練習中ですので(笑)まずはドラちゃんの絵を掲示板にあげますからねーーー!!私の実力に驚いて(笑って)ください。

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