「高彬解体新書」~巻の三

2017-04-20 | 高彬解体新書
今上帝から女御さまへのお文を携えていた私は、やはり常とは違う気持ちで慌てていたのでしょう。

渡殿の角を曲がったところで、裳裾に足を取られ

「あっ」

と声が出た時には、見事に滑ってしまい───

と思ったのも束の間、私は誰かの手に支えられていました。

「大丈夫でしたか?」

声のした方に顔を向けると、そこには───

すっきりとした佇まいの絵に書いたような公達が立っていらっしゃいました。

「あ、は、はい・・」

慌てて返事をしてみたものの、そのあまりの近さにかぁっと顔が火照ってしまいました。

近いと言いますか、ほとんど抱きかかえられているような感じなのです。

私の腕をその公達の手が掴んでおり、私はその手をまじまじと見てしまいました。

高貴なお方の手と言うのは、普段はお袖に隠れていることが多いのですが、今は掴んだ拍子に袖が捲れたのか、はっきりと見えています。

(綺麗な手・・)

すらりとした長い指先に、程よく節の張った指、くるぶしから手の甲へのラインが何とも男らしさを感じる手でした。

綺麗だけれども、女人のそれとは違う、男の手、大人の手です。

「良かった、転ばないで。ここ後宮の渡殿は、内裏内で一番、手入れがされているから滑りやすいと聞いたことがあります。あまり急がない方がいい」

そうおっしゃりながら公達は手を離され、私はつい名残惜しく、その手を目で追ってしまいました。

「はい、申し訳ございません。私、まだ後宮に上がって間がない新参者でして・・・。それに童の頃からお転婆だと父上にも良く叱られていて・・・」

自分の粗忽ぶりを笑われたようでついつい言い訳がましく言ってしまい、助けられた上にとんだご無礼を・・と、青くなっていると

「あなたもお転婆ですか」

と楽しそうにおっしゃられました。

も?

あなたも?

そのお顔があまりにお優しい顔だったので、引き込まれるように見返してしまいますと

「実は・・、私の妻もとんでもないお転婆でしてね」

「・・・」

「お転婆と聞くと、つい妻を思い出してしまうのです。・・・引きとめて申し訳ない。仕事の最中でしたね」

「あ、いえ・・」

もっとお話をしていたくて頭を振ってみたのですが、その公達は衣擦れの音も優しく行ってしまわれました。

「・・・」

お姿を見送り、気を取り直してまた歩き出すと

「ちょっと納言さん!」

一つ上の先輩女房の相模さんに腕を掴まれてしまいました。

「どうしてあなたが右近少将高彬さまと親しげにお話しているのよ」

「・・・」

右近少将高彬さま。

あの方のお名前なんだわ・・・

「右近少将さま・・。とても綺麗な手をお持ちの方ですのね」

そう言うと、相模さんはぎょっとした顔になり、私の顔を覗き込むと

「どうして少将さまの手を?ご覧になったの?どこで?」

矢継ぎ早に聞いて来ました。

「どこでって・・」

たった今ですわ、と答えようとして、私は口をつぐみました。

相模さんは気の良い方なので、ちょっとだけイタズラ心が湧いてきてしまったのです。

「うふふ、どこでしょう・・」

意味ありげになるべく艶っぽく笑って見せると、相模さんは

「ずるいわ、納言さん」

と唇を尖らせてきました。

「でも、おかしいわねぇ。右近少将高彬さまは決して女房と懇ろになったりはなさらないのよ。なんでもご結婚相手の姫さまにぞっこんでいらっしゃるらしいわよ」

「・・・」

さきほどのお優しい少将さまのお顔が思い出されました。

お転婆な姫さま・・

あのお顔を見たら、どれだけ少将さまが姫さまを大切になさっているかがわかります。

(あらあら、どうやら私は淡い恋と失恋を同時にしてしまったのね・・)

私は右近少将高彬さまに掴まれた腕をそっとさすったのでした。





<終>


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14 コメント

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Unknown (みそ)
2017-04-20 19:08:57
みずりんさん、こんにちは。

ベリーさんが二の腕フェチなら、私は手フェチかもしれません。(対抗してどうする)
特に、漫画での高彬の手って、けっこう重点的に描かれているのか、ついつい目がいってしまうんですよね。( *´艸`)
私的ツボは、人妻編第六話『瑠璃の額に手を当てる』シーンと、人妻編第十八話『瑠璃の髪を一房手に取っている』扉絵だったりします♪
ほらほら、気になってきたでしょう?(笑)
手の大きさが誇張されている感は否めませんが、武官だしいっか~、みたいな。( 〃▽〃)
原作には、高彬や瑠璃のビジュアル面の細かい描写が少なくて、やや物足りなさを感じたものです。
でも、その分、想像力が掻き立てられて逆に良かったのかもしれませんけど。

みずりんさん。
手、手、手ですよ~。
手に清き一票を!!(笑)
Unknown (ベリー)
2017-04-20 21:40:59
おおお!この納言さんになりたい!!ささえてもらいたい!
一瞬に恋して一瞬に失恋、せつないわあ。。。

普段はすまして宮廷人してる右近少将が時折偶然にみせる顔が、おモテになる原因の1つですわね でも、やっぱり瑠璃さんがらみなのね〜 失恋です〜!(オイッ)

みそさん、 手、一票入れさせていただきます!
漫画ってそんなに手が誇張?してあるのですね
すっかり忘れております。
やー、ますます漫画を買いたくなってきましたよ。買ったらそのシーンチェックします!

