後宮物語<3>

2017-07-29 | ss(後宮物語)
※原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。苦手な方は閲覧ご注意ください。





「女房どの。女御さまへのお取次ぎを願います」

「畏まりましたわ、しばしお待ちくださいませ。参議どの」

御簾越しに声を掛けられ、少し気取った声で答えると奥へ下がる。

お仕えして三週間、新参者のあたしが直に女御さまにお声をお掛けするわけには行かないから、古参の女官に取次ぎを頼むと、やがてゆるゆると女御さまがお出ましになられ、御簾越しに参議と言葉を交わす。

奥まったところから、その様子を眺めてたあたしは、知らずに(ほぉ)とため息を吐いてしまった。

やっぱりね、全てが桁違いに雅なのよ。

あたしも世間では深窓の姫君なんて言われる権門の家柄だけど、でも、後宮の晴れがまさしに比べたら、一貴族のそれなんて比ぶべくもない、と言う感じ。

「どう?撫子さん。少しは後宮出仕に慣れて?」

後ろから肩を叩かれ、振り返ると、ここに来てから、何くれとなくあたしの面倒を見てくれている「左京」と呼ばれる女房だった。

「え、えぇ、まぁ、少しは」

慌てて答えると

「女御さまも褒めていらっしゃったわよ。新しい女房は、はきはきと明るく良い子だって」

左京はにっこり笑い、あたしも嬉しくなって心の中でガッツポーズを作ってしまった。

嬉しいもんだわぁ、褒められるって。

感じよく振る舞ってた甲斐があったわ。

左京はあたしの耳に顔を近づけると

「今日は帝がいらっしゃるし、その時に今を時めく貴公子がゾロゾロやってくるわよ」

ふふふ、と笑い

「撫子さんも素敵な君を見つけるといいわ」

「え、そんなあたしは・・」

「お勤めが何倍も楽しくなってよ」

「・・・」

「時には、貴公子からお文をもらったりして、ね。ふふ」

そう言う左京は本当に楽しそうで、この分だともうすでに貴公子からのお文の一通や二通、もらっているのかも知れない。

「今のお勧めは右近少将さまよ」

「お勧め・・」

やっぱりあるんだ、お勧めとか目玉商品って、どこの世界にも。

「そう。本当に素敵な方よ。女御さまの弟君であらせられるし、近衛府の少将ですもの。今日もきっといらっしゃるはず。帝のお気に入りですもの。あなたも垣間見たらいいわ」

「そうね。そこまで左京さんが言うんなら、垣間見るなんて言わずにばっちり目に焼き付けておくわ」

「ま、撫子さんたら」

2人で声を忍ばせて笑い合い、持ち場に戻ると、言い付けられていた雑用をこなす。

些末な仕事はいくらでもあったし、どれも新鮮で、あたしはやっぱり邸の奥深くに籠ってるより、こう言う方があってるのかなぁ、なんて思う。

午後になり、左京が言っていた通り、帝のお渡りがあった。

後宮に来て、まず驚いたのは、世の中は本当に帝を中心に回ってるんだなぁと言う事だった。

お付きの女官たちも、帝が右に動けば一斉に右に動くし、左を向けば一斉に左を向くと言う感じ。

女御さまは帝の寵妃でいらっしゃるし、室内には何とも言えない柔和な空気が流れている。

「おや、見慣れない女房がおりますね」

一通りの挨拶を終えた帝は、辺りを見回し、目聡くあたしの存在に気が付いた。

扇などで顔を隠すのは、身分高い女性の振る舞いで、あたしたちみたいな女房は、高貴な方の前で顔を隠したりするのは無礼なことなのである。

「撫子と言うのですわ、主上」

「ほぉ、撫子ですか」

皆の視線が一斉にあたしに集まり、さすがに顔が火照ってしまった。

気持ち、伏し目がちにしながらも、よそ行きの顔を作っていたら、何とか次の話題に移ってくれたようで、ようやく視線から解放され───

と思ったのも束の間、またしても視線を感じ、思わずそちらを見ると、一人の公達と目が合った。








<続>


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6 コメント

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Unknown (かのこうママ)
2017-07-29 23:50:49
高彬くん、衛門佐ではなく、
もう右近少将なんですね。
2人がどうやって恋に堕ちるのか、
楽しみです
Unknown (nenica)
2017-07-30 00:27:15
うぉぉぉ!高彬登場!
これからの展開が益々楽しみになってきました♪
新連載! (あさぎ)
2017-07-30 15:59:46
瑞月さん、こんにちは~。

新連載早々、撫子ちゃんはすっかり女御さまのお気に入りになってるんですね~(^-^)
明るい性格の女御さまとは気が合いそうですもんね。
もしかして右大臣家に女房仕えして、「高彬の想い人」というフィルターなしに高彬母に会ったら、案外気に入ってもらえるかもしれませんよね(笑)

三ヶ月の間、どんな後宮生活が待っているのでしょうか。
素敵な少将との出会いで、何倍も楽しいお勤めライフになる事間違いなし!
どんな出会いになるのか、また楽しみにしていますね~!
>>かのこうママさま (瑞月)
2017-08-01 07:35:27
かのこうママさん、おはようございます!

>高彬くん、衛門佐ではなく、
>もう右近少将なんですね。

はい。瑠璃ももう17ですしね!原作より少しスタートの年齢が上の2人です。

>2人がどうやって恋に堕ちるのか、
>楽しみです

ありがとうございます(*^^)v
>>nenicaさま (瑞月)
2017-08-01 07:39:00
nenicaさん、おはようございます!

>うぉぉぉ!高彬登場!
>これからの展開が益々楽しみになってきました♪

はい、登場いたしました~。
最後の一行だけです、一気に場が華やぎますよねぇ。
この先、いよいよ瑠璃と高彬の出会いへと進んで行きます。
>>あさぎさま (瑞月)
2017-08-01 07:42:00
あさぎさん、おはようございます!

>もしかして右大臣家に女房仕えして、「高彬の想い人」というフィルターなしに高彬母に会ったら、案外気に入ってもらえるかもしれませんよね(笑)

これはそうかも知れませんよね!
あの守弥だって、瑠璃と直にあったら、恋に落ちかけて(笑)ましたもんね。

>どんな出会いになるのか、また楽しみにしていますね~!

ありがとうございます~(*^^)v
またお付き合いのほど、よろしくお願いします。

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