私、二の腕フェチがいきすぎて、旦那に「鍛えたら?」っていったらガツンと怒られましたからねー!苦笑
絶対 … (ありちゃん)
2017-04-21 12:54:42
みずりんさん 皆さん こんにちは〜。

手から二の腕を経て…
いやぁ、手も二の腕もいいですよね!
どちらにも1票です!

ですが
私 ここで推したいのは胸板でございます!
肌蹴た袷からチラと見えるのも良いのですが、弓の練習かなんかで片袖脱いじゃって欲しい!
逞しい胸板…卒倒もんです!
>>みそさま (瑞月)
2017-04-22 08:33:31
みそさん、こんにちは~。

>特に、漫画での高彬の手って、けっこう重点的に描かれているのか、ついつい目がいってしまうんですよね。( *´艸`)

確かに小説では書かれてない手の位置とかが漫画では描かれてますもんね。

>私的ツボは、人妻編第六話『瑠璃の額に手を当てる』シーンと、人妻編第十八話『瑠璃の髪を一房手に取っている』扉絵だったりします♪
>ほらほら、気になってきたでしょう?(笑)

さっそくコミックを引っ張りだして見てみました!
額に手を当てるシーン「ぼくの風邪がうつった?」のところですよね?
高彬の風邪ならうつりた~い!
・・・と言うのはさておいて、そのシーンももちろんいいですが、私は次のページの「ううん、大丈夫。高彬こそ病気はもういいの?」で、瑠璃が高彬の手を包んでるところに悶えました!(みそさんも見て見て~)

>でも、その分、想像力が掻き立てられて逆に良かったのかもしれませんけど。

これはこれで小説の良さでもありますもんね。
好きなように(?)妄想出来て。

>みずりんさん。
>手、手、手ですよ~。
>手に清き一票を!!(笑)

手ですね~。了解いたしました。
手、第二弾として何か思い浮かんだ描写があったら書いてみますね。(みそさんも何かあったら教えてくださいね~)
>>ベリーさま (瑞月)
2017-04-22 08:41:26
ベリーさん、こんにちは~。

>一瞬に恋して一瞬に失恋、せつないわあ。。。

これぞ瞬殺ですよねぇ(笑)

>漫画ってそんなに手が誇張?してあるのですね

漫画って小説では描写されない部分が描かれているので、その辺りに注目してみるって言う楽しみもありますよね。

>私、二の腕フェチがいきすぎて、旦那に「鍛えたら?」っていったらガツンと怒られましたからねー!苦笑

あらら・・(笑)
これから半袖が増えて行くし、ベリーさんに取って心弾む季節がやってきましたねぇ!
>>ありちゃんさま (瑞月)
2017-04-22 08:49:15
ありちゃんさん、こんにちは~。

>ですが
>私 ここで推したいのは胸板でございます!

あああ~、胸板!
高彬の胸板!!

>肌蹴た袷からチラと見えるのも良いのですが、弓の練習かなんかで片袖脱いじゃって欲しい!
>逞しい胸板…卒倒もんです!

武官ですもんね。
ひょろっとした貴族とは違って、きっちり筋肉もついてるでしょうし、そして瑠璃曰くは「綺麗な肌」でしたしね~。
ほんと、瑠璃が羨ましい・・!
胸板、ぜひぜひ書いて見たいです。
Unknown (ベリー)
2017-04-22 10:32:12
いやいや〜 胸板もいいですねえ💗
話してるだけでのぼせそうですが、初めて生田斗真くんのバスロマンのCM見た時には「キターッ!!!」っとなりました。私はジャニ好きではなかったんですが、キャワイ〜 キューんってカックイイい〜ってなって、それ以来目が離せません
あのボディがね、腕がね、ウフフ。よくないですか?検索すると画像で出てくると思います〜😍😍😍
Unknown (みそ)
2017-04-22 22:52:26
みずりんさん、皆さん、こんばんは。

>私は次のページの「ううん、大丈夫。高彬こそ病気はもういいの?」で、瑠璃が高彬の手を包んでるところに悶えました!

分かります、分かりますよ~!!
瑠璃の可愛さが、ますます高彬の手の魅力を引き立てて。( 〃▽〃)

ああ~、でも胸板チラリも捨てがたい!!
またもや漫画ネタで申し訳ないのですが、コミック第7巻『善修と揉み合う高彬の胸板』にトキメキ度Maxですよ~。(((*≧艸≦)
その上、扉絵が伝説の『高彬が脱いでいくシリーズ』!!
第7巻は高彬好きには堪らない一冊となっております。(笑)

二の腕、手、胸板ときたら、あとは何ですかね~。
首筋や肩、鎖骨なんかも捨てがたい!
ま、要するに高彬ならなんでも良いんですけど。
結局、高彬フェチですもの♪( 〃▽〃)
>>ベリーさま (瑞月)
2017-04-23 10:37:33
ベリーさん、こんにちは~。

>いやいや〜 胸板もいいですねえ💗

うんうん、いいですよねぇ。

>話してるだけでのぼせそうですが、初めて生田斗真くんのバスロマンのCM見た時には「キターッ!!!」っとなりました。

そのCMわかりますよ~。
確かにかなり鍛えられた逞しい身体付きですよね!

>私はジャニ好きではなかったんですが、キャワイ〜 キューんってカックイイい〜ってなって、それ以来目が離せません

ふふふ、ベリーさんったら高彬以外の殿方に「浮気」ですか~?(笑)
その隙に(どの隙?)わたくしが高彬をいただいてしまいますことよ!
>>みそさま (瑞月)
2017-04-23 10:48:06
みそさん、こんにちは~。

>コミック第7巻『善修と揉み合う高彬の胸板』にトキメキ度Maxですよ~。(((*≧艸≦)

わかります、わかります!
しかしですね、私はその後の『善修を抑え込んで上にまたがる高彬に太もも』に悶えました!
ほんと、あのカットだけでも「嗚呼、漫画を読んで良かった!」と思いましたもんね。(そして今もそう思っています)
それと、死線を彷徨ってる高彬には申し訳ないのですが、ラストの鴛鴦殿で横たわっている高彬の腕の太さにも悶えました!
(大丈夫でしょうか?私、変態に思われてないですかね??笑)

>その上、扉絵が伝説の『高彬が脱いでいくシリーズ』!!
>第7巻は高彬好きには堪らない一冊となっております。(笑)

そうですよねぇ。バイブルですよ(笑)

>首筋や肩、鎖骨なんかも捨てがたい!

ぐふふ。いいですねぇ・・
どれも男らしさを感じる場所ですもんね。
高彬ってやっぱりフェロモン出てるってことなんでしょうねぇ・・・
Unknown (ベリー)
2017-04-23 10:52:37
いやいや、瑞月さん、浮気じゃないですよお〜
あのボディーが高彬のボディ〜って妄想してるんですよー爆 (顔はまた別)
きゃーってなりません?肌艶よくて筋肉も程よく付いて。ウハウハっすよ!(オイッ)
バスロマンの温泉地での「何か足らない」バージョンでですね左手でバスロマン持つんですけどその二の腕(はい、デタ!)肩と胸板、you tubeで見ちゃってくださいねー
それでどハマりしたんですー!これは武官の体じゃない?みたいな。
すいませんまた浮かれてしまいました。。。笑
>>ベリーさま (瑞月)
2017-04-24 15:04:49
ベリーさん、こんにちは~。

>いやいや、瑞月さん、浮気じゃないですよお〜
>あのボディーが高彬のボディ〜って妄想してるんですよー爆 (顔はまた別)

あー、なるほど!
と言う事はベリーさんに取って生田斗真くんは、身体だけが目当てってことなんですね?(あらやだ、語弊が)

>それでどハマりしたんですー!これは武官の体じゃない?みたいな。

本当に綺麗な身体ですよね~。
筋肉質過ぎずにでも締まってて。確かに武官の身体です!
Unknown (ベリー)
2017-04-24 23:27:37
瑞月さん、そ、そんな体だけが目的だなんて、笑
あられもないことを!でも、そう、ズバリそうでした。図星です。爆
原作での顔や姿の表現がないかわりに、お衣装や花や、その日のお天気の状況など、季節を表す言葉でますます妄想力が膨らみますよね〜
>>ベリーさま (瑞月)
2017-04-26 10:12:24
ベリーさん。

>瑞月さん、そ、そんな体だけが目的だなんて、笑
>あられもないことを!でも、そう、ズバリそうでした。図星です。爆

やっぱりーーー!!(笑)
ついに白状しましたね、ベリーさん(笑)

>原作での顔や姿の表現がないかわりに、お衣装や花や、その日のお天気の状況など、季節を表す言葉でますます妄想力が膨らみますよね〜

そうですよね~、ほんとに!
顔や身体の細かい描写がない分、妄想しちゃいますよね。
妄想が膨らみ過ぎて破裂しそうです(笑)

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